「キングオブコント2019」採点データ分析。どぶろっく大爆発の中でバナナマン設楽の冷静さが光った

9月21日放送の『キングオブコント2019』(TBS系列)。見事栄冠を勝ち取り、優勝賞金1000万円を手にしたどぶろっくは、番組最後の10秒コメントでためらいがちに叫んでいた。

どぶろっく森「今年のチャンピオンは、僕たちになりました!」
どぶろっく江口「夢じゃないよね!」
どぶろっく森「ごめんなさい、ごめんなさーい!!」

総エントリー数2431組を、大きなイチモツでなぎ倒したどぶろっく。ファイナリストたちの激闘を採点データから振り返りたい。

ファーストステージ:イチモツに射貫かれたおじさんたち


ファーストステージでどぶろっくがマークした「480点」は、審査員5人体制での歴代最高得点だった(これまでの最高点は478点。2015年ロッチ「試着室」、2017年かまいたち「ウェットスーツ」、2018年チョコレートプラネット「地下室」で達成)

実は今回、全体的に点数が高い傾向にある。現体制になってからの採点を振り返ると、毎年必ず「80点」がついた組がおり、各審査員の最低点は80点台前半で推移している。ところが今回、審査員たちが付けた最低点は85点〜87点。大きく底上げされているのだ。

恐らくその要因は、トップバッターのうるとらブギーズだろう。現体制でのトップバッター最高点だった451点(2015年藤崎マーケット「パントマイム」)を大幅に更新した「462点」を記録した。賞レースの審査は1組目の点数が基準になりがちだが、基準と呼ぶにはあまりにも高い。「トップじゃなかったら96ぐらいつけた」(大竹)という発言もあったし、うるとらブギーズの出番がもっと後だったら情勢は大きく変わっていただろう。

どぶろっくに話を戻そう。結果を見ると、審査員4人がこの日の最高点をどぶろっくにつけている。やはり大きなイチモツは、おじさんたちのハートを完全に打ち抜いていた。次の出番のかが屋は対象的な丁寧な芝居だったせいか、その温度差が点差に表れているように見える。

ただ、バナナマン設楽はどぶろっくに93点、かが屋に94点をつけた。どちらのコンビにも「コントの構成」について評価するコメントを残しているのが印象的だ。

(どぶろっくに)「コントに生き様が反映されてるというか、ちゃんとアンサーソングみたいな感じで答え出しちゃって、ひとつのストーリーになってるからすごいなと」
(かが屋に)「僕らも11年前に出てるんですけど、決まった時間で蛍の光かけて時間軸を分からせるのを説明してないのは相当高等な技術(中略)作り方が上手だと思って高得点にしたんです」

設楽の審査は毎回冷静で、点差の幅を小さくして相対的な評価をしているようにみえる。あまりにも爆発力を評価する傾向になってしまうと、来年から「40代50代男性に刺さる下ネタ大会」になりかねない。違った軸を持った存在は貴重だ。

3位同点決勝:ジャルジャルとGAGの命運


最低点が底上げされたせいか、同点が多かったのも今大会の特徴のひとつだろう。ネルソンズ、ビスケットブラザーズ、かが屋の3組が446点。そしてジャルジャルとGAGが457点で同着3位。初の「同点決勝」となってしまった。

同点決勝は審査員5人の多数決。結果はジャルジャル3票、GAG2票。ここで採点を振り返ると、日村・三村・大竹・松本の4人は「より高得点をつけたほう」に投票していたことがわかる。設楽だけ92点の同点だったので、その場で決勝進出者を選んだことになる。

番組内でジャルジャル福徳は「足の小指を骨折したため急きょネタを変えた」「ご迷惑をおかけしてすみません」とコメントしていた。実は準決勝で披露された2本のネタと、決勝で披露された2本のネタは全く別のものなのだ。キングオブコントには「準決勝のネタ2本を決勝でかける」というルールがあり、それに対する謝罪でもあった。

準決勝のネタはどちらも激しい動きを必要とするもの。対して決勝のネタはどちらも少し歩く程度。決勝進出を決めた勝負ネタを諦め、制限された動きに合うネタを選び、それでも総合3位。「ネタ数8000本」を豪語するジャルジャルのポテンシャルには、改めて驚かされる。

ファイナルステージ:「賢者タイム」を逃げ切ったどぶろっく


ファイナルステージを争ったのは、ジャルジャル、うるとらブギーズ、どぶろっくの3組。うるとらブギーズがネタを終えた時点で、どぶろっくとの点差は445点。平均89点が出ればどぶろっくが優勝する。

どぶろっくの2本目は、配役を入れ替えて再びイチモツを歌い上げる。しかし1本目ほどの爆発まではいかない。点数だけ見ればうるとらブギーズのほうが高いのだが、1本目との合計でどぶろっくが上回り、2本目の「賢者タイム」を逃げ切った。

ちなみに、「1本目と2本目の展開がほぼ同じリズム・歌ネタ」で、2017年2位のにゃんこスターを思い出した人も多かったと思う。2本目で失速したのもにゃんこスターと同じ……という印象があるかもしれないが、実はにゃんこスターは1本目466点、2本目462点とそれほど失速していない(参考:「キングオブコント2017」採点データ分析。本当に「にゃんこスターのせい」だったのか徹底検証)。どぶろっくの1本目「480点」の貯金がいかに大きかったかがわかる。

さらにどぶろっくの2本目の採点に注目すると、バナナマン設楽だけが1本目より高い点数をつけている。1本目は爆発を評価した4人と冷静な設楽、2本目は冷静になった4人と優勝を確信した設楽、と傾向が真逆になっているのが興味深い。

* * * * *

昨年から賞レースの優勝者は若返りが続いていた。濱田祐太郎(R-1ぐらんぷり2018)、ハナコ(キングオブコント2018)、霜降り明星(M-1グランプリ2018)、粗品(R-1ぐらんぷり2019)と、その担い手は20代が中心。今回のキングオブコント2019も過去の常連組が準決勝に残らず、若手の多さが印象的だった。

しかしふたを開けてみれば、ファイナルに進出した3組は全て芸歴11年以上、残り7組は全て芸歴10年以下。10組中最年長で、唯一40代のどぶろっくが優勝を決めた。金のテープが舞い、相方が「ガマン汁」という涙を流す横で、森は叫んだ。

どぶろっく森「自分たちのスタイルただ思いっきりやったら、たくさんの人に評価されたという感じで……幸せです!」

まだまだベテラン勢も負けてはいないのだ。

(井上マサキ)

画像をもっと見る

関連リンク

  • 9/22 13:00
  • エキレビ!

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます