「まさか、あの人が経歴詐称…?」婚活に勤しむ32歳の女を動揺させた、衝撃の知らせとは

欠点のない、完璧な男などこの世にはいない。人には誰でも長所と短所があるものだ。

しかし、女性が絶対に許せない短所を持った男たちがいる。

浮気性、モラハラ、ギャンブル、借金、ストーカー…

そんな残念男とばかり引き寄せる女が、もしかしたらあなたの周りにもいないだろうか。

橘梨子(たちばなりこ)、32歳もその一人。人は彼女を男運ナシ子と呼ぶ。

この話は、梨子がある出来事をきっかけに、最後の婚活に挑む物語。彼女は最後に幸せを掴むことが出来るのか、それとも…


苦労の末、結婚相談所に登録した梨子。そこで紹介されたのは、2人の男だった。

一人目は、自分のことをThe平均値と名乗る大学講師の山田崇。そして二人目は、IT企業を経営する藤田聖人だ。

聖人とのお見合いは驚くほどに楽しく、梨子は「こんな人と結婚できたら、幸せだろうな」と思うのだった。


―疲れてるはずなのに、眠れないな…。

梨子は、聖人とのお見合いを終えて帰宅した後も、しばらく興奮が冷めやらず、その夜はなかなか寝付けなかった。

聖人と過ごした時間は、お見合いだということをすっかり忘れてしまうほどに楽しく、感情が揺さぶられるものだったからだ。

目を閉じても一向に眠気がやってこないので、自律神経を鎮めるためにハーブティーを淹れる。そして、自社製品で顔パックをしながら、買ったまま手つかずになっているビジネス書を読むことにした。

本の中身は、両親を早く亡くし、苦労してセレブ社長になった男の物語だ。

―聖人さんみたい…。

梨子は夢中でページをめくる。読みながら、頭の中でいつのまにか主人公を聖人に置き換えていた。

思えば、聖人は最初から何かが違っていた。今まで恋する時に梨子が感じてきたドキドキ感やトキメキとは違う。でも聖人には、何か強く惹かれるものがあるのだ。

結局、深夜まで眠れなかった梨子は、翌朝、電話が鳴る音で目が覚めた。

「もしもし、橘様の携帯電話でしょうか?株式会社ディスティニーブライドの小西でございます」

それは、結婚相談所の担当者からだった。しかしその電話の内容は、梨子の眠気を一気に吹き飛ばすものだったのである。

「大変申し訳ございませんが、弊社側の事情で、しばらく紹介業務を停止させていただきます」

「え…!?どういうことですか?」

事態が飲み込めず、慌てて聞き返す。

「弊社では、お客様のご経歴やプロフィールが正確であることに万全を期しているのですが、事実と異なる内容を申告している方がいらっしゃる、というご連絡を頂きまして。これ以上は調査中ですが、本当に申し訳ございません」

担当者は、謝罪の言葉を口にした後で、さらにこう付け加えた。

「万が一、橘様にご紹介したお相手の経歴が事実と違っていた場合は、すぐにご連絡し、全額返金いたします」

その瞬間、梨子の頭によぎったのは、一人目のお見合い相手・山田崇のことだ。

―もしかして…山田さん!?

電話を切った後とっさに、昨日陽菜から送られてきたLINEを読み返す。山田は自らを平凡な大学講師だと名乗ったが、陽菜によれば、ロボット開発で大成功を収めた超優良物件だという。

―確かに山田さんのプロフィールは事実とは違う気がするけど、紹介を停止しなきゃいけない程、大きなことだとは思えないし…。

そもそも、会員数が1万人はいる大手の結婚相談所だ。自分にはきっと関係がないはずだし、すぐに紹介業務も再開されるだろうと、梨子は気楽に考えることにした。

けれど、竜也の見解は違っていたのだ。

「まさか、私が…?」竜也の痛すぎる指摘とは?

「えぇ!結婚相談所が紹介をストップするって余程のことだろ。結婚詐欺とかもあるわけだし。かなりやばいやつが紛れ込んでたとか…」

今日は雑誌の取材を受けるため、竜也とともに青山にあるパーフェクトオーガニックの直営店に向かっていた。梨子は行きのタクシーの中で、結婚相談所からの電話のことを話したのだ。

そんなに深刻にとらえてなかった、という梨子に、竜也はさらに追い打ちをかける。

「男運ナシ子だけに、心配だよ。もしかして…梨子が1万人の中から経歴詐称男を引き当てたりして」

梨子がじろりと睨みつけると、竜也は慌てて前言撤回した。

「いや、冗談だよ。まぁ、大手の結婚相談所が調査してるくらいなんだから、すぐに真相も分かるだろ」


直営店での取材は順調だった。

パーフェクトオーガニックを立ち上げた経緯、今まで1番大変だったこと、カバンの中身公開まで、様々な角度の質問に答えていく。

今回取材に来た媒体は、梨子が愛読している雑誌のオンライン記事ということもあり、気合いが入る。

「橘さん、受け答えがお上手だから、すごく取材しやすいです」

編集者からも褒めてもらって、思わず頬が緩んでしまう。

―今日はいい感じで進んでる。私も、取材されることに少しは慣れてきたかな…。

そんな風に安心していると、梨子を困らせるオーダーがきた。

「橘さんは、カメラマンの健三さんともお仕事されてるんですよね?健三さんに橘さんのことを伺ったら、絶賛、婚活中だとか。ぜひ、橘さんのプライベートを含めて記事にしたいので、婚活の話も聞かせてもらえませんか?」

梨子は途端に答えに窮してしまう。すると、絶妙なタイミングで竜也がフォローを入れてくれた。

「あぁ、婚活中って言うのは、健三さんが橘を口説かないように私が適当な事を言ったんですよ」

編集者の女性も、健三のキャラクターを良くわかっているようで、「あぁ、そうでしたか」とすぐに納得してくれた。

「今回は、ブランドの誕生秘話を中心に構成いただけると助かります。うちとしても変なトラブルは避けたいので、女性社員のプライバシーに関わることは出さない方針です」

竜也の毅然とした一言で、取材は再び梨子の仕事の話に戻った。

―いつも、竜也に助けてもらってる…。そういえば、初めて取材を受けた後もー。

梨子はふと、数年前のある出来事を思い出したのだった。

ずっと梨子を守ってきてくれた存在・竜也。そんな彼からの卒業を誓う…。

あれは、梨子のインタビュー記事が初めて雑誌に載った後のこと。

浮気が原因で別れたはずの元彼がヨリを戻そうと、しつこく言い寄ってきたことがあった。

「今、活躍してるみたいだな!やっぱり、俺には梨子みたいに、自立した大人の女の方が合ってるって気がついたよ…!」

元彼は、必死で説得しようとしてくる。だが梨子は、1度でも浮気されたらもう無理だと言って突っぱねた。

それなのに、元彼の行動はエスカレートし、会社帰りなどに待ち伏せされるようになってしまった。

その時に助けてくれたのが、竜也だ。

「これ以上、付きまとったら警察に通報する。梨子は俺が幸せにするから、もう2度と現れるな!」

そう言って、凄んでくれた。

おかげさまで、元彼が姿を現すことは二度となかった。仕事でもプライベートでもさりげなく梨子を助けてくれる竜也は、これまでずっと、梨子にとってお守りのような存在だったのだ。


すっかり、日が暮れた夜の表参道。2人で駅に向かって歩きながら、竜也にお礼を言う。

「婚活の事は絶対に記事になって欲しくなかったから、よかった。竜也、ホントにいつもありがとう」

「梨子の動揺はすぐ顔にでるからな。そういや、昼の結婚相談所の話が衝撃的すぎて聞き忘れてたけど、お見合いどうだったの?」

そういえば竜也に、聖人の話はまだしていなかった。ついに心惹かれる人に出会い、さらに"こんな人と結婚できたら"とまで感じた気持ちを正直に伝えると、竜也は優しく微笑んでくれた。

「…よかった、安心したよ」

「ありがとう。それより竜也こそ、陽菜から聞いたよ。後輩の玲華ちゃんといい感じだって」

竜也は照れたように、コホンと咳払いをしながら答える。

「ったく、陽菜のやつ。…まぁ、いい感じだよ」

―そっか。玲華ちゃんと付き合うなら、私もいつまでも竜也に助けてもらう関係を卒業しなきゃね。

竜也の照れた顔を見ていると、彼の幸せを願う気持ちと、寂しい気持ちの2つが混ざって、何とも甘酸っぱい気持ちになる。

そしてその時の2人は、竜也の人生を変える転機が訪れようとしていることなど、知る由もなかった。


▶Next:7月3日 水曜更新予定
「何故、あの時、嘘をついたのだろう…」。竜也目線で語られる真実とは?

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