【W杯詳細分析・フランス-ドイツ】フランスの「一体感」を打ち破ったドイツの「コレクティブ」なサッカー

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リベリの不在で「一体感」のあるサッカーを展開したフランス


 過去に繰り返し死闘を繰り広げてきたドイツ対フランスの宿命の一戦が28年ぶりに行われた。

 ワールドカップにおけるドイツの強さは特筆すべきものがある。まずグループリーグで敗退したことがない。1954年の大会以降16大会連続ベスト8、さらに2002年の日韓共催のワールドカップ以降3回連続ベスト4でこの試合に勝てば4回連続となる。4大会連続ベスト4というチームはドイツ以外にはない。

 一方、フランス代表はワールドカップ第1回大会から出場している欧州では珍しいチームだ。ドイツのワールドカップでの初対決は1958年のスウェーデン大会で当時の西ドイツ代表を6-3で破って3位に入っている。

 今大会においてドイツは優勝候補の一角と目されていたが、フランスはエースリベリの負傷欠場もあり、それほど下馬評は高くなかった。しかし、フランスはグループリーグの3試合を2勝1分け勝ち点7(得点8失点2)という成績で1位突破し、ベスト8をかけたナイジェリアとの試合も試合終了間際に2点を奪って準決勝に進んだ。

 フランスのここまでの強さはリベリの欠場の結果生まれたチームの一体感にあるように“見えた”。優れた個の存在は時に過度の依存を生み、個の出来次第という結果につながることもある。

フランスの複数の得点者とクリア数の少なさ


 どこに一体感が表れているのか。まず、フランスが挙げた10得点のうちベンゼマの3得点、2つのオウンゴールを除く5得点は5人のプレーヤーで奪っている。一つの大会で2つのオウンゴールというのは実はフランスが初めてのチームだ。それが一体感の成す業とまでは言わないが、それでも6人のフィールドプレーヤーが得点に関わるのは比較的珍しい。

 今回の大会は攻守の切り替えが速いと感じる人が多いと思う。攻守の切り替えの速さはセカンドボールの奪い合いとその後のアクションでその速さが分かる。そしてもう一つはクリアの数だ。クリアとは自分のチームがピンチを迎えた時に、そのピンチの芽を摘むためにボールを大きく蹴り出して危ない地域を遠ざけるプレーだ。ただ、クリアを選択すると危険地域を遠ざける代償として相手にボールをプレゼントしなければならない。

 クリアによって相手の攻めモードを継続させるか、クリアせずにパスにしてカウンターに繋げるか。それによって戦況は大きく変わる。クリアせずにパスを選択するためにはチーム内で戦況に対する共通認識と次のプレーの選択肢の共有することが不可欠だ。

 最初の表を見てほしい。フランスの各試合におけるクリア数を示したものだ。


 決勝トーナメントでベスト8をかけたナイジェリアとの一戦は相手の縦の速い攻撃に対してクリアで逃げざるを得ない苦しい展開だったが、それ以外は常に相手より少ないことが分かる。2010年のワールドカップ南アフリカ大会でもクリアの平均が20本前後のチームはスペイン、ブラジル、ドイツ、アルゼンチン等の強豪チームばかりだった。誰もが得点に絡む可能性をもってプレーし、守備から攻撃の切り替えの際の共通認識と攻撃の意識の共有があった。そうしたプレーが「一体感」という印象を与えた大きな理由だったのだろう。

ドイツが見せた「コレクティブ」なサッカーと相手より一人分多い走行距離


 そんなフランスにドイツは試合を通して陣形をコンパクトに保ったままいわゆるコレクティブなサッカーを90分間実践した。コレクティブなサッカーを翻訳すると組織的な、規律を持った集団的なサッカーとなり、一体感と非常に似たニュアンスを持つ。しかし、一体感がより意識的な部分を強調するのに対し、コレクティブなサッカーはサッカースキルが強調される。

 次にあるイラストを見てほしい。


 このイラストはFIFAの公式サイトで紹介されているもので、試合を通した選手の平均ポジションを示す。左がドイツ、右がフランスだ。トップ(FW)の選手は戦術的に高い位置を意識することがあるのでそこを外したフィールドプレーヤーの平均ポジションを黄色いラインで囲んだ。すると一目で陣形のコンパクトさが見て取れる。

 さらにコンパクトさの中で各選手の立ち位置のバランスを見るとフランスの方は大きなギャップがあるのが分かる。フランスはドイツのコンパクトな陣形に入る込むことが出来ず裏を狙う攻撃を多用したが、一方のドイツは奪ったボールを中央付近で前向きにボールを持つことが多かった。それは「一体感」はあるが「コレクティブ」ではなかったフランスの組織のギャップを突けたからだ。

 この試合ドイツの実プレー時間における総走行距離は76,956m、フランスは70,703mだった。ポゼッション率が50%対50%と互角だったから、その差6,253mはほぼ選手一人分の運動量の差だ(データ出所:FIFA.com)。より狭い(コンパクトな)エリアで一人選手が多い状況を想像してみると分かりやすい。言うまでもなく相手は非常にやりづらさを感じたことと思う。

 フランスは一体感という意識の中で、奪ったボールを前に運ぶところまでは相手よりも早く出来ていることが多かった。しかしそうした縦のボールが出た後の最終ラインの押し上げといった部分においてコレクティブではないことが多く、逆に攻撃から守備への切り替えの際に問題が起きることが多かった。一方のドイツは前に行く時、後ろに戻る時の共通理解があり、共にいるべきところに向かって全員の体が動き出していた。結果、ドイツは前半13分のフンメルスのゴールによって1-0の勝利を手にした。

 1954年に始まったワールドカップにおける2チームの戦いはいつの時代でも見応えがあったはずだ。ドイツはフランスに勝った後の試合では疲れ果ててしまうためか1982年、1986年と2回とも準優勝に終わっている。

 今回はフランスに勝った後、もう一つの優勝候補という高い壁が待ち構えている。決してコレクティブではないが、圧倒的な個とファイティングスピリット、そして勝つために限りなく現実的な方法を取るブラジルとの一戦だ。その高い壁を乗り越えることが出来た時サッカーの王国で新しい君主の誕生を見ることになるはずだ。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team
その他の分析記事: http://soccermagazine-zone.com/archives/category/analyze
データ提供元: opta
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

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