【W杯詳細分析・イタリア-コスタリカ】崩れ始めた「組織力対個」の構図 ポゼッションサッカーがゴールに直結しなかったイタリアとリスクを冒してゴールへ向かったコスタリカ

際立ったコスタリカの決定力と組織された守備



 初戦イタリアは新たな自分たちのスタイルとしてポゼッションを高めるサッカーと伝統のカテナチオを併用してイングランドに2-1で勝利した。その試合でのイタリアの93%というパス成功率は1966年のワールドカップ(W杯)以降最も高い数値だった。

 一方のコスタリカ代表はW杯直前に日本代表と親善試合を行い日本が3-1で鮮やかに逆転勝利を飾った相手なので覚えている方も多いと思う。コスタリカは初戦、強豪ウルグアイに3-1で勝利を収めた。北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)所属のチームでワールドカップで連勝した経験があるのはメキシコとアメリカの2チームのみだ。そういう意味ではイタリアに胸を借りる試合“だった”。

 コスタリカとの一戦でいち早く決勝トーナメントへ駒を進めるはずだったイタリアは前半終了間際の44分、オランダのPSVでプレーするブライアン・ルイスに得点を決められてしまう。相手の危険なところにピンポイントで入ってくる嗅覚と決定力は先の日本代表戦のイメージそのままだ。イタリアもピルロからバロテッリへ決定的なパスが送られたり、何度かチャンスはあったが、それでもコスタリカの組織された守備を破ることは出来なかった。

 この日はイタリアはポゼッションサッカーでパスを回すことが目的化してしまい相手ゴールに近づけないという悪い部分が出てしまった。



 最初のイラストを見てほしい。これはコスタリカの試合中各選手のボールタッチ位置の平均ポジションを表している。最終ラインの3人の選手はペナルティエリア幅でフラットな立ち位置をキープしている。

 マインツでプレーする左サイドの⑮ディアス、右サイドの⑯ガンボアは低い位置のサイドの守備に加え、積極的な攻撃参加の結果、平均ポジションが高くなっている。ボランチのポジションは⑰テヘダが見えないが⑤ボルヘスとバランスよく中央エリアでプレーしていたため重なっている。

危険なエリアと入り込めなかったイタリア



 前の選手もスピードに優れた⑨キャンベルを前線に置き、ルイスとボラニョスが左右バランスよく配置されているのが分かる。これまで欧州の強豪国と南米、北中米、アフリカのチームの特徴を組織力対個の力という表現で表すことが多かった。しかし今大会目立つのは欧州以外のチームの守備における組織が整備されていることだ。これが南米の気候に加えて欧州のチームが南米、北中米カリブ、アフリカのチームに苦戦している理由だ。



 二つ目のイラストはコスタリカ、イタリアそれぞれのチームのパス、クロス、シュートの軌跡を示したものだ。緑のラインは成功(シュートの場合は枠に飛んだもの)、赤のラインは失敗(シュートの場合は枠を外れたもの)を示す。

 左のコスタリカはボールタッチ数が少なく、前に早く運ぼうとしているのが分かる。縦への赤いラインが多いが、リスクを冒して前に攻めた結果ペナルティーエリア内への侵入も多い。右のイタリアはミドルサード(ピッチを縦に三分割した時の中盤のエリア)まではほぼ綺麗にグリーンのラインで埋め尽くされている。しかしその多くは横方向へのパスだ。積極性という気持ちの問題とは別に、フィジカルに優れた個の選手にしっかりとした組織を作られてしまい危険な場所に入って行けなかったことが見て取れる。

 決して、ポゼッションサッカーあるいは自らアクションを取るサッカーの終焉と、カウンターサッカーの復権という二軸で捉えるつもりはない。しかし、EURO2008以降、2010年W杯、そしてEURO2012とメジャーな大会を3連覇したスペイン代表、あるいはそこで多くの主力選手を輩出したFCバルセロナを打ち破るために、多くの強豪チームが様々な戦い方を模索してきたことは間違いない。

 これまで多く語られてきたポゼッション対カウンターという対立軸が外れ、サッカーの試合に勝つためにどちらも必要に応じて出来る、つまり戦術の代替案を持ち、状況に合わせた判断に優れ、時にそうした理性を超えた個のスキルとアイデアを持ち合わせた選手がいる、というようなチームがこの大会を制するように思う。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team
その他の分析記事: http://soccermagazine-zone.com/archives/category/analyze
データ提供元: opta

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

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