【W杯詳細分析・アルゼンチン-ボスニア・ヘルツェゴビナ】後半から格段に機能し始めたメッシ その裏にあるアルゼンチンの戦術変更とは

前半孤立していたスーパースター



 日本では我々の代表チームの敗戦を受け、様々な報道がされている。しかしエスタジオ・ド・マラカナンでは何事もなかったかのようにキックオフを楽しみに待っているサポーターたちで賑わっていた。そうリオネル・メッシを擁するアルゼンチン代表の登場だ。対するボスニア・ヘルツェゴビナ代表は今大会ワールドカップデビューした唯一のチームである。

 優勝候補の一つであるアルゼンチン代表に初出場のボスニア・ヘルツェゴビナがどこまで戦えるかという興味以上にメッシが苦手のワールドカップで活躍できるのかという点に注目が集まっていた。メッシが所属するFCバルセロナでの活躍を知っているファンからすると国の威信をかけて戦うワールドカップにおいて571分の出場時間で31本のシュートを放った結果がわずか1ゴールという結果は納得がいかないだろう。

 この日のメッシのパフォーマンスと優勝を狙うアルゼンチンの試合運びを分析してみたい。

 試合開始からわずか3分、ゴール左の角度のある位置からメッシから放たれたフリーキック。ボールはゴール前での競り合いのこぼれ球が相手ディフェンダーに当たりアルゼンチンの先制点が生まれた。メッシ大爆発の予感を感じさせた。

 しかしそれ以降、何度メッシにボールが渡っても複数のボスニアディフェンダーの厳しいマークにあい、決定的な仕事は出来なかった。前半終了時には爆発の予感が「また今大会も……」という不安に変わっていった。

 この日スタート時のフォーメーションは3-5-2でメッシのポジションは2トップの右側だった。しかし実際のフォーメーションは両サイドハーフが低い位置で守備することが多く5-3-2の時間帯が長かった。同サイドの③ウーゴ・カンパニャロ、④パブロ・ザバレタ、⑪マキシ・ロドリゲスからメッシにパスを出してあとは「よろしく!」といった感じでバルセロナのように良い距離でのサポートはあまりなかった。

 実際、前半のメッシは28本のパスを受けたが、その後味方に繋ぐことが出来たのは19本で多くのボールを失っていた。意図的に出したパスの成功率は70%と決して高くない数値だった。

 前半のアルゼンチンの攻撃がどこを中心に行われていたかデータをイラスト化して見てみよう。最初の図はアルゼンチンの前半の攻撃に関するものだが、その割合を見ると半分近くの47.5%がメッシのいた右サイドから攻めていた。孤立したスーパースターはボスニアのディフェンダーに囲まれ輝くことはなかった。

 開始早々のオウンゴールでの得点以外さほど見せ場を作れず、さらに後方に人数をかける守備は相手のロングボールを弾き返しても中盤での数的不利でセカンドボールが拾えない。実際Duels(フィフティ・フィフティのボールを奪い取るプレー)のデータはアルゼンチンの25勝29敗(勝率46.3%)だった。

個を輝かせたアルゼンチン監督の緻密な分析と采配



 後半に向けてアレハンドロ・サベージャ監督が動いた。

 メッシひとりに集中する状況を変えるべく後半開始から2人のメンバーを変えた。1人目はメッシを活かすための司令塔フェルナンド・ガゴ、そしてもう1人はメッシに集中した守備を分散させるためにゴンサロ・イグアインを投入し、システムを4-3-3に変更した。

 後半のイラストを見て分かるように右に偏っていた攻撃は中央にその起点を移し、左の攻撃さえもその比率を下げた。ボスニアの大柄で屈強なディフェンス陣にサイドからクロスを放り込んでもあまり効果的ではない。実際この日のアルゼンチンのクロスは8本でボスニア19本の半分以下だった。

 イグアイン、アグエロ、そしてメッシが前に揃ったことによりメッシが輝きを取り戻した。前半のパスに対して後半は約6割増の43本のパスを受け、パス成功率も70%から86%と大きく改善した。後半、メッシが受けたパスの60%弱にあたる25本はガゴ(18本)とイグアイン(7本)からだ。

 前半から一緒にプレーしたアグエロにこの2人が加わったことにより、ボスニアはメッシに対して常に複数のディフェンダーを割くことは難しくなってしまった。さらに中盤の枚数を増やすことによってアルゼンチンのDualsの数値も26勝16敗(勝率62%)にまで改善された。

 後半20分のメッシらしいゴールを見てホッとしたファンも多いと思う。このゴールはメッシのワールドカップでの呪縛が解けたといった迷信的なものでもなければ、フィジカルコンディションが上がってきたという個人的なことだけでもない。前半の試合運びから状況を正確に判断し、戦術的な修正を加えた結果だ。

 このワールドカップでは個の選手の輝きが目立つ。しかしピッチの上の個を輝かせるために指揮官の緻密な分析と采配があることを覚えておこう。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team
その他の分析記事: http://soccermagazine-zone.com/archives/category/analyze
データ提供元: opta

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

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