【W杯詳細分析・イングランド―イタリア】ピルロが見せた驚異のパス成功率とイタリアの変幻自在な戦術がイングランドを凌駕

前半のパス成功率が96%だったピルロ


 過去に優勝経験を持つ3チームがひしめくグループD屈指の好カード「イタリア対イングランド」がアレナ・アマゾニアで行われた。この2チームの直近11試合でイングランドは2勝しか出来ていない。イタリアは1998年のワールドカップでフランスに零封されて以降14試合連続得点を挙げている。直近17ゴールのうち7ゴール(41%)がコーナーキックからで、さらにペナルティエリアの外側から14得点は66年のワールドカップ大会以降最多だ。

 一方イングランドはエースのルーニーがこの大会では594分間でノーゴールというのが気になる点だった。

 試合はイタリアが1対1で迎えた後半の開始早々にバロテッリの決勝点で勝利を収めた。その試合データからイタリアの強さの秘密を分析してみたい。

 イタリアといえば“カテナチオ”と表現される固い守備が特徴のチーム“だった”。しかし前回大会未勝利のままグループステージを敗退したことを受け、守備に重きを置いたスタイルの抜本的改革を行った。改革の担い手はセリエAフィオレンティーナを躍進させたプランデッリ監督だ。改革は順調に進み2012年のEUROでは準優勝を遂げた。その攻撃的サッカーの片鱗は昨年のコンフェデレーションズカップで4対3と激闘を制した日本代表戦を思い出して頂ければと思う。

 前半のポゼッション率はイタリア65.5%、イングランド34.5%だった。パスの本数はイタリア382本(成功率93.2%)、イングランド196本(86.2%)とイタリアはほぼ倍の数のパスを失うことなく回していた。

 その中心はピルロだ。前半だけで70本、しかも決して低い位置だけでボールを受けてさばいていたわけではない。70本のうち37本を相手陣内で配給していた。そんなピルロのパスの成功率はなんと96%だ。

 ピルロのタクトが振られた位置はセンターサークル中心に大きく広がっている。彼がいかにこのゲームで影響を与えたかはイングランドの中盤の中心選手ジェラードと比較すると分かりやすい。

 最初のイラストはジェラードとピルロがそれぞれプレーした位置を一つ一つドットで示したものだ。プレーエリアの広さと関わりの多さが分かってもらえると思う。

前半から後半にかけてポゼッション率が変化


 そのようなピルロ中心の高いポゼッション率でイタリアが前半を圧倒したが、イングランドも牙をむいた。前半37分イタリアボールを奪った直後、ここまであまり目立たなかった左サイドで待ち構えていたルーニーへ縦パスを通した。それを受けたルーニーはピンポイントの高速クロスを中央に飛び込んできたスターリッジに合わせてゴールを奪った。

 前半残り10分を切った時間帯での、エース・ルーニーのお膳立てによる同点ゴールは嫌でもチームを盛り上げる。喜び過ぎたイングランドベンチのスタッフが怪我をするおまけつきだ。そうして前半を終える。

 後半に入ると前半の勢いそのままにイングランドが攻勢をかけてきた。

 そして前半のポゼッション率がイタリアとイングランドが逆転した瞬間、イタリアの素早い攻撃から右サイドハーフのカンドレーバのファーサイドへのクロスを、バロテッリが少し戻りながらもイングランドゴールに叩き込んだ。その後のイタリアは攻め急がず回す時はしっかりとボールを保持し、時折ピルロからの縦パスで攻撃のスイッチを入れる展開が続く。前半と後半が別のチームになった状況を見てみよう。

 2つ目のイラストは前半のプレーエリアとポゼッション率を示したイラストだ。若干、イングランドゴール前でのプレーの方が多いが、ほぼ均等にそれぞれのゴール前でプレーしている。ミドルエリアでのプレーは60%弱だ。こうしたプレーエリアでイタリアは三分の二近いボールを支配していたわけだ。

状況に応じて戦術を変えてきたイタリア


 しかし、3つ目のイラストを見て欲しい。これは後半のプレーエリアとポゼッション率を示したものだが、これを見れば、前半終了間際の失点で元気を出したイングランドに対して、イタリアが前半のような攻撃的サッカーで真っ向勝負を仕掛けたわけではないことが分かる。むしろ相手の勢いに対してそれを削ぐかのごとく自分たちの伝統的な戦い方に変更したようだ。

 前半から後半にかけて、ポゼッション率が大きく逆転し、プレーエリアにも大きな変化が起きた。後半の図はまさにイタリアが自陣ゴール前を固める本来のカテナチオのスタイルとなったことを示すデータだ。

 守備に徹した時にイタリアを崩すのは簡単ではない。個々のディフェンス力ももちろんだが組織力が素晴らしい。イングランドボールが動くたびに全選手が細かくポジションを修正していた。また、ボールを奪った後、素早い攻撃と、失わないキープの状況判断が素晴らしかった。

 対戦相手、あるいは試合の状況に応じて変化可能な戦術のバリュエーション、そしてそれを実行出来るIntelligenceが光ったイタリアの勝利だった。そして最後に勝利を決定づけたのはバロテッリやピルロのという個の輝きだったということも忘れてはいけない。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team
その他の分析記事: http://soccermagazine-zone.com/archives/category/analyze
データ提供元: opta

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

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