池袋暴走事故で90歳に実刑確定 高齢受刑者を収監? 刑の執行停止ある?

東京・池袋で2019年4月に起きた暴走事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われていた旧通産省工業技術院の元院長(90)について21年9月17日、実刑判決が確定した。歩くのもおぼつかない様子がテレビなどで報じられているが、このままだと近日中に刑務所に収監される見通しだという。

「罪を償いたい」

東京地裁は2日、元院長が運転していた車両には異常はなく、アクセルとブレーキの踏み間違いが事故原因と認定。禁錮5年を言い渡していた。控訴期限の16日までに検察、弁護側双方が控訴しなかった。

各紙の報道によると、元院長は「ブレーキとアクセルの踏み間違えはなかった」と一貫して無罪を主張したが、15日に面会した犯罪加害者家族の支援団体代表に「遺族に申し訳ない。罪を償いたい」と話していたという。

今後はどうなるのか。時事通信によると、刑事訴訟法には、健康を著しく害する場合や70歳以上の場合、検察官の裁量で刑の執行を停止できる規定がある。ただ、実際に停止されたケースは少なく、収監される公算が大きいとのことだ。元院長自身も収監を受け入れる意向だという。禁錮刑のため刑務所での労務作業は科されないらしい。

仮釈放もありうる

弁護士ドットコムは、今後の手続きについてさらに詳しく書いている。それによると、元院長は「在宅事件」だったため、禁錮刑の確定を受けて、検察官が書面で呼び出しを行う。本人が出頭したのちに刑事施設の長に引き渡す、という流れになる。

書面は、判決確定後1~2週間後くらいになることがある。ただし、新型コロナウイルス感染症の関係もあり、諸々の調整に時間がかかる可能性もあるという。

交通事故犯はいわゆる「交通刑務所」に入ることが多いが、必ずしもそういう決まりがあるわけではなく、一般的な刑務所に入るケースもある。

刑務所に入ったあとでも、刑事施設の長の上申などによって刑が執行停止になることはある。ただし、犯罪白書によると、きわめてわずかだ。なお、制度上は、刑期の3分の1を終えると仮釈放の可能性はある、と解説している。

70歳以上の受刑者が急増

近年、刑務所では高齢者が増えている。社会の高齢化に伴い、受刑者に占める高齢者の比率も高まっているからだ。その実態は、斎藤充功さんの『ルポ 老人受刑者』(中央公論新社、20年5月刊)に詳しい。

同書によると、65歳以上の老人受刑者が全体に占める比率は2007年が2.65%、17年は4.81%。ただし、受刑者の実数が減っている(7万989人→4万7331人)ので、老人受刑者の実数(1884人→2278人)が猛烈に増えているわけではない。そのなかでの顕著な特徴は、70歳以上が急増していることで、この10年間に4.8倍になっている。高齢者の犯罪で多いのは万引きだという。

同書は、「東日本成人矯正医療センター」(東京・昭島市)についても取り上げている。要するに日本最大の医療刑務所だ。医師24人がいて12の科目で総合病院並みの診療をしている。手術も行う。一度に30人が人工透析できる設備もある。収容定員は580人。心身の疾患受刑者約250人が収容されている。最高齢の収容者は86歳だという。一般の刑務所のように、外界と隔てるコンクリートの壁はない。

それにしても、元院長の90歳という年齢は、高齢化が進む受刑者の中でも、かなり突出している。

刑務所では認知症と見られる受刑者も少なくないそうだ。同書では、施設側の苦労も紹介されている。受刑者の処遇上、いちばんの問題は何ですか、という斎藤さんの問いに、刑務所の看守部長は「物忘れ」がひどい受刑者の扱いだと即答している。「高齢受刑者の介護に手を取られ、現場では仕事量が増している」という。<J-CASTトレンド>

2021/9/17 20:10

この記事のみんなのコメント

1
  • 脱走兵

    9/18 9:47

    刑務官さんも大変だね。足の悪い、プライドだけは高い上級国民のお世話しないといけないなんて。しかもいつ逝くかわからん年齢だし。誰一人幸せになってないな。過失ではあるから死刑や懲役にまでする事では無いだけに、これ以上の着地点も思いつかないけど。加害者と遺族、どちらの立場であれ明日は我が身と思うとモヤモヤが晴れない事件だな。

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