ワクチンを打つ=知性がないと主張する夫。“ワクチン離婚”を考える妻たち

 新型コロナウイルス感染拡大に伴うリモートワークの推進や、生活スタイルの変化、そして予防に対する意識の差などによって昨年から話題になることの多い「コロナ離婚」。

 コロナ禍の日常に慣れつつあるように思われる今もなお、SNSには妻たちによる多くの愚痴が散見される。しかし今年半ばからその内容が少し変化してきたように思う。それは「ワクチン接種」に対する考え方の違いにより「ワクチン離婚」を考える妻たちの叫びが増えてきていることだ。

◆陰謀論や反ワクチンのYouTubeに影響されて

 6歳と1歳の息子を持つ鈴木美穂さん(仮名・36歳)は「帰る里があればすぐにでも離婚したい」と怒りをあらわにする。コロナ禍以前は、仕事の関係で昼夜逆転生活。「寝る部屋も別ですれ違い生活だからこそうまくいっていたのですが、外出自粛でいっしょに過ごす時間が増えたことで相性の悪さが際立ってしまった」そうだが、さらにワクチン接種に対する考え方の違いが「離婚したい」という思いを加速させた。

「ここ最近、旦那が『反ワクチン』『コロナは人工的に作られている』といったYouTubeを観て影響されちゃったみたいで。この動画を見ろ!と勧めてきたり、ワクチンがいかに危険かといった話ばっかりしてきたりして、うんざりしていました。

 特に困っているのが『ワクチン接種は絶対にしない』と言い張っていて。私は子供の生活に支障が出るかもしれないので打ってほしいとお願いしているのですが……」(鈴木さん、以下同)

 数日前にようやくワクチンの個別接種の予約が取れた鈴木さん。予約の電話をかけていたところ、横で夫が露骨にため息をつき、嫌な雰囲気になってしまったという。

「旦那は『お前がワクチンを打つのに文句は言わないから、俺が打たないことにも何も言うな』と言っていたにもかかわらず、そんな態度を取られて、イライラして喧嘩になっちゃいました! 挙句の果てには陰謀論がどうとか言い出して心の底から気持ちが悪いです。以前はこんな人じゃなかったはずなんですけど」

◆コロナ離婚が頭をよぎる

 そんな夫も会社からはワクチンを打つように勧められているという。

「だからいずれは打つよ、とか口では言っていますけど、その頃には新たな陰謀論に惑わされて打たないと思います……」

 すでに諦めている様子の鈴木さん。「離婚したい!」とコロナ離婚が頭をよぎったものの、すぐにはできない理由があるという。

「私の両親は他界しており、帰れる実家がないことが大きな理由です。さらに、下の子供がまだ1歳で小さいこと、自分自身の収入がないことから、離婚を踏みとどまっています」

◆子供に影響があることは許せない

 とはいえ、子供に影響があることは許せないという。

「離婚したら子供が不自由するから今はお金のために我慢しているだけで。もしも今後、子供もワクチンの接種対象になって旦那が『子供には打たせるな』とか言い出したら、すぐにでも離婚を視野に入れます。子供は学校や習い事もあるし、コロナにかかってしまったら周りの目もありますから」

 夫婦だけであれば別居という選択肢もあるが、子供がいるとなかなか難しいもの。

 価値観の違いから「老後をともにするのは無理」と言いながら今は生活のために我慢している最中だが、子供の感染リスクを考えるとすぐに離婚したほうがいいのかと悩む日々だ。

◆「ワクチンを打ったお前は知性がない」と言われ…

「あまりにワクチンに対する考えが真逆なもので、一瞬コロナ離婚が頭をよぎりました」と話すのは川口芳江さん(仮名・48歳)だ。

「以前から価値観の違いはありましたが、コロナによってそれが浮き彫りになったという感じですね。先日、旦那とニュースを見ていた際に、『この女性アナウンサーはワクチン打てたのかしらね』と私が言ったところ、『このアナは知性があるからワクチンは打っていないよ』と旦那が言い出して。裏を返せば、ワクチンを打った私は知性がないということ? と喧嘩になってしまいました」(川口さん、以下同)

 以前からワクチンに対して苦言を呈していたという夫。なぜワクチンを打つ=知性がないという発想に至ったのだろうか?

「去年の11月頃は、旦那もワクチンに期待していたんです。でも接種が始まって打ったあとに亡くなった方が増えてきた頃から『原因が不明だから危ない、やめたほうがいい』と言い出しました。それから、ネットやYouTubeでいろいろと調べていくうちにワクチンはヤバイと感じてしまったようです。毒になる成分が入っている、とか言っています。

 知性がある人であればちゃんと調べて、ワクチンが危ないと判断すると思っているのではないでしょうか。私は先日ワクチン接種をしたのですが、何度も『あんなに忠告したのに打ったお前はバカだ』と言われます」

◆「夫は洗脳状態にある」

 今は離婚を本気でするつもりはないと話す川口さんだが、場合によっては踏み切る可能性もあるという。

「旦那は一種の洗脳状態にあるような気がしています。これがひどくなってきて、家庭内だけでなく外でも色々言い出したら本気で離婚を考えるかもしれません」

 ワクチンに対する考え方は人それぞれであり、現時点では「これが絶対に正しい」というものもない。しかし、ともに生活する夫婦の場合、その価値観の違いが大きな亀裂を生むことにもなる。感染リスクへの恐怖などを考えると「あなたはあなたの価値観で」というわけにもいかないだろう。今後こうした「ワクチン離婚」が増えてくる可能性もある。一刻も早いコロナ収束を願うことしかできない。

<取材・文/松本果歩>

―[「コロナ離婚」を考えた瞬間]―

【松本果歩】

恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter:@KA_HO_MA

2021/9/7 8:52

この記事のみんなのコメント

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  • 死んだウィルスを体内に入れるのは不活化ワクチンですね。中国のシノバックやシノファームなんかがそう。今度、日本で4例目の承認となったノババックス(アメリカ開発/国内製造)は組み換えタンパクワクチンで、これは以前からある技術で副反応もmRNAワクチンより少ないらしいです。ブースター接種する時、交差接種できるようだったら、これを打ってみたいです。

  • 2回目の副反応がひどくて大変(高熱、一週間の倦怠感、下痢、接種部位の痛み、腫れなど)だったけど、やってよかったと思っています。自分だけでなく周りの人のことも考えるとブースター接種も覚悟して受けようと思っています。強制はできないけど出来る人はしたほうがいいんじゃないかな

  • グレイス

    9/9 18:51

    我が家は全員(3人)、2回接種した。開発期間の短さから一概に一緒には出来ないが、毎年インフルエンザの予防接種をする身としては無料で有難いまである。さらに有難いことに副反応も軽かった。

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