「字になってない…」黒板の漢字を写せない子どもたち、意外な理由があった

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「知的障害」「発達障害」という言葉が世の中に浸透して、久しい昨今。そんな中、知的障害や発達障害とも認定されないものの、学習に困難を抱える「グレーゾーン」の状態にいる子どもたちの存在があります。

 これまで、グレーゾーンにいるがゆえに生きづらさを抱える子どもたちを多数診療してきたのが、児童精神科医の宮口幸治さんです。そんな宮口さんが新刊『困っている子を見逃すな マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち2』(『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』の続編)の中で紹介するのが、認知機能の弱さから学習に困難を抱える子どもたちの存在です。

 そこで、今回は、宮口さんに、子どもの認知機能が弱いと学習にどんな困難さが生じるのかを聞きました。

◆漢字が書けない、黒板の文字が写せない。それは認知機能が弱いから

 そもそも、認知機能は子どもの学習にどのように関わっているのでしょうか。宮口さんはこう解説します。

「認知機能は、学習の土台のようなもの。運動に例えると、基礎体力に相当します。鉄棒や跳び箱ができるようになるためには、そのテクニックだけでなく、筋力、持久力、敏捷性、柔軟性、集中力などといった基礎体力が必要です。

 これは、学習でも同じこと。各教科を学ぶためには、学習の土台となる認知機能(しっかり見る、聞く、覚える、想像する力など)の力が必要になってきます。

 そして、認知機能が弱いと、『漢字が覚えられない』『黒板の文字が写せない』『繰り上がり計算ができない』『話を集中して聞けない』『不注意なことが多い』などといった学習上の苦手感や困難さにもつながっていくのです」

◆視覚認知に問題があると、文字を覚えにくくなる

 こうした学習の基礎を支える認知機能の中でも、特に日々の生活にも影響を与える機能のひとつが、「視覚認知」です。

「視覚認知に問題がある子は、視力が正常であっても、図形や文字を正確に認識する力が弱く、ひらがなや漢字などの習得に困難さを生じるのです」

◆図形や漢字の模写で、視覚認知の弱さはチェックできる

 では、子どもの視覚認知が弱いかどうかは、どうしたら判別することができるのでしょうか。

「〇×△などの簡単な図形の模写をさせてみたり、同じ漢字を何度か書かせてみたりすると、視覚認知の発達状況を確認することができます。もし、これらが年齢相応にうまくできない場合は、視覚認知の弱さが背景にある可能性もあります。

 漢字や図形などを正確に写すことができないと、自分の頭で記憶することはより一層困難になり、その後の学習にも支障をきたしてしまいます」

◆「やる気がない」とみなされて、放置されやすい

 さらなる問題は、認知機能が弱い子は、はたから見ると、“やる気がない”“怠けている”と受け取られやすい点です。結果、学校や家庭で、その認知機能の弱さをなかなか気が付いてもらえないまま、成長してしまうのです。

「学習の土台の弱さを疑ったら、どの認知機能が弱いかを把握し、どうトレーニングすべきかを知ることが重要です。それに合ったトレーニングをしっかりと続ければ、認知機能を改善することは可能です。

 たとえば、視覚機能の場合は、点つなぎや模写などを通じてトレーニングを行うことが、機能強化につながります」

 ただ、現状では、学習上の困難さから弱い認知機能を把握し、それに対して適切なトレーニングを子どもに提供することは、親や現場の教師たちだけではなかなか難しいため、専門家の適切なアドバイスが重要だとも考えられます。

 もしも、自分の子どもに「やっているのに、なぜか点が取れない」「何度教えても、覚えられない」といった傾向がある場合は、認知機能の弱さが原因になっている可能性もあります。そんなときは、「もっとやらさねば」とか「努力が足りない」と考えるほかにも、専門家に相談したり、適切なトレーニングを受けさせたりするなど、早めの対策をとることをお勧めします。

【宮口幸治】
立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書『困っている子を見逃すな マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち2』

<文/女子SPA!編集部> 


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