【流星群を求めて2】ブラック面接を描く『シュウカツ』で「合格点」を出した“演技就活生”・横浜流星

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すい星が発するちりが彩る“流星”の輝き。それがまとまりより大きな輝きを放つ“流星群”。本連載では、そんな流星群としての俳優・横浜流星の足跡を辿る。第2回は、就職活動生たちが恐るべきブラック面接官との奮闘を繰り広げる『シュウカツ』(2015)を取り上げ、“演技就活生”であった当時の横浜にスポットを当てる。

■「シュウカツ」を正す勧善懲悪の物語

(C)2015「SHUKATSU」面接委員会

誰もが一度は経験しなければならない就職活動。通常、大学3年からはじまる就活は、学生にとってその後の人生を大きく左右する一大イベントだ。でももし、就職を希望した先がブラック企業であったり、あるいはその面接官がとてつもない圧迫面接を強いてくるような相手だとどうするだろう。何の後ろ盾もない学生がひとりでそうした敵に挑むには、あまりに社会経験が足りない。しかし本作は、そうしたブラックな相手に果敢に挑む学生の勇姿を描く、さながら学生が過酷で理不尽な「シュウカツ」を正す勧善懲悪の物語のようだ。

面接官がテレビモニター越しに顔を見せない『見えない相手』、内定を辞退しないように誓約書へのサインを強要しあらゆるこそくな手段を繰り出す『拡散』、最終面接でプライベートなことまで根掘り葉掘り問い詰めてくる『生き残り』、同席した他の就活生にかき回される『控え室』と全4話からなる本作には、様々なタイプのブラックな面接官が学生たちの前に立ちはだかる。横浜流星は、その第2話『拡散』に登場する。面接会場である会議室に颯爽と現れる彼の精悍な姿には、この後本性を剥き出しにする狡猾な敵を退治するには十分すぎる説得力がある。

■17歳から学ぶ「人生の心得」とは?

(C)2014 TOEI VIDEO

ところで、本作を観てつくづく考えさせられるのは、就職した後の学生の未来である。高校での受験勉強を経て大学に進学し、レポート課題をこなし卒論を書いて卒業をし、就職する。こうした段階を経て社会へと羽ばたいていくが、社会人になると日々の業務に時間を取られ、本来の自分、ほんとうの自分はどうしたいんだろうという疑問を抱く間もない。それはあまりに機械的で、人生の充足感を得られていない自分が嫌になってしまいそうになる。そんな時に大切なのは、社会に羽ばたいていく前、就活生として様々な夢で頭がいっぱいになっていた頃の自分が思い描いていたはずのかけがえのない思考の軌跡だ。

学生の時に考えていたことなど、社会では通用しない、上司はそう言うかもしれない。社会は有用性、つまり「役に立つこと」で成り立っているからだ。ビジネスの世界ではクライアントの課題解決を目標として設定し、最終的に営業利益を出さなければならない。それが営業成績となるのだが、果たして会社で業績を上げることだけがひとりの人間の人生の至上目的なのだろうか。それが自分の好きではないという意識がある仕事であれば尚更だ。人生に答えや正解がないように、最終的な目的もないに等しいのではないだろうか。

ここで思い出されるのが、横浜流星初のDVD映像作品『横浜流星 1st DVD R』(2014)の結びとなる横浜自身によるナレーションだ。「夏が終わり、秋が巡れば僕はまたひとつ大人になる。新しい自分に付ける名前はまだない。それでも、僕は自分が誰かを知るためにまだ旅を続けるつもりだ」と、彼が語る通り、自分が「何者か」という人生最大の問いに対する答えはない。ないからこそ、人はそれを探すために人生という旅を続けていく。横浜の場合、それは「役者」の道である。役者は「表現者」である。ビジネスマンとは違い、表現者は、この有用性のない、役に立たない世界の中でもがき、何かかたちのあるものを表現としてアウトプットしなければならない。それは孤独な思考と作業の連続である。そのためには、「答えがない」ということに耐え続けなければならない。人生は合理的にばかりは生きていられない。屈託のない17歳の横浜の言葉から学ぶべきは、こうした有用性のない非合理的な態度であり、これこそ、社会人が忘れてはいけない「人生の心得」ではないだろうか。

■“演技就活生”としての合格点

(C)2015「SHUKATSU」面接委員会

役者の仕事は常にオーディションの連続である。日本映画と違いハリウッド映画作品ではどんな大物俳優であっても必ずオーディションを受けなければならない。『横浜流星 1st DVD R』が発売された当時17歳の横浜は、戦隊ヒーローものに出演する駆け出し俳優であり、映画、ドラマ作品問わず様々なオーディションに挑戦する毎日であったはずだ。就活生の奮闘を描いた本作は短編とは言え、ちょうど映画初主演作となった、自身のキャリアとしてまさに“演技就活生”の時期の作品である。

だが、正直映像作品としての本作の出来栄えはあまり褒められたものではないだろう。ブラック面接官を演じる俳優の誇張された一本調子の演技は、メリハリがなく、テンポが悪い。俳優同士の単調な切り返しのみで構成された密室劇というのがまた息詰る。一方で、演技就活生の横浜はかなり感の良い演技をしている。冒頭、会議室の扉を二度ノックして入ってくる瞬間の凛々しい表情。その視線からは演技に対する直向きさが伝わってくる。ブラック面接官の横暴が過ぎたところで、反撃に転ずる瞬間も迫力がある。逆に先輩俳優の演技を引っ張る推進力とさえなっており、同時収録の他短編作品に比べても群を抜いた演技力だ。本作は横浜のキャリアの中ではあまり注目されない作品だが、演技就活生としての「合格点」をきっちり残したという意味では、その後の華々しい活躍への大きな足がかりとなった作品であるだろう。

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