【生き延びた被害者による復讐計画】『復讐者たち』ドロン・パズ&ヨアヴ・パズ監督インタビュー

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これまで映画化されてこなかった知られざる史実を基に、ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちによる驚くべき復讐計画を描く衝撃のサスペンス『復讐者たち』。ホロコーストを他の作品とは異なるアングルから捉えて表現したというパズ兄弟監督にお話を伺いました。

 

『復讐者たち』

 

© 2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE

 
7月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほか全国公開
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出演:アウグスト・ディール(『名もなき生涯』『マルクス・エンゲルス』『イングロリアス・バスターズ』)、シルヴィア・フークス(『ブレードランナー2049』)ほか
監督・脚本:ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ
2020年/ドイツ、イスラエル/英語/110分/シネスコ/5.1ch/原題:PLAN A/日本語字幕:吉川美奈子/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム
 
 

 
 
概要:
第二次世界大戦中にナチス・ドイツがユダヤ人に対して行った国家的な絶滅政策、すなわちホロコーストの惨劇は、600万人以上のユダヤ人の命を奪ったとされる。
この人類史上最悪の蛮行は膨大な数の映画の題材となり、歴史ものや戦争ものの一大ジャンルを形成している。
この度、公開される『復讐者たち』は、知られざる破格の驚きに満ちた実録ドラマだ。
 
 

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ストーリー:
1945年、敗戦直後のドイツ。
ホロコーストを生き延びたユダヤ人男性のマックスが難民キャンプに流れ着き、強制収容所で離ればなれになった妻子がナチスに殺された事実を知る。
絶望のどん底に突き落とされたマックスは復讐心を煮えたぎらせ、ナチスの残党を密かに処刑しているユダヤ旅団の兵士ミハイルと行動を共にすることに。
そんなマックスの前に現れた別のユダヤ人組織ナカムは、ユダヤ旅団よりもはるかに過激な報復活動を行っていた。
ナカムを危険視する恩人のミハイルに協力する形でナカムの隠れ家に潜入したマックスは、彼らが準備を進める“プランA”という復讐計画の全容を突き止める。
それはドイツの民間人600万人を標的にした恐るべき大量虐殺計画だった……。(公式サイトより)
 
 

 
 

 

ドロン・パズ&ヨアヴ・パズ監督

 

Plan A_DIRECTOR Doron Paz_DIRECTOR Yoav Paz_Foto Patricia Horlbeck_Copyright Getaway Pictures

ドロン・バズ(左)、ヨアヴ・パズ

イスラエル出身。
TVシリーズの監督を経て、POVスリラー『エルサレム』(16)で長編映画初監督を務める。
続く『ザ・ゴーレム』(19)ではユダヤ教の伝承に登場する泥人形「ゴーレム」を題材にしたホラー作品を作り上げた。
 
 
 
――『復讐者たち』は、これまで映画の題材として取り上げられることがなかった「プランA」という史実を基に描いていますが、お二人が「プランA」を知ったきっかけと、これをテーマに映画を撮ろうと決意した経緯を教えてください。

ヨアヴ◆友人から話を聞いたことがきっかけです。彼の祖父が『復讐者たち』の主人公マックスと同じような経験をし、密告者を殺すという話があったと言っていたそうです。それを聞いた時に、映画のテーマとして凄いものになるという印象を持ちました。そこからリサーチをしていき、ユダヤ人の復讐という話を知るに至ったわけです。「プランA」は、子供の頃から教えられてこなかったですし、友人たちに聞いても、みんな知らなかったです。そこで、そのような復讐劇があったことを伝えるべきだと思い、次の映画としてこれが相応しいのではないかと思いました。ホロコーストを、今までと異なるアングルから捉えて表現し、伝えていくということが大事だと考えました。
 
 

 

人生の最初のピークに全てを失ったら…

 
――監督たちは、「ナカム」の生存者に取材して、この映画の脚本を執筆したそうですが、取材の際に特に印象的だったことは?

ドロン◆生存者の方たちは、とても素晴らしく際立った方たちだったという印象が強く残っています。彼らが一様に言っていたことというのは、「我々を簡単には判断しないでほしい。今の年を取った我々で判断するのではなく、当時の我々のように、もしあなたが21・22・23歳で、人生の最初のピークの時に全てを失ってしまったら、家族を失ってしまったら……そういう状況に一旦身を置いて想像してから判断してほしい」ということでした。「全てを失ってしまった若者として、あなたはどうするのか? 自分の中にため込んでしまっている憎悪というものにどう対処すればいいのか?」と。良いとか悪いとか、そういう単純な判断ではなくて、自分だったらどういう行動をするだろうかと考えてほしいと言われたことが印象的でした。
 
 

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ドロン◆さらに、彼らが持っている人間性というものをちゃんと認識してほしいと。彼らは感情がない、ただのマシーンではもちろんないわけで、復讐というものに蝕まれていったんだと話していました。復讐心は癌のようなもので、腫瘍が自分の中を蝕んでいくような感覚だったそうです。ただ、ドイツ人をみんな殺してしまえということではなく、苦しみながら、どうしても復讐をしたいという感情と自分の中で闘いながら、彼らは存在していたんです。だから、彼らにとって「プランA」は簡単なことではなかったということです。
 
 

 

マックス役に相応しい俳優

 
――マックスを演じたアウグスト・ディールさんの演技が素晴らしかったです。キャスティングの経緯を教えてください。

ヨアヴ◆ドイツのプロデューサーから、アウグストがマックス役に興味を持っていると聞いたのですが、アウグストといえば『イングロリアス・バスターズ』などの作品でナチスの兵隊役を演じている印象が強かったので、最初はどうなのだろうと思いましたが、実際に彼と会ってみたら、マックス役は彼しかいないと感じました。それまでに持っていた先入観は取り払わなければいけないと思いました。
 
 

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マックス役、アウグスト・ディール

 
 
ヨアヴ◆肌の色が濃い人や、ロシア系の移民など、色々な人がユダヤ人にはいます。イスラエルでは、それぞれ違う背景から来た人たちも受け入れられるということで、アウグストがユダヤ人を演じても、そこに問題はないと思いました。もちろん彼はイスラエル生まれではありませんし、ユダヤ人ではないですが、非常に良い役者ですし、彼に会って、マックス役はアウグストだとすぐに分かったんです。
 
 

 

エンターテイメントは重要な要素

 
――『復讐者たち』は、力強い歴史サスペンスで、アクションも満載で、セリフも多くの人に届く英語ですよね。最初から最後までグイグイと引き込まれる作りになっていて、大きなスクリーンで観るべき映画だと思いました。この映画を語る時、「エンターテイメント作品」という言葉を使ってもいいのでしょうか?

ヨアヴ◆あなたがおっしゃるように、本作はドキュメンタリーではなくドラマです。色々な複雑なテーマを扱っていますが、我々の目を通して描かれているものです。決してニュートラルなものでもなく、簡単な解釈を許すものでもありません。本作について、正確ではないとか、実際とは異なる話だというような言い方をする人もいるかもしれませんが、我々は点と点を自分たちなりにつないで物語を作っていったという意識があります。
 
 

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ヨアヴ◆なので、本作がエンターテイメントであるということはとても重要であり、歴史的スリラーでもあります。ところどころ、正確性よりもドラマに寄るところもあるかもしれません。スリリングであってほしいですし、エンターテイメント的なものであってほしい。そういった色々な要素が込められていますが、大きな声で我々が言いたいのは、様々なテーマを扱っていながらも、とてもエンターテイメント性のある映画を意図して作ったということです。
 
 

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復讐を複雑な形で表現

 
――想像を絶するような、死ぬか生きるかの体験をして、愛する人を殺され、絶望したマックスのような人たちが復讐を望むことを、監督たちはどのように解釈して、この映画を作りましたか?

ドロン◆それについては、逆に観客に問いかけたいと思います。マックスのような状況に置かれた場合、あなたならどうするでしょうと。我々は、白黒ハッキリできるものではないと思いました。とても複雑なことが、そこにはあるような気がします。それが全て、その質問につながってくると思います。
 
 

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ドロン◆「プランA」は、物凄く酷いことだと単純に思うかもしれません。ドイツの子供たちを殺す、というところに目が行くかもしれません。ただ、マックスたちが経験したことを考えたら、やっぱり白黒ハッキリつけられないような状況が出てくると思うんです。我々は、彼らの怒りや悔恨、苦痛といったものを表現したいと思いました。多くの映画で復讐について描かれています。例えば、クエンティン・タランティーノの『キル・ビル』などでは、何かされたから殺してしまえ、というような状況も描かれているかと思いますが、我々の『復讐者たち』では、復讐というものをもっと複雑な形で表現しています。
 
 

Plan A_ DIRECTOR Yoav Paz_ MICHAEL Michael Aloni_DIRECTOR Doron Paz_Foto Patricia Horlbeck_Copyright Getaway Pictures

バズ兄弟監督とミハイル役のマイケル・アローニ(中央)

 
 
ヨアヴ◆彼らが経験した状況を、マックスの目を通して感じてほしいと思います。観客は本作を見ることによって、彼の目線で旅を続けます。戦争の後に生き残って、人が壊れてしまった状態から復讐をしたいという気持ちに駆られる姿を見るわけです。そして、マックスは「プランA」というものと出合って、そこに自分を投影していくことになりますが、それはドイツの人たちを600万人という規模で殺そうとするという話に発展していきます。マックスの目を通して、一緒に旅をすることで、彼の中で何が起こっているのかを理解し、映画が終わった後に、もしも自分の中に何か疑問が残っていたら、我々の映画としては成功したのではないかと思います。観終わった後に「自分ならどうする?」と自問して、考えてくれたら嬉しいです。
 
 

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取材・文/清水久美子
 
 


復讐者たち

復讐者たち

2020年/ドイツ=イスラエル/110分

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