「私さえ我慢すれば…」男にNOと言えない女が、モラハラ彼氏から解放されたキッカケは…

ステイホームの時間が増えたいま、 東京にいる男女の生活は大きく変わった。

その中でも華やかな生活を送っていたインスタグラマーたちが、こぞって夢中になったのが「#おうち美容」。

外からも内からも自分と向き合い「美ごもり」生活を送った人々には、いったいどんな変化があったのだろうか?

1つのアイテムが、人生を変えることもある。

東京で「#美ごもり」生活を送る人々の姿を、覗いてみよう。

今回はアンバランスな女・真子(30)の話。

▶前回:「20代の時より、紹介される男のレベルが落ちた。でも...」妥協できない30代独身女の、リアルな叫び

口元コンプレックスで、バランスの悪い女・真子(30)


それは代官山のカフェでお茶をしていた、土曜日の午後のことだった。

梅雨明けの空の色がとても綺麗に見える。その美しさを感じたくて、ふと空を見上げた。

すると交際して約1年になる彼氏の宏臣が、私の顔をまじまじと見つめ、突然こんなことを言ってきたのだ。

「真子の笑顔って、なんか嘘くさいよね」
「…えっ?」

思わず、すっとんきょうな声が出る。

「真子の笑顔って、ぎこちなくない?」

なぜ、わざわざもう一度大きな声で言ったのだろうか。宏臣の無神経さにイラっとしながらも、私はとっさに口元を隠した。

「そうかな…」

心のどこかで“嘘くさい”と言われる理由はわかっていた。私は、歯並びが悪い。それが昔からコンプレックスで、大きく口を開けて笑えずにいるのだ。

だから宏臣に対しても強く言えず、さっきまでの晴れ晴れしい気持ちが一気に曇っていった。

失礼な彼氏にも逆らえない、口元コンプレックスの女は…?

「真子、今日のご飯なに?」

代官山デートを終え、代々木上原にある宏臣の家へ一緒に帰る途中。彼から献立を聞かれて一瞬考え込む。

「えーっと、どうしようかな…。なにが食べたい?」
「なんでもいいよ」

宏臣と出会ったのは、彼が勤務している表参道のヘアサロンでのことだった。

もともと私を担当してくれている美容師のアシスタントだったが、最近ヘアスタイリストに昇格し、お客さんを探していたので私が名乗りを上げたのだ。

そこから連絡先を交換し、一気に仲良くなった。

少しホリの深いイケメンで、顎のラインは惚れ惚れするほど美しい。オシャレだし、美容師特有の優しい話し方は私のタイプそのもので、彼のことがずっと気になっていたのだ。

それから晴れて付き合うことができたけれど、私の“好き”が彼の“好き”より優っているせいか、交際してから宏臣は急に態度が変わった。

彼の部屋なのに、家事は全部私がやっている。最近はデート中もずっとスマホをいじっているし、心ここにあらずの状態だ。

「真子って、あんまり自分の感情を表に出さないよね。それがいいところだけど」

家へ着いてからも、ゴロンとしたまま王様のように動かない宏臣が、スマホゲームの画面から目を離さずに話しかけてくる。

「そうかな…」

本当は、話すときくらいはゲームをやめてほしい。それに少しくらい料理を手伝ってほしい。彼の家なのに、どうして私が掃除をしないといけないのか、納得いかない。

でもそれを言ったら嫌われそうだし、長女気質が抜けないせいか「私さえ我慢すればいいか」と思ってしまう自分がいる。

「宏臣、ご飯できたよ」
「わぁ、うまそう。ありがとう」

ダイニングテーブルについて食事を始めたものの、再びスマホに視線を落とす宏臣。

— 誰と連絡してるの?他に誰かいるの?

そう言いたいけれど、職業柄、女の人と連絡を取らなければならないこともあるだろう。

そうやって先回りして気を使い、言いたいことが言えない自分が、ほとほと嫌になった。


「じゃあ、今日は帰るね」
「泊まっていかないの?」
「うん、明日朝早いから」
「そっか。じゃあ気をつけて帰ってね」

モヤっとした気持ちを抱えたまま電車に乗り、帰宅する。そして洗面台の鏡を見つめながら、ニッコリと笑ってみた。

「嘘くさい、か…」

いつからだろう。自信がなくなり、常に人の顔色を伺って生きるようになったのは。昔からおとなしい性格だったと思うけど、社会人になってから、その性格に拍車がかかったような気がする。

東京は綺麗で可愛い子ばかりで、みんな輝いている。笑顔も素敵だ。

「真子ちゃんって、口元が残念だよね」

社会人になりたての食事会で、男の人にそう言われ深く傷ついた。それ以来、いつのまにか笑うときは口元を隠すようになっていた。

キラキラ女子で溢れかえっている東京で、一度自信を失うと、取り戻すのは相当大変だ。

その自信を取り戻させてくれたのが、宏臣でもあった。あんなイケメンでキラキラしている彼と交際することで、自分のステータスも上がった気になっていたのだ。

「矯正しようかな」

上の歯はまだマシなのだが、年齢とともに下の歯がガタついてきた。元から完璧な歯並びではないけれど、さらに悪化してきている気がする。

何度か、歯列矯正しようと思ったことはあった。だけど矯正器具が目立ってしまうのがいやだからと、機会を逃してきた。

ただ、今はマスクがある。口元は隠せる。

急に、今が最高のタイミングのような気がしてきた。

彼氏に対し、強く言えない自分から脱却するため…

自分のバランスを取り戻せ


最初は、痛くて仕方なかった。歯が動いている証拠だと言われたが、想像以上に矯正は大変だったのだ。

ガムやお餅、そしてカレーなど食べたい物も食べられないし、それこそワイヤーが気になって笑えない(短期間で終わらせたかったので、マウスピースではなくワイヤー矯正にした)。

なんだか話しづらいし、器具が当たるところは痛くてただの苦行でしかなかった。

「どうして今さら、歯の矯正なんて始めたの?」

宏臣には散々言われたが、私は絶対最後までやり抜くと決めていた。…すると3ヶ月経つ頃には、少しずつ変化が表れ始めたのだ。

さらに諦めずに続けること、半年。

ワイヤーが取れたと同時に、新しい自分に生まれ変われた気がした。


「真子、変わったね」

宏臣も驚くくらい、私は笑顔を取り戻した。本来の自分の笑顔を。

歯並びだけでここまで自信が持てるようになるのかと驚いたが、歯が綺麗になるとたくさん笑いたくなる。

必然的に、笑顔でいる時間が増えた。

いつも何かに怯え、ひたすら気を使って生きてきたけれど、私らしく自由に生きたい。言いたいことは、言っていいんだと思えるようになったのだ。

そして、自信を得た私は強くなった。

「宏臣、別れたいんだけど」
「え!?」

いつものように彼の部屋で家事をさせられていたとき、ふと切り出した。私のことを大事にしてくれない彼氏なんて、いらないから。

宏臣と一緒にいると、東京で輝いている人たちに仲間入りできたような気分になっていた。でもこれからは、自分を労ってくれる優しい人と一緒にいたい。

もう、笑顔が嘘くさいなんて言わせない。

「一緒にいて、心から笑える人といたいの」
「なにそれ」

たかが歯並び、されど歯並び。

学生時代にはどうしようもできなかったコンプレックス。でも大人になった今、それは自分の意思次第でなくせることを知った。

そのために働いている。頑張って自分で稼いだお金で、欠点は変えられる。それが大人の特権だ。

そもそも劣等感をバネに頑張る、というのも良いモチベーションになると知った。

何かを変えたいと強く願う人こそ、大きな変革とチャンスをつかむことができるはず。

「ありがとう、私のコンプレックス!」

そう思いながら、未だに納得いかない顔をしている宏臣を部屋に残し、私は外へ飛び出した。

次こそ、本当に自分らしくいられるように。…大きな口を開けて、一緒に笑える誰かを探すために。


▶前回:「20代の時より、紹介される男のレベルが落ちた。でも...」妥協できない30代独身女の、リアルな叫び

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まつげ改革によって、女は変わる

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