大雨の<NATSUZOME><アイドル甲子園>、ワールズエンド。が提示した最新鋭のガーリーロック|「偶像音楽 斯斯然然」第61回

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今月開催された<超NATSUZOME 2021>と<アイドル甲子園 SUMMER FESTIVAL 2021>。今回は、雨天という状況が、さまざまな印象深いシーンを生み出していたこの2つのイベントの話を皮切りに、両イベントにも出演し、7月9日に2ndアルバム『カルチャー・クラシック』をリリースしたばかりのワールズエンド。のグループ、そして楽曲の魅力を、冬将軍が独自の視点で掘り下げながら紹介する。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

大雨により会場が文字通りの泥沼化、そのアトラクションさながらの過酷な光景は現地のみならず、“SASUKE”に“風雲たけし城”とTwitter大喜利でも大いに盛り上がった<超NATSUZOME 2021>(2021年7月3日&4日)。そして、集中ゲリラ豪雨により野外ステージが壊滅してしまった<アイドル甲子園 SUMMER FESTIVAL 2021>(2021年7月11日)。炎天下で観る夏フェスもいいけれど、悪天候に振り回され、びしょびしょドロドロになる、これもまた夏の風物詩。

雨三昧だった<超NATSUZOME 2021>と<アイドル甲子園>

私はといえば、両イベントともに行きまして。<超NATSUZOME 2021>は2日目のみの参戦。激しい雨も一時的に収まりつつあった中で、“(幸せの)雨を降らせ”と声高らかに拳を突き上げながら歌っていたアメフラっシが非常にエモーショナルだった。野外で観る4人はまさに勇士。キレのよいメリハリのある動きと、真っ直ぐでよく通る歌声が気持ちよかった。今後ますます強くなっていくであろうグループである。

アメフラっシ ’BAD GIRL’ Music Video

当初は“これがウワサの……”と温かく見守っていたのだけど、イベントなどで観る度にその勢いを感じつつ、何よりあの中毒性の高い楽曲(いどみん先生の振り付け含む)にすっかり頭が侵されている気がしてならない、#ババババンビ。そんなキラーチューン「ばばばばんずむ〜!」の必殺“横移動からの膝蹴り”で、ぬかるみをもろともせず泥だらけになりながら振りコピするヲタクのみなさんの光景が微笑ましくあり、はしゃぎすぎてセキュリティの方に注意を受けているところまで、“おれたちのアイドルフェスが帰ってきた”感満載で涙した。

【初ライブ映像公開】2021.03.27 #ババババンビ デビューライブ

それにしても、あの登場SE時のいかついメンバー呼び込み声の主が格闘家・角田信朗だったとは……。上記動画でノリノリキレキレに踊ってるし、歌はものすごく美声だし……いろんな意味で最強だな。と、#ババババンビのYouTubeチャンネルをくまなくチェックしてる自分がいる……。ちなみに、そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの事務所、ゼロイチファミリアでは、#2i2の天羽希純が前グループの時に言っていた、“父親がヒムロックのファンで「KISS ME」から名づけた”という衝撃的な事実を知って以来、勝手に親近感を覚えている(お父さまと同世代か……)。

悪天候の中水浸しのステージで危うく転んでしまったアイドルさんもいたわけだが、颯爽と登場し1曲目イントロで盛大に転倒するも、歌い出しを何ごともなかったかのようにキメたアンスリュームの天神・大天使・閻魔の男前っぷりに感服。ただ、2回目のステージは若干恐る恐る登場していたが……。去り際に“お前らも転べ”と吐き捨てながら去っていった彼女は相変わらずロックだった。

アンスリューム さくらブロードウェイ(Official Music Video)

雨のステージが似合っていたのはやはり、他を圧倒する存在感を放つNEO JAPNONISM。海外ロックバンドのフロントマンばりのシルエットを持つ滝沢ひなのを筆頭とした、“闘う”ステージはTHE MODSの“雨の野音”や、BOØWYも出演した<ウォーター・ロック・フェス>を彷彿とさせる(例えが古い……)光景に胸が高まった。母親のお腹にいる時から人間椅子を聴き、ジョーイ・ラモーンに憧れてアイドルをやっていると話題の滝沢(詳しくは『IDOL AND READ 027』を読んでね! 宣伝です)の、“もっと拳が見えてほしい! 見えてほしいってなんやねんっ!”と1人ツッコミでオーディエンスを和ませ、足下は悪いが煽りは滑らずに絶好調だった。

NEO JAPONISM 「Identity」

そして、こういうメジャー、インディー、ジャンル問わず入り乱れるイベントで観る、わーすたの無敵感。キラキラソングからロックナンバーまで振り切れる彼女たちだからこその強さを、ワンマンライブではわからない俯瞰的なところから感じられた。わーすたこそ、こういうイベントに積極的に出てほしいものだ。

年内で坂元葉月の卒業が決まっているわけだが、5人でいる残された時間が限られているからこそ、これから最高の輝きを放っていくことだろう。

わーすた(WASUTA)「詠み人知らずの青春歌」

<アイドル甲子園>は、豪雨中ちょうどメインステージのCOAST内にいたので外の様子はいざ知らず。ほんの1〜2ヵ月くらい観ない間に、声量が1.2倍になっていてビビった折原伊桜擁するNightOwl終わりに外に出てみたら、USEN STUDIO COASTが水没したんじゃないかと思うくらいの水の都ベネチア状態。いや、流木のごとく水に浮かぶキンブレはまさに貯木場か。COASTに向かう途中、ギタークラフトマン御用達の『もくもく』という材木販売店があってだな、という誰にも通じないであろう話はさておき、そんな過酷な状態だからすべてのイベント進行が中断し、お客さん皆COAST内へと避難。急遽2階席まで解放された。

そうした多くのオーディエンスに見守られながらのイベント再開。始まったのは、ワールズエンド。のステージだった。

5人になって精鋭感が増し、近頃はライブをやるたびにパフォーマンス力が上がっているのがありありとわかるワールズエンド。。この日も絶好調で大盛況だった。最後は豪雨で濡れてしまった人のために、と新グッズのTシャツを無料配布の大盤振る舞い。まさにいろんな意味でノリにノっていることを知らしめたステージだった。ちょうどこの数日前の7月9日に2ndアルバム『カルチャー・クラシック』をリリースしたわけだが、このアルバムが大傑作すぎて衝撃を受けた。

ピアノポップからハードなロックまで、ワールズエンド。の魅力

“ワルエン”の呼称で親しまれる、ワールズエンド。は、そもそも改名前のグループ時代、始動してまもなくの頃にたまたまイベントでステージを観て、楽曲のクオリティの高さと無邪気さが眩しいパフォーマンスに心を奪われた。この連載の第1回目から取り上げているグループである。

「Galaxy Dance Dance」「永遠少年症候群〜ピーターパンシンドローム〜」といったピアノポップスベースのミュージカルテイスト溢れる煌びやかな楽曲と、「タリナイ!タリナイ!」「THE Guilty Guilty BANG」などの歌メロ自体は80年代アニメのエンディングテーマに使用されたアイドルソングを想起するキャッチーでポップな風情が満載なのに、オケはがっつりテクニカルでハードなバンドサウンドというコントラストの美しさが光る楽曲、と相反するような二極化をしっかりと纏めている振り幅に惹かれた。

しかしながら、活動が進むにつれ、前者のピアノポップス要素が減っていった。“ワールズエンド。”への改名は、ハードなロック方面へシフトする宣言のようにも感じたのである。ゆえに私個人の嗜好としては興味が少々薄れていってしまったのも正直なところ。とはいえ、以前取り上げた“20センチュリーでスメルズライク”な「新世界RPG」のように、面白い楽曲をリリースしてくるし、目が離せない存在であったのも事実である。

さて、本作『カルチャー・クラシック』の面白みだが、その魅力をひとことで説明するのなら“最新鋭のガーリーロック”だ。

『カルチャー・クラシック』から見えた新感覚

アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』における「Good knows…」や、『けいおん!』の放課後ティータイムであったりの、2次元的ガールズバンドの流れと、3次元でいえばGacharic Spinのような、しっちゃかめっちゃかに思えて聴けば聴くほどテクニカルという、ガールズバンド/ガールズロックの系譜にあるロック。その線上にありつつも、今現在の新しさを備えたロックを本作に感じるのである。

それは現在のロックアイドルの指針にもなっている、“ポスト・WACK”か、はたまた“PassCodeフォロワー”という二強のどちらかに分類されるようなものでなく、普遍的な王道ポップスを踏襲しつつ新しいオリジナリティが共存する、新感覚の女の子らしいロックである。

ワールズエンド。「オーバードーズ・バッドトリッパーズ」

リード曲「オーバードーズ・バッドトリッパーズ」は、普通であればマイナー調のクサメロで、邦ロックキッズが喜んでツーステをキメるEmo曲になりそうなのに、あえてキラキラメロで攻める大英断。刹那美メロの「スカーレット」は歌に絡みつくベースライン、キマってほしいところにバチっとキマってくるタイトなスネア、散りばめられたピアノもいいし、イントロとアウトロの主旋律をギターが司るなんて、最近めっきり少なくなってしまった往年のポップスアレンジに感涙。メロもバンドアレンジも含めて完璧な曲だ。……と思ったら「シンデレラとよばないで」のキャッチーでメロウな音符を言葉で抉っていく音運びは鳥肌モノ。疾走感とタメを自在に操るバンドアレンジ、けたたましく鳴らされる足数の多いドラムも見事なすごい曲。ゆらめく流麗な「ハロー・グッバイ」しかり、とにかくメロディが綺麗なのに、ひたすらにオケのバンドサウンド&アレンジのクセが強く濃厚すぎる。それでいて、双方をまったく邪魔してないというまとめ上げ方に感服。「ブレーメン」はどうやって弾いてるのかわからないギターに驚愕、そして馬が疾走していく蹄の躍動感を出すドラムもすごい。

ワールズエンド。/浮世ディスコ-LIVE MUSIC VIDEO-

オリエンタルエレクトロの「トレモロセブンティーン」、アッパーチューン「ドリーミン・ドリーミン」の隙のなさ。スラップベースのサウンドメイクがやけに素晴らしいと思ったら、Aqua TimesのベーシストOKP-STAR作曲だった「浮世ディスコ」やホーンが印象的な「ダリィファンク」の斜に構えたボーカル楽曲は、5人になったからこそできるようになったタイプの曲だろう。前身グループ、および前体制は、女の子グループ特有のわしゃわしゃ感が魅力でもあったが、成長とともにそこが違和感になってしまっていった気もしている。

紆余曲折あり、現在の5人になったわけだが、結果的に洗練されたように感じるし、何よりも精鋭感が増して各々の個性が浮き彫りになった。日南りとのイイオンナっぷり漂わせる艶っぽいボーカルと、柊木あいなのあでやかな声色が、ワールズエンド。のロックスピリッツの軸となっていることを至るところから感じ取れる。そこに百瀬あぐりの絶対的妹感と星島ゆいのお嬢様オーラが、ワールズエンド。のアイドルとしての色をつけ、久留あずさの美脚、じゃなかった、健気なひたむきさがグループの輪郭を作っている。大人びた魅力によって生まれ変わった「かくめいごっこ」には、そんな現在のワールズエンド。の姿が落とし込まれている。

クリエティヴな側面からの妙味

ライブアイドルとも呼ばれるアイドルシーン、特にロック系のアイドルグループは、楽曲制作を手がけるクリエイターも被っていることが多く、悪い意味で似たり寄ったりになることもある。その中で差異をつけるためには、歌う本人たちのスキルと、クリエイターによる当て書きや書き分けもあるのだが、ワールズエンド。に関していえば、根本的にプロデューサー、運営側によるグループのビジョンが明確なのだろう。これはプロデュースというよりも制作に特化しているところで、方向性を決めるA&R、そしてそれをきちんと形にできるディレクター的な業の部分だ。

それは詞にも表れていて、ワールズエンド。楽曲のほぼすべての歌詞を手掛ける“甘噛”は、グループのプロデューサーであるわけだが、強烈な感性を以って世界観を作り上げている。私自身、氏とは面識もなく、何も知らないのでヘタなことは言えないのだが、誤解を恐れずにその作家性を言い表すのなら、“2次元を拗らせすぎて現実に戻って来れなくなってしまったギャル”、というべきだろうか。

楽曲に登場するのは決まって《キミ》と《ボク》で、それを女の子たちが歌うことで、どこかリアルではないファンタジーを描く。

ウォーとアイを二で割っちゃうくらい

アイとニをジューで割っちゃうくらい
「ダリィファンク」より

こんな詞、普通の成人男性が書けるものではない。

Gain 16:00 もう上がんない
更にBPM もう200迫って
思い出の摂取が止まんない
深くエグって 奥の奥の奥まで
「オーバードーズ・バッドトリッパーズ」より

って、なんだよ。ギャルとバンドマンを混ぜ合わせたような……バンドやってるギャルかよ。この感性はすごすぎる。ほかにもいろいろあるのだが、《ツキが綺麗な》《ワスレモノを迎えにいこう》《キヲツケで待つ世界》《ユルリラル ユルリララ》など、カタカナの使い方が絶妙だ。それはどこか非現実感を醸しながら絵本的でもあり、視覚的に歌詞を読んでみても面白い。メロディに対する言葉の置き方も無理なく綺麗である。

こうしたグループの指針は以前より変わらずにあったものだと思うのだが、改めて旧作を聴いてみると、現在の5人になったことでコンセプトや世界観がより明確にわかりやすくなったと思える。

『カルチャー・クラシック』は聴きやすいポップ性を持ち、聴く人が聴けばよくわかるトラック、アレンジの巧妙さ。それでいてマニアライクになりすぎず、グループの世界観をわかりやすく作り上げている。そんな作品である。

“最新鋭のガーリーロック”と言ったのは、多くのロックアイドルに見られる“アイドル+男性バンド”という図式でなく、きちんと“ガールズバンド”してることを感じ取れるからで。考えてみれば、ガールズバンドとワールズエンド。で踏めるし、ギャルバンとワルエンでも踏めるな。

現在、本作を引っ提げてのツアー真っ最中のワールズエンド。来月30日には、ツアーファイナルをUSEN STUDIO CASTにて開催する。この夏はワルエンから目が離せない。

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