小山田圭吾の“いじめ自慢”と、90年代鬼畜ブーム。なぜ彼は間違ったのか

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 開幕を目前に控えた東京オリンピック、パラリンピックに、衝撃が走っています。
 問題となっているのは、7月14日に開会式の楽曲を担当することが発表された、ミュージシャン・小山田圭吾(52)の言動。雑誌『ロッキング・オン・ジャパン』(1994年1月号)と『クイック・ジャパンvol.3』(1995年7月)のインタビューで、学生時代に障害を持つ同級生をいじめていたと語った過去が発掘され、“オリパラ担当なんてありえない”と炎上しているのです。

7月16日、小山田氏は自身のツイッターで、長文の謝罪を発表。「深い後悔と責任を感じております」として、かつていじめた相手にも「受け入れてもらえるなら直接謝罪をしたい」と綴っています。今のところ、楽曲担当を辞退はしないようです。
 いったいなぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?

◆サブカル界隈ではよく知られていた、いじめ話
 
 小山田氏が雑誌で語ったいじめの内容は、凄惨なものでした。小学校から高校にかけて、2人の同級生を無理やり全裸にしたり、さらには排泄物を食べさせもしたのだそう。まず『ロッキング・オン』でいじめに触れた小山田氏に、『クイック・ジャパン』編集部がインタビューを依頼、22ページにわたって武勇伝のように加害体験を語らせているのです。
 しかも小山田氏が、自身は実行犯ではなくアイデアを提供する側だったと語っていたことからも、当時からサブカル界隈では“ムナクソ案件”として取り扱われていました。

 一部の層ではよく知られていて、ネット上にも情報があった小山田氏のいじめ問題。今回オリパラにたずさわることで、図らずも一般層にまで露呈してしまったというわけです。

◆音楽面では、収まりのいい人選だったが…

 さて、こうした問題を抱えながら、国家イベントの重要なメンバーに抜擢された小山田氏。それもそのはず、彼ほど“クールジャパン”を軽やかに体現してきた人はいないのです。
 小沢健二とのユニット「フリッパーズ・ギター」(1987-91)で渋谷系ムーブメントの中心に君臨し、今日にまで影響を及ぼすサブカルチャーの祖としての地位を確立しました。代表曲「恋とマシンガン」は、テレビ番組やCMなど様々な場面で耳にしたこともあるでしょう。90年代から2000年代の音楽、カルチャーシーンを語るうえで、欠かせない存在なのですね。

https://youtu.be/bJxajh5XOgE

 加えて、小山田氏の音楽は海外でも高い評価を受けています。ソロ転向後、「Cornelius」として名作を量産。アメリカのグラミー賞アーティスト、ベック(代表曲に「Loser」や「Devil’s Haircut」など)や、イギリスのバンド「Blur」や「Gorillaz」などの活動で知られるデーモン・アルバーンなどとコラボレーションをこなすなど、当たり前のようにワールドワイドな活動を展開してきました。
 こうしてざっとまとめただけでも、国内向け、海外向けにも収まりのいい人選だとわかるのではないでしょうか。

 ところが、そんな輝かしい功績が一気に崩れ去る。それほどの危機に直面しているのです。

◆『90年代サブカルの呪い』に見る鬼畜ブームの明暗

 確かに、ミュージシャンの一挙手一投足に品行方正であるように求めるのは難しいことです。
 また90年代のサブカル界隈では、あえて悪趣味な行動や発言を好む“鬼畜系”なるムーブメントがあったのも事実。小山田氏の“いじめ武勇伝”や、その内容を躊躇なく掲載した編集サイドの意向が、そうしたムードに支えられていたことは想像に難くありません。インターネットが普及していなかった当時、これが炎上することもなく、普通に流通していたのです。

 けれども、小山田氏と編集サイドは、そのようなムーブメントの意図するところを完全に読み違えていたのではないか――そう論じているのは、『90年代サブカルの呪い』(2019、コアマガジン)の著者でミュージシャンのロマン優光氏(48)です。

◆悪趣味の意味をカン違いしている

 90年代・悪趣味カルチャーの輝きを知っているロマン優光氏は、小山田氏のインタビューをリアルタイムで読んで、当時でも嫌悪感を持ったといいます。偽悪や露悪趣味を誤解していたがゆえの事例として、小山田氏の一件をこう論じています。

<変な話ですけど、ギリギリのところでモラルを守るというか、モラルを理解した上で(当時としては)ギリギリのところで遊ぶのが悪趣味/鬼畜系だったし、何度も書いてますが、実際に鬼畜行為に及ぶことを推奨していたわけではないのです。

 それを鬼畜行為の当事者として、著名なミュージシャンが反省もなく面白おかしく語るというのは、頭おかしすぎなんですよ、当時としても。普通に考えてリスク高すぎです。
 誰も彼もが時代の空気に浮かれていたとしか思えないし、そもそも流行りに乗っかってみただけで、何もわかってなかったんだと思います。>
(『90年代サブカルの呪い』より)

◆薬物や不倫とは次元が違う
 
 実際のいじめエピソードはもちろん、こうした耐え難い軽さを感じたからこそ、ネット世論も一斉にNOを突きつけたのでしょう。それは、野次馬根性からくる“ネットリンチ”とも違う。小山田氏の“汚点”は、25年以上経った今も、本質的で決定的な拒否感を呼び起こすほど、むごたらしいと言わざるを得ない。

 違法薬物や女性問題などが報じられるたび、ミュージシャンの作品と人格についての論争が巻き起こります。ところが、今回の小山田氏については、そうした形で擁護する人がほとんどいません。
 やはり、これは次元の異なる、実際的な悪として処理すべき問題なのでしょう。
 
<文/音楽批評・石黒隆之>
 

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  • 日刊SPA!

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この記事のみんなのコメント

1
  • ソフィア

    7/17 17:01

    相川七瀬とかドロボー自慢してたな

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