世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「サイン盗み疑惑に弁解の余地なし」

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 阪神とヤクルトの両チームの間で、サイン盗み疑惑による一触即発の事態が起きた。7月6日のヤクルト×阪神戦(神宮)の5回表二死一、二塁。佐藤輝の打席で二塁走者の近本に不自然な動きがあり、ヤクルト側が指摘したところ、阪神・矢野監督らが猛反発した。

 映像を見返したけど、アレは近本が悪い。通常、走者がリードする際、左手だけ水平に動かすことはない。たまたまかもしれないが、捕手は内角に構えていた。距離を測るための帰塁の準備らしいけど、僕は帰塁に備えて、ああいう動きをしたことはない。正面から見えるヤクルトベンチ、二塁走者に注意を払っていた三塁・村上がクレームを入れて当然。ただでさえ、初球からカンカラ痛打されることが多く、疑心暗鬼になっていた部分もある。それに対して「アホ」とか「ボケ」とか、阪神ベンチが暴言を吐いたことは反省しないといけない。

 もちろん、近本が実際にサインやコースを伝達する意志があったかどうかはわからない。間違いなく言えるのは、疑われるようなことをしたらアカンということ。今はルールでサイン盗みは明確に禁止されているんやから。「今は」と言うのは、僕らの現役時代は、二塁走者がコースなどを教えるのはごく普通のことやったから。もっと大げさにジェスチャーしていた。相手バッテリーもそれをわかっているから、試合中にサインを何度も変えていたし、外角に捕手が構えて、わざと内角に放らせたりしていた。だから打者もあんまり信用していない。「来ない」と思って踏み込んで、頭に球が当たったら大変なことになってしまうから。

 昔はもっと高度な駆け引きをしていたということや。あんまり「昔のほうが」とは言いたくないけど、実際にそうやから仕方がない。サインを盗むのも、逆に利用するのもプロの技術。わざと死球をぶつけることもしょっちゅうあった。それを防具をつけずに「生身」でやっていたんやから。それでも余計なものはつけたくなかった。ヘルメットの「耳当て」が義務化された時も嫌やった。視界が狭まる感じがしたし、ほんのわずかな重さでも走るスピードへの影響も考えた。

 今はレガース、エルボーガード、手首にも防具をつけて、ヘルメットもフェースガード付き。頭に当てたら危険球で一発退場。そして何よりも他球団の選手同士が仲良くなって、えげつない攻めがなくなった。それによって、打者もよけ方が下手になった。僕らの頃はグリップは絶対に隠すように教えられて、よける練習もしていた。今は打ちにいって「当たる」下手な選手が増えている。

 打席だけでなく、最近は走塁用の「鍋つかみ」みたいな手袋が流行している。ヘッドスライディングで指を突くのを防止するためという。理解に苦しむ。あれでは頭から滑るのを助長しているようなもの。アマチュアにも悪影響を及ぼしてしまうし、安全と過信して、脱臼する選手が出てくるはず。それに、あんなものをつけて速く走れるわけがない。小指から順番に下の3本はしっかり握って走らないと、腕を速く振れない。

 そもそも、それほど大きなリードを取る選手が少ない。目で反応して、足で十分に帰れるのに、頭からパタッと倒れるだけという横着にすぎない。頼むから、これ以上は、過保護野球が進まないでほしいな。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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  • 7/17 6:00
  • アサ芸Biz

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