「テレビは守る側に回ってしまった」テリー伊藤×土屋敏男が語る『テレビのこわし方』(前編) インタビュー「テレビを書くやつら」

拡大画像を見る

この「テレビを書くやつら」では昨年、テリー伊藤氏、土屋敏男氏というテレビ界の二人のレジェンドにそれぞれお話を聞いた。「元気が出るテレビ」「電波少年」を振り返りながら今後のテレビについて語ってもらって大変面白くまた力強いインタビューになった。だったらお二人揃ってお話を聞くともっとエキサイティングではないか?いまのテレビをぶっこわして面白くするにはどうしたらいいか、語ってもらったら話が自由すぎてついていくのが大変!じっくり読んでもらいたい。

【聞き手/文:境 治】

YouTubeには全部ある。テレビには全部ない。

境治(以下、境):最近出た調査で、若者のテレビ離れがいよいよ進んだという「衝撃的なデータ」が話題になりました。一方で「テレビを好きか」と聞くと、「好き」と答えた比率は若者の方が中高年より高かったそうです。必ずしもテレビが嫌いではない若者が、テレビから離れているという矛盾をどう突破すればいいのか。今日はお二人にテレビの現状をどうこわせばいいかお聞きします。

テリー伊藤氏(以下、伊):中高年でテレビを好きと答えた人が少ないのは、テレビは基本的に若者だからでしょうね。高齢層は疎外感を持つと思いますよ。新しい人がどんどん出てきて、音楽も自分はフォークやビートルズで育ってるのでわかんない。だから普通のことじゃないですかね。

土屋敏男氏(以下、土):各局が今コアターゲット重視になっていて、そうすると中高年はBSに行ってしまうのかもしれません。

境:私の息子が一人暮らしを始めてテレビを持ったのですが、いつもつけてるのに何を見たかは印象にないと言います。なんとなく寂しいからつけてるけど、とくにこれを見る、という番組はないようです。

伊:大谷翔平が出ると若い人も見るでしょうね。

土:YouTubeをテレビに流せば見るんですかね?

境:YouTubeはスマホで見るそうです。テレビはBGM的なものらしいですね。

伊:若い人は目がいいからね(笑

土:いまの小さい子はテレビでYouTubeを見ますね。言葉を覚える前にYouTubeの操作を覚える。そういう世代は、テレビに戻ってこないだろうなあ。

境:YouTubeは若い人のテレビになるのでしょうか?

土:YouTubeは全部ありますよね。網戸が外れたらどうしよう?YouTubeに答えがある。生活の知恵もあるし、暇つぶしにもいい。自分が車好きなら、車情報のチャンネルだけ見る。YouTubeには全部ある。テレビは全部ない(笑

伊:こないだ会ったグラビアアイドルの子は、もともと大分の鉄工所で働いてたそうです。たまたまYouTubeに出ておっぱいが大きいとちょっとした話題になったら、東京のプロダクションからスカウトが来る。いま渋谷でナンパする男の子はいないらしいですよ。YouTubeで好みの子を見つけてメッセージするそうです。コンテンツの幅、スケール感が全然違う。名作も見れるし歴史もわかる。



テレビは廊下を走るなと言う側になった

土:昨日、clubhouseで元日テレアナウンサーの永井美奈子が19歳の女の子と一緒にやってるのに出たんですが、ぼくがゲストに来るから「電波少年」をYouTubeで見てくれたそうです。猿岩石の回を見たら面白いし、友達も面白いって言ってたと盛り上がってくれていました。テレビでは猿岩石は見れない。YouTubeで見られる。

伊:「電波少年」や「元気が出るテレビ」にせよ、NHK大河ドラマにせよ、たくさんの人間が作ってます。YouTubeとは、コロッケとすき焼きくらいちがうわけです。ただスマホでは主導権が決定的に見る側にある。地上波は7時に見ろとか、若い人からすると余計なお世話でしょう。主導権がお客さんにあるのが大きいですね。

境:テレビ番組もYouTubeに置いてお客さんに主導権を渡したらいいんですかね?

土:テレビの全コンテンツがYouTubeで配信されるようになったら全然勝てると思いますよ。それをやらないじゃないですか。ビジネスモデルを崩さないから。アメリカはそれをやったんですよね。でも日本はやらなかった。それだけの話。

伊:コンプライアンスの問題もありますね。いまのテレビはもっともらしいことを言ってる。若い人たちからすると、なにモラルを言ってるの?そりゃ変だろうと、いうのはあるかもしれないね。

境:「元気が出るテレビ」も「電波少年」もルールのスレスレを楽しんでいましたね。

土:あの当時はテレビがやってたし、やってよかった。今は炎上しましたとテレビが言う側。炎上したことをニュースにするテレビのポジションが違うんじゃないかなと思います。

伊:年を取ってるよね。廊下を走っちゃダメだって言ってるのと同じ。本当は廊下を走ってるのにコメンテーターもそうじゃない顔をして、みんな嘘っぽい。仕事がなくなっちゃうから、カメラがない場では「あれくらいやっちゃうよね」って言うくせに。「ネットによりますと」ってテレビが言うのもどうなのか。街頭インタビューで逃げるのと同じ。それ自体が作り手が年を取ってるんだね。



若者を巻き込めなくなったテレビ

境:「元気が出るテレビ」は海の家をやったりダンス甲子園なんかで若者を巻き込んでいました。「電波少年」も猿岩石のゴールに若者たちが涙して、番組を真ん中に仲間意識ができていましたね。

伊:時代が変わりましたね。いまは、ネガティブでいるのが正義になった。人の批判をしてるとネットでは記事になって読まれる。面白いことを選ぶ力がないんじゃないかな。「集まろう」と言われても斜めになっちゃう。この20年くらい成熟しちゃった日本人がつまらなくなって負けてますね。「空気を読めない」とかね。空気なんか読む必要ないのにそれを読めないとアホと言われる。

土:日本では同調圧力が強くなって違うことが言えなくなりました。目立つといじめられる。大勢はどっちなのかを気にする。ネットでもそっちに立って、突出してる奴を叩くからエネルギーの潰し合いになってます。

伊:テレビ番組のターゲットが20代30代になるとそういう人しか出ないですよね。僕が30代の時に面白いと思ったのはガンジーオセロ、彼は70代です。海外ではおっさんが主役やる連続ドラマがいっぱいあります。もちろん若い人も出る。違う世代が一緒にいていいんです。日本の作り手は面白い爺さんだなと選んでくる力がなくなっちゃった。爺さんを愛しているから選べるんです。いまはそういう人を疎外しちゃいますよね。

昔のドラマも、西城秀樹や郷ひろみが出ていて樹木希林がおばあちゃん役で出るから面白かった。いまはそういうのは企画書の段階で通らないでしょうね。「第七世代でいきます」とか。作り手が高齢者を愛してるかどうかです。それができていれば豊かな番組になる。

境:土屋さんがWOWOWでやっている「電波少年W」はコミュニティをつくろうとしてるんですよね?

土:あれは実験ですね。テレビとコミュニティってどんな着地点があるのかなという実験。コミュニティからテレビを作るって言うのをあの手この手使って実験している感じです。

境:アメトーークが会費を取って会員だけが見られる番組をやるそうです。

伊:あれはシステムだね。

土:テレビのビジネスとしてナイスチャレンジだとは思います。ただ加地さんには「こんなのテレビじゃない!」と言わせるような番組も作って欲しいです。僕の中では「アメトーク」がそれまでのロケバラエティを壊したけれど、その後次の破壊が行われていないと思うので。こわしてほしいですね。

話題があちこちに飛びながらも、筋の通ったトークとして繋がっているのが面白い。
後編ではいよいよ「テレビのこわし方」を聞いていくので乞うご期待!

関連リンク

  • 7/16 7:42
  • テレビドガッチ

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます