「ひと口大」って誰の口で? “あいまいなレシピ語”の解説サイトが面白い。運営に聞いた
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自炊をする人が増加しているようです。自炊をする人にとって欠かせないのがインターネット上に溢れるレシピ情報ではないでしょうか。
しかし、同じ料理でもレシピに記載されている分量などが微妙に異なるので、自分の味覚に合うレシピを見つけるのが難しいですよね。さらには「塩を適宜」「こしょう少々」「さっと火を通す」「ラップをふわっとかける」「一口大」といったレシピ特有のあいまいな表現に困惑させられることもしばしば。
こういったあいまい表現をゆるく解説してくれる「レシピ語超解説辞典」をハウス食品株式会社(以下、同社)が公開しています。
◆「薄切り」「一口大」ってどのくらい?
例えば「薄切り」だと、
「食材を端から2mmの厚さを目安に薄く切ることです。定規で測る必要はありません。自分の感覚の2mmで大丈夫。多少幅が出ても大丈夫。宇宙と書いて”コスモ”と読む、平和と書いて”ピース”と読むくらいの気持ちで、薄切りと書いて“2mmぐらい”と読んでください。ただサラダの玉ねぎの薄切りは0.5mmぐらいの薄切りが食べやすくてオススメです」
と解説してくれます。
「一口大」だと、
「ひとくちのイメージって人によって全然違いますよね。”ひとくちどうぞ”ってあげたら、いっぱい食べちゃう人、いますよね。厳密な大きさとしては、約3cm四方が目安と言われています。それよりも小さい場合は”小さめの一口大”、大きめの場合は“大きめの一口大”と言います。もはや一口大じゃないじゃないかという声が聞こえてきそうですが……」
という具合に解説しています。このように「レシピ語超解説辞典」では合計30ものレシピ語をわかりやすく解説してくれています。
◆ハヤシライスの魅力を伝えるため、レシピ語に着目
「レシピ語超解説辞典」について、同社の食品事業一部でビジネスユニットマネージャーとして勤務する亀田浩司さんに詳しい話を聞いてみました。誕生はなんでも、「料理初心者にハヤシライスの魅力を伝えたい」と思ったのがきっかけだったそう。
「在宅時間の増加に伴い、料理をするようになった方も増えていると思います。初心者の方に、簡単で誰もが作れるハヤシライスの魅力をお伝えしたい、というのが最初のきっかけでした。ハヤシはもちろん、もっと料理を楽しんでいただくために、どのような切り口があるかを検討した結果、目にする機会も増えているであろうレシピ独特の表現に着目して調査を行いました」(亀田さん、以下同じ)
調査の結果、料理初心者にとってはその言葉が戸惑う要因になっていることがわかったそうです。
「それを紐解いていくことで、レシピ語を気にしなくてもハヤシライスが簡単にできる『完熟トマトのハヤシライスソース』の魅力や、料理そのものの楽しさを知っていただけるのではと思ったんです。
レシピ語超解説辞典では、ただ単にレシピ語の正解を提示するのではなく、レシピ語に対する“あるある”な気持ちとイラストを合わせて、わかりやすく噛み砕いて解説し、レシピ語のあいまいさも楽しめる内容にしています」
◆ひと煮たち…「ひと休みみたいに言われても」
「ひと煮立ち…ひと休みみたいに言われても」「中火…強くも弱くもないのがいちばん謎」といったユニークな一言は、亀田さん及び「レシピ開発担当者をはじめ、社外のプロジェクトメンバーなど、関係者でいろいろと話をしながら作成をしています」とのこと。
そもそもなぜレシピにはあいまい表現が多いのでしょうか。
「味も人それぞれ好みがありますし、作る環境も人それぞれで異なると思います。レシピ独特の表現には、味や仕上がりの調節ができるようにだったり、料理をされる方がそれぞれの個性を発揮できたり、料理そのものを楽しんででいただくためにあえて幅を持たせている、と捉えています」
◆まずはレシピ語の“あいまいさ”を楽しんで
「レシピ語超解説辞典」の公開後、消費者からは「これいいな。わかりやすい」「最近は料理動画もあるとはいえ、こういう解説があることで料理への苦手意識が薄まることもありそう」「料理苦手な人って大体この辺が苦手なんだよね。ぶっちゃけ常識の範囲内で適当でいいんだよね」といった声が届いたそうです。
最後にコロナ禍で自炊する機会が増えた方々に対するメッセージをお願いしてみました。
「料理や味には人それぞれの好みがありますので、まずはレシピ語のあいまいさ自体を楽しんでもらいたいです。レシピ語に戸惑うことなく、もっと料理を楽しんでいただければと思っております」
<取材・文/6PAC>