VERYモデル牧野紗弥が語る、事実婚の“リアルなデメリット”とメリット

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―牧野紗弥さんと考える“平等な夫婦の形” Vol.4―

 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。
「対等な夫婦関係」って、皆さんにとってどんな関係でしょうか。何でも話し合える関係? 家事育児・仕事をお互い納得のいく形で分担できる関係? その答えは、人により夫婦により様々ですよね。

 自分たちらしい夫婦のかたちを模索する中で、「夫婦別姓」を選択しようと考えているのが、牧野紗弥(まきの・さや)さん。牧野さんは結婚13年目で、現在3人のお子さんを育てながら『VERY』や『Domani』などのファッション雑誌でモデルとして活躍しています。

 これまで3回にわたり牧野さんにお話を聞いてきた本連載も、今回が最終回。夫や子どもたちとの対話を重ねて今感じる、牧野さんにとっての「対等な夫婦関係」について語ってもらいました。

◆自分たちらしい対等な夫婦のかたちを見つけるために

 元々独身の頃から旧姓を残したいという意向を持ちつつも、結婚時にはうまくその気持を伝えることができず、夫の姓に改姓して今まで過ごしてきた牧野さん。夫婦生活を通して、自分たちが妻や夫という“役割”に縛られていること、「対等な夫婦関係」が叶えられていないことに悩みます。ですがある日、そんな苦しみの原因の1つは「ジェンダーバイアス(男女の役割分担に対する固定観念)」によるものだ! と気づきハッとしたのでした。

 自分たちらしい対等な夫婦のかたちを見つけていく取り組みの中で、牧野さんと夫は“ペーパー離婚をして事実婚に関係性を切り替え、夫婦別姓にする”という方法を取ろうと決めます。子どもたちと話そ合った上で、2021年末までに手続きをする予定だといいます。

◆「夫婦別姓=夫婦の平等、と考えているわけではない」

「まずお伝えしておきたいのですが、事実婚をしたら夫婦関係の平等が叶う、というわけじゃないんです」
 今回のインタビューの冒頭から、こう話していた牧野さん。

 事実婚による夫婦別姓は、あくまでも“自分たちらしい夫婦のジェンダー平等”を求める中で、最適な選択として出た1つの行動でしかないということです。牧野さんに関する報道では事実婚やペーパー離婚という行動が注目されがちでしたが、「事実婚をしたから夫婦が平等になると考えているわけではない」という感覚を、最初に教えてくれました。

「私にとっての対等な夫婦像というのは、今はまだ探している途中の段階です。ただ、いくつか思っていることはあります」

◆思いやりの言葉を伝え合える関係が理想

「1つは、『ありがとう』『ごめんね』『大好き』といった思いやりの感情を言葉で伝え合えること。これは、私の思う対等な夫婦関係にとって不可欠かもしれません。どちらが家事を何%やるといった話をする前に、お互いの存在や働き、思いやりを尊重し合える関係が、ベースとして大切なのではないでしょうか。
 あとは、夫婦それぞれが経済的に自立していることも、私たち夫婦の場合には欠かせない要素だと思っています」

 日本の男性は特に、感情を言葉で伝えたり、愛や感謝の言葉を伝えたりするのが苦手な人は多いイメージです。それに、妻や彼女が色々やってくれることを“当たり前”と思っている男性も、まだまだ多い印象です。筆者もパートナーの言葉が足りなさすぎて、過去何度もキレたことがありました(笑)。

◆ジェンダーを学び、夫のそっけない返事も「仕方ない」と理解した

「元々、夫は何かあっても『うん』とそっけない返事で済ませるタイプでした。でも、こうした夫の対応も、ジェンダーを学ぶ中で、仕方ないんだと理解したことがあります。
 おおたとしまささんの書籍の中で“男の子は男の子のチカラを最大限発揮できるような環境で育つ。そんな中で、女性の体のことやジェンダーの問題を理解するといった視点は、なかなか自然に持てるものではない”といった記述があり、とても腑(ふ)に落ちました」

 こうしてフラットなジェンダーへの理解を深めていった牧野さん。自分には自分の、夫には夫の知らないところで、ジェンダーバイアスがかかっていたことを改めて知り、今ではコミュニケーションの取り方1つとっても、再構築をしている最中だといいます。

「今は話し合いを重ねる中で、だんだんと夫からも尊重や感謝の言葉が増えてきているように感じます。私もそれに対して『嬉しいよ、ありがとう』と伝えるようにしています。とはいえ、今の段階での夫婦の満足度はまだ15%程度ですけどね(笑)」

 こうした気付きや改善は夫婦にとってとても大きかったものの、それができたことで対等なのではなく、「対等な夫婦関係を構築していくスタートラインに立てた」という段階だと牧野さんは言います。

◆事実婚に切り替え、夫婦別姓になることのメリット

 法律婚からペーパー離婚して事実婚になり、夫婦別姓を叶えていくという、前例のあまり多くない選択をしようとしている牧野さん。だからこそ、取り組みが注目されることも多いといいます。ただ当事者として、事実婚に関係性を変えることには、メリットだけでなくもちろんデメリットも感じています。

メリットとしては、その先の選択肢が広がるということと、仕事上の旧姓使用によるトラブルが減ることです。私は元々仕事では牧野姓を名乗っていましたが、過去に郵便物が紛失したり、渡航した際はパスポート名が異なるという理由で関税に引っかかったりしたこともありました。こうした物理的な問題は解消されるのでメリットといえます」

 結婚前のカップルが事実婚を希望する理由として、各種名義変更の手続きの煩雑さから逃れられることや、ふたりともが私生活でも仕事上でも旧姓を使い続けられること、また改姓によるアイデンティティの喪失を防ぐ、といった部分が語られることが多いです。

 住民票や運転免許証などでの旧姓併記が認められる、旧姓での銀行口座開設が一部銀行で認められるなど、旧姓使用のための取り組みは少しずつ進んでいます。とはいえ、まだまだ理想の状態にはほど遠いのが現実。改姓のデメリットを感じる度合いは、立場・職業や職場環境などにより大きく異なります。それは改姓しない側や、デメリットを感じない人には、非常に理解されにくい部分でもあります。

◆事実婚に切り替えると夫婦で共同親権が持てない

「デメリットとしては、やはり法律上の夫婦でないと共同親権(※)が持てなくなることです。私たちにとって、夫婦別姓と共同親権はセットで実現させたいものなのですが、現行の制度上はそれが叶いません。私と夫も、この部分にはかなり悩み、話し合っている最中です」(※「共同親権」とは、父母が共同して子に対して親権を持つこと。日本の民法では、離婚後は父母いずれかが親権者となる「単独親権」を定めています。)

 共同親権への取り組みについては前々回の記事で詳しく語っていただきましたが、こうした行動について、周りの理解はどのような感じなのでしょうか。

「両家の親からは、反対をされています。『え、なんで?』という声と『現時点で理解できないし、今後も理解できないと思っている』と言われました。ただ、私もあまり前例のない取り組みをしようとしている自覚はあるので、認めてくださいとは思っていません。私たちの枠は、私たち自身で作るものだと考えているので、それが周りの理解や反対によって揺らぐものではないと思っています。その時、その状況での最適を、常に考えるしかないと思っています」

◆もし事実婚をしたいと思ったら

 全4回にわたり、事実婚を選択するに至った経緯や、自身が向き合っているジェンダーの問題について話をしてくれた牧野さん。最後に、これから事実婚をしたいと考えている人へのアドバイスを聞いてみました。

「正解のないことに取り組むという覚悟と、パートナーと話し合いをし続ける姿勢は必要ではないでしょうか。その際、ただの感情論にならないためにも、自分の気持ちをきちんと俯瞰(ふかん)して見られることや、整理して言語化できることは大切です。
 またこの話題と切り離せないジェンダーに関しては、まだまだ私にとっても未知の学問。しっかりと学び、そして夫とも共有していかないといけないと思っています。そのためにはお互いが信頼と尊重の気持ちを持ち、言葉をかけあえる関係性でないと前には進みません。  
 カップルのどちらかから、ふと相手を思いやれない言葉が出たときには、ふたりの意見をすり合わせていくチャンスかもしれません。その繰り返しをぜひしてみて下さい」

◆皆さんにとっての対等な夫婦とは何ですか

 男女の平等。対等な夫婦。これらの言葉をどう捉えて日々の生活やパートナーシップで叶えていくかは、人によって異なります。
 牧野さんはその行動の1つとして、事実婚にして夫婦別姓を選択することとしたわけですが、皆さんにとっての男女平等や対等な夫婦とは、一体どんな関係を指すでしょうか。

【牧野紗弥(まきの・さや)】
『VERY』『Domani』などのファッション誌や広告で活躍するモデル。1984年生まれ。3児の子育てと仕事の両立に励む等身大の姿が、女性たちの共感を呼ぶ。Instagram:@makinosaya

<取材・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】
水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518

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