横浜市長選、田中康夫氏ら“反カジノ候補”が乱立。票の一本化に田中氏の意見は

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◆与党系候補だった小此木氏も「カジノ誘致取り止め」を表明

 カジノ誘致が大きな争点となっている「横浜市長選(8月8日告示・22日投開票)で反カジノ候補が乱立している。当初は「自公推薦のカジノ推進候補」対「野党系のカジノ反対候補」の構図となり、世論調査ではカジノ反対が多いことから反カジノ候補が有利とみられていた。

 リニアが最大の争点の静岡県知事選で自民党の岩井茂樹・前参院議員が川勝平太知事に敗れたのと同様に、菅義偉首相のお膝元の横浜市長選で与党系候補が敗北を喫する可能性は十分にあると見られていたのだ。

 しかし、菅政権の閣僚だった小此木八郎・前国家公安委員長が6月25日、「横浜へのカジノ誘致取り止め」を掲げて出馬表明。その結果、状況は一変した。4日後の6月29日に立憲民主党推薦の山中竹春・横浜市立大学教授が出馬会見をしたものの、反カジノ票が与党系の小此木氏と野党系の山中氏らに割れてカジノ推進候補(林文子横浜市長ら)が競り勝つ可能性が出てきたからだ。

◆郷原氏が山中氏に質問状、主要政策への賛同が得られれば「立候補を撤回」

 その後も、7月7日に元検事の郷原信郎弁護士、翌8日にも元長野県知事で作家の田中康夫氏がカジノ反対候補として出馬表明。他にも、現職横浜市議や地元水産業者や動物団体代表者が名乗りをあげており、合計で7名(小此木氏を反カジノ候補としてカウントした場合)のカジノ反対候補が出馬した。カジノ推進候補がますます有利になる展開といえるのだ。

 こうした事態に懸念を示した予定候補が郷原氏だ。出馬会見で「私の立候補が自民党側を利することになることは不本意」と強調したうえで、立憲民主党神奈川県連に山中氏の出馬会見内容に関する質問事項を送ったことを発表。山中氏が市長になるのに相応しいと確認でき、自身の7大主要政策への賛同が得られた場合は、立候補の意思を撤回して山中氏の応援に回るとの考えを明らかにした。

 また、出馬の意向が報じられていた田中氏との候補者調整についても、郷原氏は意欲的な考えを示した。

◆一本化には「開かれた談合」と否定的な田中康夫氏も、候補者同士の論戦は「望むところ」

 7月8日、横浜の老舗ホテル「ニューグランド」で田中康夫氏の出馬会見が1時間45分にわたって行われた。田中康夫氏は「創る・護る・救う」という理念とともに「YOKOHAMA 2021」と称する12の取り組みを冒頭で説明。カジノ反対についてだけでなく、学校給食(脱「ハマ弁」)問題、米軍基地跡地に消防・救急の一大拠点をつくる、待機児童・保留児童・独居高齢者問題、土砂災害対策、市議会議員提案の予算枠など、自らの言葉で政策を説明し、質疑応答を行った。

 この会見はYouTubeで視聴でき、Twitterなどでは「説明がわかりやすい」「久々に政治家らしい会見を見た」「温かさが伝わってくる」といった好意的な書き込みが相次いでいる。同日に菅義偉首相の会見も行われ、菅首相が原稿を棒読みしながらあいまいな(時には的外れな)答弁を行い、特定の記者だけを指名して切り上げたことと比較する投稿も多く見られた。田中氏は記者クラブ記者とフリー記者を区別することなく、すべての記者の質問に対して丁寧に答えていた。

 筆者はその会見の場で、「反カジノ候補の一本化」について田中氏に聞いてみた。

「(田中氏は冒頭の決意表明で)『市民の間では反カジノで結論は出ている』という話なのですが、今回の市長選には山中教授とか郷原さんとか田中康夫さんとか、反カジノの候補が複数名出られて、票を食い合って、カジノ推進派を隠れカジノ推進派を含めて利する可能性もあると思います。今後、一本化の話し合いとか公開討論会で予備選のようなものをするとか、反カジノ候補を一人に絞ることについてはどう考えているのですか」

 田中氏は次のように答えた。

「報道を通じて、そのような意見があるということは伺っています。それは果たして、大変生意気な言い方ですが、民主主義の望むべきあり方なのでしょうか。と申しますのは、選挙は被選挙人の資格を持っている方はどなたでも、告示日の夕刻の締め切りまでは立候補することができます。

 そして、いま名前が上がった方々はそれぞれメディアを通じてですが、立候補する意思があることを、それなりに会見という形でお話になっているということです。それを述べた後にすり合わせをしようというのは、私は何か開かれた談合のような話になっていくのではないかと思います。

 私は候補者として、(立候補予定を)表明したものとして、それぞれの方と切磋琢磨をすると。で、個別にあるいは複数でディスカッションするということは大いに行われるべき民主主義だろうとは思います。

 しかし、いったん立候補を表明した方が、『ここを飲めば立候補を降りる』とか、『ここをお前は飲んで一本化に協力しろ』ということは、私は民主主義の本来あるべき姿ではないのではないかと思います」

「談合」という否定的な言葉が返ってきたので、さらに筆者はこう質問した。

「公開の場で、アメリカの予備選のイメージなのですが、候補者が議論を戦わせて世論調査などをして候補者を絞り込むというのも否定するのですか」

 すると、田中氏からは一転して肯定的な答えが返ってきた。

「それは大いに結構です。しかしながら日本の場合、私の経験では、日本青年会議所傘下の団体の方が進行して進めるという形がありましたが、これだけの数の中でどうやって物理的に行うのか。それは四苦八苦されていると思いますが、青年会議所だけではなくて、公平性を担保したうえで、そうした場を設けていただくということは候補者の一人として望むところです」

◆郷原氏も、山中氏・田中氏らとの公開ディスカッションを歓迎

 公開の場での議論には郷原氏も賛成の立場だ。7日の出馬会見で、質問状への回答で最終判断する代わりに公開討論会のような形で直に山中氏と議論をする方法について聞くと、次のような前向きな答えが郷原氏から返ってきたのだ。

「そういう形もありうるのではないでしょうか。私は本当にできるだけオープンな場で、市民の人たちにも分かるようなプロセスを経ていくのがいいと思いますが、相手のあることですから、そういうようなやり方に応じてもらえるのかどうかだと思います」

 また郷原氏は7月12日発信のブログ「横浜市長選挙を通して、『住民投票』と『候補者調整』の意義を考える」の中でも、公開討論を通して人物評価や政策論争を行って有力候補に絞り込むことは「民主主義の実現」という面からも望ましいのではないかと問題提起。田中氏ら立候補予定者との議論も次のように歓迎していた。

「田中氏も、出馬会見で具体的な政策を打ち出しており、その中には、私の掲げた主要政策と基本的方向性を同じくするものもあれば、考えを異にするものもある。今後、市長選挙告示までの間に、田中氏との間でも公開の場でディスカッションを重ねていきたいと考えている」

 山中氏や郷原氏や田中氏ら有力な反カジノ候補が次々と名乗りをあげる中、カジノ反対票の分散によって少数派の推進派候補が競り勝つ可能性が高まっている。さらに7月13日には、前神奈川県知事の松沢成文参院議員がカジノ反対の立場で「出馬に意欲」と報じられた。

 横浜市民に対する世論調査では「カジノ反対」が多数にもかかわらず、カジノ賛成派候補が“漁夫の利”で市長選を勝ち抜くのか。今後の立候補予定者たちの動向から目が離せない。

文・写真/横田一


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