1億総コメンテーター時代にテレビのコメンテーターをするのは至難のワザ? 放送作家・鈴木しげきの「テレビを読む」

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テレビのコメンテーターは解説者であり、視聴者の代表でもある?

午前午後の情報番組でコメンテーターをしている人たちの顔ぶれというのは、じつにさまざまだ。報道部の人、大学教授、弁護士、医師、編集者、文筆業、元スポーツ選手、お笑い芸人、俳優、モデル……etc。いっけん何でもありの様相だが、もちろんそうではない。

テレビに関するアンケートを取ると、よく挙がるのが、ワイドショーでその話題に詳しくない人がコメントしているのはどうなの? といった声がある。「専門家でもない人の声を、時間を割いて聞く必要があるだろうか?」そんな疑問だ。

確かに専門家がコメントしてくれれば、「そうなのか!」と耳を傾けようと思うだろう。しかし、テレビのコメンテーターというのは“解説者”で、必ずしも“専門家”ではなかったりする。まだ解明されていないコロナの話題や難しい政治経済のニュースを、「これは噛み砕くと、こういうことなんですね」とか「そこからこんな問題が透けて見えますね」といったことを伝える役割りだ。となれば、それは報道部のベテランや広い見識を持つ大学教授といった人選も頷ける。

ところが、テレビのコメンテーターというのは、たんに意見や感想を言うことを求められることもあるのだ。

視聴者と同じ目線に立つことで「こう思う」とか「主婦としては納得できない」とか。冒頭でもふれたが、この役割り自体をいらないとする声があるのは承知している。が、一方で「よくぞ言ってくれた!」と共感をつくったり、「そんな見方もあったか!」と気づきをもたらすことで、支持を集めているコメンテーターがいるのもまた事実だ。

例えば、お笑い芸人のカズレーザーさん。高学歴で物知り、独自な意見を持つ人だ(最近はキャスターの立場でコメントすることが多いですね)。的確で、ときどきハッとするようなコメントで射ぬく(疑問を呈するカタチで矛盾を突いたり)。それでいて、お笑い芸人さんだから、場の空気を和ませることも言えたりする。もちろん、タレントだから制作者の意図も巧みに汲める。なかなか絶妙なことをしているなあと感心する。こういう人がいる以上、芸人・俳優・モデルなどのコメンテーター枠はなくならないだろう。早い話、需要があるのだ。

視聴者は解説タイムか井戸端会議タイムか、わかって見ている!

怒りんぼうキャラの芸人さんは確かによく怒っている。「都知事はなにもしてないじゃないか!」なんて。視聴者のガス抜きや痛快さを感じさせてくれるという意味では、“怒るオヤジ”というのは確かにコメンテーターの1つの定型だろう。が、これも怒ってばかりだと「なんでいつも吠えてるの?」「本気で怒ってる?」「おまえが言うな」などと視聴者も感じ始める。

では、良識派のコメントでまとめる作戦はどうだろうか? 人気の某女芸人さんにはそんな傾向がある。ところがこれには「なに、フツーのこと言ってんだよ」といった声が多数寄せられる(きっとご本人は芸人としてではなく、1社会人としてコメントしていると思われますが)。

では、芸人なんだからギャグにしてみるのはどうか? ……や、これは間違いなくスベる(笑)。というより炎上必至だろう。

芸能人のコメンテーター枠、なかなか難しい仕事だ。

良識派の無難なコメントも、芸人だと「なんか他にないの?」という感じになるが、元スポーツ選手が言ったりすると、なんとも爽やかだったりして特に違和感はない。

また、みちょぱなどのギャルモデルがまともなことを言うと「意外にしっかりしてるじゃないか」と好感度を上げたりしている。

視聴者というのは、テレビを観ながら無意識で状況判断をしているものだ。今、テレビでしゃべっているコメンテーターは話題に対する解説をしているのか、それとも意見や感想を言って、みんなであーだこーだと考える“井戸端会議タイム”なのか。そこは当然理解している。そのうえで、解説系コメンテーターに対して「この人、イライラする」というのは、イデオロギーの違いから来ることが多いのではないか。一方、井戸端会議系コメンテーターに対するイライラの正体は“違和感”“不快感”だ。

「偉そうに」「無難なこと言っちゃって」「いちいち怒るな」これらを裏返せば、「この人、詳しい!」「穏やかな印象」「ズバッと言ってくれた!」に変わる。紙一重の芸当だ。そうやって考えると、テレビのコメンテーターというのは多分に芸能的な要素があると言えよう。

1億総コメンテーター時代の中、テレビでコメントする意義とは?

今や1億総コメンテーター時代だ。友達とスイーツを食べたら「ねえ、どんな味?」。YouTubeでは「新商品を買ったので使ってみた感想を語ってみたいと思いまーす」。Twitterではありとあらゆる事象に対してコメントがいっぱい。そしてあなたも、日々コメントを求められているのではないか?

会社の会議で「どう思う?」と振られ、「××さんと同じです」とは言えず、何かひねり出してるってことはないだろうか。実際、効率や時間のことを考えたら特にコメントがないなら「ない」でいいのだが、印象としては味気ない。いかにコメントするのか、それが求められる。

そしてテレビの中は、それが顕著なのかも。魅せる要素。そこが面白さになっている時代だ。人気番組『サンデージャポン』や『そこまで言って委員会NP』は、コメンテーターやパネリストの発言を膨らませて、そのやりとりが見所だ。一般的に、ニュースや情報で個性を発揮するのはなかなか難しいが、コメント部分は出しやすい。けど、難しい。だから達成できている番組は強いというわけだ。

今日もテレビ業界は新たなコメンテーターを探しているだろう。そんな中、じつはコメンテーターのオファーを断っている芸人さんは多いとも聞く。「そんな器ではない」ということらしい。どんな分野にも進出するお笑い芸人たちが及び腰だというのだから、いかに攻略が困難か!

と考えると、改めてカズレーザーさんってスゴイ。彼、ある番組で「コメンテーターなんてマジで、誰でもできると思う」と発言したらしい。「知らなかったら、知らないでいい」とも。いろいろ知ってるくせに、謙虚だ。

彼の場合、コメンテーターという概念に縛られていない。自由だ。そこが上手く行っているポイントだろう。どうやら、コメンテーターという仕事、時代と共にまだまだ変わっていく。変えた人が次に支持を集めるコメンテーターになるだろう。

【文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。

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