「飲食店いじめ」に銀行と酒類業者に取引停止圧力! これは西村「悪代官」だけでなく菅政権ぐるみの組織犯罪か?

「まるで江戸時代の悪代官だ!」

2021年7月12日から4度目の「緊急事態宣言」が東京都に発令されたが、酒類提供をめぐる西村康稔・経済再生担当相の「応じない飲食店には金融機関から働きかけをしてもらう」という圧力発言に、「言語道断!」という怒りの声が沸騰していた。

そんな事態に、菅義偉政権は「西村代官のご乱心」で一件落着にしようとしているが、ネット上では、

「スガ殿様が知らないわけがない。政権ぐるみの悪だくみに違いない」

という憤りが沸き起こっている。

「苦境に立つ飲食業界への思いやりのかけらもない」

主要メディアの報道をまとめると、西村康稔担当相は先週の7月8日の記者会見で、具体的な資料を配りながら、

「(酒類禁止要請や命令に)応じていただけない飲食店の情報を共有する金融機関からも、応じていただけるよう働きかけを行っていただく、ということで取り組みを進めたい」

と述べた。

記者団から、

「資金面での圧力をかけてほしい、と考えているのか」

との問われると、西村氏は、特に〈圧力〉を否定せずに、

「金融機関は日常的にやりとりを行っていると思いますので、金融機関からも働きかけを行っていただきたい」

と繰り返したのだった。

この発言は重大な反響を巻き起こした。野党各党や各新聞社説が、

「新型コロナ感染拡大で苦境に立たされている飲食業界への思いやりのかけらもない、政府による恫喝まがいの発言」(立憲民主党)
「金融機関は、ただでさえ資金繰りが苦しい飲食店の死命を制する。目的のためには手段を選ばぬ強権的な粗雑な発想」(朝日新聞)

などと一斉に猛批判した。

インターネット上でも「西村大臣の解任」や「議員辞職」を求める声があがった。

あわてたのは政府と与党だ。翌9日には加藤勝信官房長官が、自民党の「発言に注意してほしい」という要求を受ける形で、西村大臣に口頭で注意。「政府として金融機関に働きかけを決めた経緯はなく、誤ったメッセージが伝わってしまった。金融機関への働きかけは行わない」と方針を正式に撤回した。

ことは、「西村大臣の個人の説明不足」とされたのだった。しかし、西村氏はよほど不本意だったのだろうか、11日夜から12日にかけて3度ツイッターを更新。

「決して融資を制限する趣旨ではなかったが、趣旨を十分に伝えらえず反省しております」

と、「反省」を書きながら、「謝罪」することはなかった。やっと謝罪したのは6日後の7月13日になってからだった。

内閣官房と財務省、経産省、金融庁も関与する悪だくみ

しかし、じつは「西村大臣の個人の説明不足」などではなく、政府ぐるみの企てだったことを暴いたのは、共同通信(7月12日付)「酒提供停止働きかけに財務、経産両省も関与」である。共同通信は、西村氏が担当する内閣官房の新型コロナ感染症対策推進室だけでなく、財務省と経済産業省、金融庁も関与していたこと示す文書を入手、2枚の写真付きでこう報じたのだった。

「酒類の提供停止に応じない飲食店に対し、取引金融機関から順守を働きかけてもらうよう求める政府の方針決定に、内閣官房のほかに、財務省と経済産業省、金融庁も関与していた。酒類の提供停止に応じない飲食店に取引金融機関から順守を働き掛けてもらうよう求める『事務連絡』の文書を、内閣官房は7月8日に出していた(写真掲載)。そして、9日に(世論から猛反発を受けると)『中止にする』という事務連絡文書も出していたのだった(写真掲載)」

最初の8日付の文書は「コロナ感染症対策の徹底促進について、所管金融機関等へご依頼いただきたい事項」として、金融機関が融資先の事業者に対し、新型コロナ特別措置法に基づく要請や命令の順守などを働きかけるよう「よろしくお取り計らいをお願いします」としている。

財務省と経済産業省、金融庁も関与しているとなると、少なくても麻生太郎財務相、梶山弘志経済産業相が知らないはずはないだろう。また、内閣官房の最高トップである菅首相は知らなかったのか。

菅首相は7月9日に世論が沸騰。西村発言が撤回に追い込まれた際、記者団から、

「西村大臣の発言は、金融機関の優越的地位の乱用を勧めるものではないか」

と問われると、

「西村大臣の発言は承知していない。(仮定のことに応えるのは控えるが)西村大臣はそうした発言は絶対にしないと私は思っている」

と答えたのだった。

酒の卸売り業者の圧力に国税庁を使う陰険さ

西村大臣は、金融機関への「圧力」を断念したが、もう一つ、酒類を出そうとする飲食店を締めあげる「悪代官」らしい手を用意していた。飲食店と取引のある卸売り業者に、酒類を提供しないよう「圧力」をかけた。

内閣官房と国税庁の連名で、業界団体に「飲食店が要請に応じていないことを把握した場合には、当該飲食店と酒類の取引を停止するようお願いします」と要請文を送ったのだ。

激怒したのは、圧力をかけられた卸売り業者の団体、全国小売酒販組合中央会だ。7月12日、自民党に抗議に訪れた。東京新聞(7月13日付)「『お得意さんに自粛警察しろと?』西村氏の取引停止要請に酒店悲鳴... 全国組合会長、自民党に見直し要望」が、こう伝える。

「全国小売酒販組合中央会の吉田清孝会長は、自民党本部で下村博文政調会長と面会した。政府が新型コロナ対策として、酒類提供の停止に協力しない飲食店との取引をやめるよう求めていることを見直すよう訴えた。吉田氏は要望後、本紙の取材に応じ、『飲食店のお得意さんは酒屋にとって財産。酒の提供を注意するなら、自粛を要請する上(国や東京都)のほうでやってもらいたい』と話した」

酒類提供を続ける飲食店と取引しないよう求めた西村大臣の発言後、加盟酒店から「お得意さんの飲食店に自粛警察をしろというのか」などと反発が相次いだ。吉田氏は「飲食店の注文を断れば、もう取引してくれなくなる。その場合の補償まで考えてくれないと、とてもお願いはできない」と頭を抱える。

吉田氏自身、飲食店を経営しており、「家賃が支払えなかったり、借金が増えたりした飲食店の事情は私たちも分かる。現場の状況を理解して発言してほしい」と訴えた。

東京新聞(7月13日付)「酒提供をやめない飲食店と取引停止『国の要請は憲法上問題』『巧妙かつ悪質』 専門家が指摘」は、西村大臣のもう一つの「悪代官」ぶり所業の問題点をこう指摘する。

「酒提供を続ける飲食店との取引を停止する要請は法的根拠が不明だが、国から免許を与えられる事業者にとっては無視しづらい。有識者は自由な経済活動を営む『営業の自由』を保障した憲法上、問題になると指摘する。憲法が専門の横大道聡(よこだいどう・さとし)慶応大教授は『コロナ対策の特別措置法はこうした要請を想定しておらず、事実上のお願いでしかない』と指摘する。
しかし、国税庁は酒類の販売免許を出す権限を持っており、『要請に応じないと報復されかねない』と懸念する業者にとっては単なる要請では済まされない。販売業者の経営を制約する恐れがあるため、横大道氏は『憲法(22条)が保障する営業の自由の観点から問題だ』と説明。その上で『取引を停止しても業者が自主的にやったことだという言い訳の余地が残り、巧妙かつ悪質なやり方だ』と批判する」

金融機関への圧力には謝罪・撤回した西村大臣も、この第2の「圧力」に関しては、謝罪と撤回から逃げていたが、7月13日18時過ぎ、自民党幹部に「撤回する」と連絡してきた。

2か月前から国税庁が酒類業者に怪しい動きを

ネット上では、菅政権ぐるみの血も涙もないやり方に怒りの声が巻き起こっている。

エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏は、こう指摘した。

「緊急事態宣言下でも酒類の提供をするルール破りの飲食店が増えたのは、そもそもルールが公平ではないことが一番の原因だ。国民には徹底した自粛を要請しながら、一方で五輪選手村では酒類の持ち込みが認められる、露骨なダブルスタンダード(二重規範)が適用されれば『こんな非合理的なルールには従えない』と考える店が増えるのは当然だ。地下経済が拡大する原理も全く同じだ。政策当局が適用する規制が非合理的で非効率だと、規制の網の目をくぐって地下経済か拡大し、最終的には非効率な規制が緩和・撤廃されるようになる。闇営業をなくしたいのであれば、ダブルスタンダードになっているルールを公平なものにすることが先決だ」

ほかにも、こんな批判が相次いだ。

「地方銀行に勤務しています。金融機関からの圧力が実施されなくてホッとしています。お客さまに働きかけをすると、恨まれたり、黙っていてほしいと頼まれたり、いろいろ大変な目に遭うことが簡単に想像できました。公務員が動き回るのは限界があるので、駒が揃っている金融機関にと思ったのでしょうが、現実的に無理です。私たちには私たちの仕事があるし、国から何も見返りがないのにそんな雑用をぶつけられても困ります」
「金融機関の働きかけ、批判が出なければ本気でやる気だったということでしょう。飲食店を脅すために省庁が監督する企業を使うという卑劣な手口です。西村大臣の単独犯ではできないトンデモない組織犯罪です」
「財務省と経産省が関わっているのに麻生大臣と梶山大臣に話がいっていないとは到底思えない。ましてや内閣官房がからんで、菅首相に話がなかったのが本当なら、今すぐ西村さんの首を飛ばしてもいいレベル。前々から次に緊急事態宣言をした際の重要施策として準備していたというのが、ホントのところでしょうね。金融機関に自粛警察をさせ、店に酒を卸さないという兵糧攻め。これがもし上手くいけば、今後は補助金なんてまどろっこしいことはやめて、お上の力を振りかざせば万事解決が横行していたということですね、やれやれ」

酒類販売者からは、こんな声が。

「酒類販売者です。酒類業界は国税庁からの依頼は、長年命令と思い込んでいます。本当に依頼なら内閣官房の名前だけでよいはす。国税庁の名前を入れれば、言うことをきくとわかってやっています。優越的地位の乱用は明確で、業務妨害を国税庁がアシストしていたということです」

国税庁を巻き込んだ計画的な「犯行」だったのではと、指摘する声もあった。

「2か月前から酒販店に頻繁に国税庁からアンケートが送られてきました。内容は家庭用業務用の割合などです。酒販店は免許のこともあるのでまじめに返します。それを元に酒販店を締め付ける策を練っていたと思うとやるせない気持ちになります。ちなみに酒関係者として、このアンケート文書に書いてある場所に電話し、詳細を確認しようとしました。担当者が不在なので折り返しますと言われ、ずっと待っていますが折り返しが来ません」
「酒類販売は免許制だから、お上に逆らうわけにはいかない。でも卸を規制しても、協力に応じないような飲食店は結局スーパーとか小売店で酒を仕入れるようになるだけ。そうなると今は自由にしている小売店での酒の販売も規制していくようになるだろうから、そうなったら大混乱だろうね」

一方、飲食店にしっかり要請を守ってほしいという人からはこんな意見も。

「徹底的に飲食店には自粛して欲しいのです。でも、そうであれば五輪貴族の行く店は絶対ルーをル守らせてください。しかし、ホテルのルームサービスは別、個室付き店は別と報道されています。五輪貴族がルールを破った店に行っていることが発覚したら、即刻国外退去、選手なら出場停止、メダリストなら剥奪、くらい当たり前に考えたうえでの飲食店への制限ですよね」
「よーし、こうなったら奥の手があるよ。ちょうど100年前にアメリカであった禁酒法を日本でも一度やってみたら? 酒を全部取り上げて廃棄処分にした歴史があったけど、結局、密造酒が横行して、アル・カポネとかの反社会マフィアが増えたそうだが」

(福田和郎)

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