OL三人組VS大企業!痛快お仕事エンタメ映画『サムジンカンパニー1995』あらすじ&解説

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自社工場の廃水汚染の隠蔽に気付いた会社員が、大企業相手に真実を暴こうとする映画『サムジンカンパニー1995』。グローバル化の機運高まる90年代の韓国の空気感を再現した、お仕事エンタメ映画です。

『サムジンカンパニー1995』あらすじ

1995年、ソウル。大企業サムジン電子で働く高卒の女性社員たちは、コーヒー出しや資料整理などの雑用を押し付けられてばかり。能力を生かしたやりがいのある仕事を任されることも出世の機会もなく、妊娠すれば事実上のクビ宣告だ。

しかしグローバル化を進める社の方針で、TOEICで高得点を出せば彼女たちにも出世の機会が与えられることとなる。都合よく人員を削減するための言い訳とも思われたが、高卒社員の一人ジャヨンは希望を見出し、英語の勉強に明け暮れる日々を送っていた。

ある日、同じ部署の社員に付き添い地方の自社工場を訪れたジャヨンは、工場からの汚染水がそのまま川に流れているのではないかと疑う。ジャヨンが同僚ともに上司に進言して調査が行われ、すべては解決したように思われたが、実はその調査に不正があったことを知ってしまう。

周囲の作物や村人への健康被害を懸念したジャヨンは、友人の同じ高卒社員ユナとボラムの協力を得て隠蔽された真実を暴こうと奔走する。

サムジンカンパニー1995

サムジンカンパニー1995

2020年/韓国/110分

作品情報 / レビューはこちら

監督は、伝統芸能パンソリの女性初の歌い手を描いた『花、香る歌』のイ・ジョンピル。今回も男性社会で奮闘する女性の姿を映画にしました。
ちなみに本作は、韓国で人気のベーカリーチェーン「パリバケット」のイム・ジョンリン支会長が若い頃、会社の不当な扱いに立ち向かったというエピソードから制作がスタートしたそうです。

正義のために立ちあがる主人公ジャヨンを演じたのは『グエムル 漢江の怪物』で怪物にさらわれる少女の役で一躍有名となったコ・アソン。子役時代から着実にキャリアを築き上げてきた実力派です。
ジャヨンの友人の一人であるユナ役は173cmという高身長のモデル出身女優のイ・ソム。『スウィング・キッズ』でダンスも披露していたパク・ヘスが、メガネ姿の数学の天才ボラムを演じています。

グローバル化と経済発展

映画の舞台となる1995年の韓国は、92年に大統領となった金泳三によって「グローバル元年」とも位置付けられた年で、国を挙げて韓国企業のグローバル化を図ろうとしていた時期。国際社会に乗り出すためには語学は必須、というわけで本作のように企業がTOEICを人事に採用したり、英語の学習クラスを行ったりしていました。
作中登場する「サムジン電子」のモデルとなったのは、その響きから推察すると電子機器メーカー「サムソン電子」ではないでしょうか。現在も世界的に知名度の高い国際企業ですね。
ちなみに、グローバル化政策は教育現場にも及び、この時期に英語は小学生の正式教科となります。

また、民主化によって経済発展は進み、1995年には国民一人当たりのGDPは1万ドル、96年にはOECD(経済協力開発機構。国際経済について協議する国際機関)への加盟を果たします。
90年代後半の韓国は、国際化と経済成長によって大きく変わろうとしていた時代でもあったのです。
しかしながら、すべてが万事良好といったわけではありません。

作中会社の工場で「フェノール」という物質が工場周辺の川に流出して水質汚染を引き起こしますが、こちらは1991年に起きた斗山電子の「フェノール事件」という実際の出来事が元になっています。
また加速するグローバル化は企業買収などの由々しき事態を招くこととなるなど、その他、経済発展における様々な弊害が映画でも描かれていきます。

本作はフィクションではありますが、そういった、加速する国際化競争と経済発展、その代償としてのさまざまな社会的な問題を取り入れ、当時の空気感を見事に再現した社会派エンタメ映画となっています。

また、当時を彷彿とさせるファッションやメイク、小道具にも注目。エンドロールも90年代仕様となっていますので最後までお見逃しなく!

「ちっぽけ」な女性社員たちの「大きな」結束

本作の主人公となるのは、高卒の事務職の女性社員たち、事務能力に長けた正義感の強いジャヨン、向上心とアイディアに溢れたユナ、数学の能力に秀でたボラムの三人。それぞれ目標や夢を持ち日々の業務に不満を抱えながらも、何の力もない彼女たちはその地位に甘んじるしかありません。
けれども、会社ぐるみの隠蔽という大きな不正を前に立ちあがる決心をします。下手をすれば今の地位でさえ危うくなりかねない状況で、彼女たちは正義のために大企業に立ち向かっていくのです。

監督のインタビューや作中でも語られる「たとえ小さな存在でも私たちはみんな偉大なのだから」という言葉の通り、高卒で女性といった「小さな存在」の彼女たちが結束し、大企業を打ち負かそうとする姿はやはり胸が熱くなるものがありますね。

最近の韓国では女性の地位向上が叫ばれ、『1982年生まれ、キム・ジヨン』『野球少女』など女性差別や女性の社会進出を題材にした作品も多く作られています。本作もその流れを汲んだ、女性たちの働き方を後押しするような、エンパワメントに溢れた一作となっています。

映画は過去のお話ですが、企業の不正、学歴社会、女性差別、激化する経済競争……と、映画で描かれた社会問題は現在にも通じるもの。
彼女たちの奮闘から、誇りを持って働くことの素晴らしさを改めて感じ取ることができるでしょう。

仕事に悩む人、自信を持って働きたい人、全ての社会人に贈るエールに溢れた、元気と勇気をもらえる作品です!

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