「20代の時より、紹介される男のレベルが落ちた。でも...」妥協できない30代独身女の、リアルな叫び
ステイホームの時間が増えたいま、 東京にいる男女の生活は大きく変わった。
その中でも華やかな生活を送っていたインスタグラマーたちが、こぞって夢中になったのが「#おうち美容」。
外からも内からも自分と向き合い「美ごもり」生活を送った人々には、いったいどんな変化があったのだろうか?
1つのアイテムが、人生を変えることもある。
東京で「#美ごもり」生活を送る人々の姿を、覗いてみよう。
今回は性格が歪んでいる女 ・理央(35)の話。
▶前回:「お腹にいるのは、誰との子なんだ…?」二股をかけられモヤモヤする男が、自宅でコッソリ始めたこと
性格も髪も歪んでいる婚活女・理央(35)
「ハァ…。今日もうまくいかなかった。っていうか、あんな人紹介するとか失礼じゃない?」
友人から紹介された男性と、食事した帰り道。
期待ハズレのスペックと見た目だったことに対する怒りも大きいが、先ほどの会話を思い出すと、思わずため息が漏れる。
「理央さんって、本当に結婚したいんですか?」
なんで、知らない人にそんなことを言われないといけないのだろうか。35年間、一人で生きてきた。けれども別に好きで独身を貫いているわけではない。
自分でも感じている。年齢を重ねるにつれ、出会う男性、そしてデートまで続く男性のレベルが確実に落ちていることに。
以前は経営者や外資系金融など、年収3,000万円以上の人ばかりだった。だが最近デートする相手は、自分より年収が低い人ばかり。
見た目だって、これといって特長のない人が増えたし、おじさんが多い。
「私のレベルに合わないし」
そう言いながら、誰も待っていない家の扉を開けた。
デート相手がショボくなり、焦る…。そんな女が結婚できない明確な理由
「よし、まだ綺麗なままね」
洗面台で自分の顔を見て、大きく頷く。
細長くスッとした鼻筋に、綺麗な二重。そして髪の毛は丁寧に時間をかけてブローし、ストレートアイロンでセットしたおかげで、まっすぐに保たれている。
こんなにも綺麗な私なのに、どうして独身なのか不思議でならない。
だがお風呂から上がってもう一度鏡を見ると、げんなりしてしまった。さっきまで綺麗だった髪が、完全に元に戻っている。
湿気でうねり、パサパサの髪。
これまでずっと、髪の毛がコンプレックスだった。女の美しさは、顔の造形よりも肌と髪の美しさで80%決まると思う。
神様は不公平だ。
どうして私は、癖毛で生まれてきてしまったのだろうか。
一生懸命ブローし、髪の毛を引っ張ってストレートにする。一体いつまで、このために時間を費やさないといけないのだろう。
婚活だって一緒だ。
どれほど頑張っても報われない。私の時間ばかり食いつぶされていき、身にならない。私の魅力をわかってくれる人が、世の中にいないなんておかしいと思う。
携帯を見ると、先ほどまで会っていた男性から連絡が来ていた。
『今日はありがとうございました。またご飯行きましょう^^』
いい人なのはわかっている。年齢は40歳。特に嫌な性格でもなく、身長は170cmくらい。年収もそこそこ。
だけど20代の私だったら、相手にもしていなかったような人だ。
もっと高収入で素敵な人と結婚すると信じていたし、ここまで来て条件を落とすわけにもいかない(し、落とせない)。
でも、これが今の私の現実だった。
翌週末。男性を紹介してくれた女友達・春香とランチの約束があり、さっそく私は愚痴った。
「陽介さんどうだった?いい人だったでしょ?」
「いい人だったけど…。ちょっと違うかなぁって」
「何が?どのあたりが?」
「だって、普通じゃない?もう少し年収も身長も高いほうがいいなと思って」
ここまで言うと、春香が急に私を睨みつけてきた。
「あのさ。友達として言うけど、理央は自分のこと、もう少し客観的に見たら?」
「え?」
「今年で35歳でしょ?少し妥協したり、どこかに目を瞑らないと結婚なんてできないよ。若くて可愛い子なんか、死ぬほどいるんだし。若い子相手に、35歳の理央はどこが勝てるの?」
春香の言葉に、思わずパスタが喉につかえる。
「それに、理央って可愛げがないよね。そんな性格までネジ曲がってる女、誰も相手にしないよ?」
― グホッ…。
素手で殴られたような気持ちになり、何も言い返せない。
春香の言う通りだ。
年齢を重ねるにつれていつの間にか意固地になり、どんどん性格が曲がっていった。しかも気がついたときには、可愛げゼロの女になっていたのだ。
性格がひん曲がった女は、結婚できるのか!?
その日の帰り道。ショーウィンドウに映った自分を見て、ため息が出てきた。今日は雨のせいで、必死にセットしたのに髪の毛がもう縮れてきている。
うねうねと曲がっている、私の髪。それはまるで素直になれず、文句ばかり言っている自分を表しているようだった。
『くせ毛 矯正 30代』
そんな悲しいワードで検索してみると、ある物にヒットした。3万円は優に超える、高級ドライヤーだ。
今まであまり興味はなかったが、ふと思いついた。毎日あんなに頑張って髪の毛を伸ばし、セットしているけれど、果たして意味があるのだろうか。
結婚して毎日生活を共にしたら寝起きを見られるわけだし、毎朝毎晩完璧でいられるはずがない。
「何も変わんないかもしれないけど…。買ってみようかな」
こうして私は高級ドライヤーの中でも一番高い、5万円超えのドライヤーを思い切って購入したのだった。
それから1ヶ月後。私は再び、春香とランチをしていた。
「この前はごめんね。せっかく紹介してくれたのに」
「いいよ。ただ相手から、理央に対してNGが来てたよ(笑)」
あれからドライヤーを変えたら、やはり高いだけのことはあり、髪が艶やかになった。癖毛は完全には直らないけれど、パサつきやうねりはだいぶおさまったのだ。
…でも、私の婚活は結局まだ難航している。
ずっと結婚できないのを人のせいにしてきたが、自分でもわかっている。私の性格にも難があることを。
あの後“そこそこ”の相手だと思っていた人に、こちらから思い切ってデートに誘ってみたけど、あっさりと断られてしまった。
「知ってるよ。だって私、あの後LINEしたもん。でも軽く既読スルーされて終わっちゃった(笑)」
「理央が上から目線だったんじゃない?あのさ、いい男なんてほとんど結婚してるんだから、もっと違うところ攻めたら?理央は上を狙いすぎだよ」
「とは言ってもねぇ」
理想は下げられない。でも最大限の努力はできる。
急に性格は変えられないけれど、ここ最近は完璧に髪の毛をセットしなくても、外へ出られるようになった。
多少、曲がっていたっていい。だってそれが私だから。
「というか、理央少し雰囲気変わった?」
「うん。完璧を目指してヘアセットするの、やめたんだ」
髪の毛が爆発する梅雨が明け、夏がやってきた。今年の夏は、いつもよりもう少し素直になろうと思う。
そして多少曲がっていても、自分を大事にしようと思った。
35歳、独身。もう焦るのはやめた。お金をかけて良いツールを手に入れることができれば十分綺麗でいられるし、幸いそのぶんの財力もある年齢だから…。
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笑顔が汚い女