カウンセリング時間の長い医師はクビになる。男性更年期障害、臨床の現場から

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◆男性更年期障害と疑ったら、どこで受診すべき?

 自分の年齢を3で割り、その数字を24時間制の時刻に当てはめてみる「人生時計」という考え方を知っている諸兄も多いのではないだろうか。

 たとえば42歳÷3=14時=午後2時。深夜12時までには猶予はあるが、気力・体力ともに見直しが必要な時期でもある。男性更年期障害にかかる年齢にも該当、あるいは近いからだ。

 もし男性更年期障害の症状が表れたら、どうしたらいいのか。「男性更年期外来」のパイオニア的存在である、石蔵文信医師に実情を聞いた(以下、「」内のコメントはすべて石蔵医師)。

 前回、石蔵医師は「自分のようにカウンセリングに重きを置き、かつ保険診療で診てもらえる男性更年期外来を探すのは難しい」と語っていた。その事情は、医療従事者にしかわからない部分に根ざしているという。

「カウンセリングから投薬治療の決定まで、病院が保険診療でもらえる診療報酬をご存知でしょうか。一般的には2000~3000円です。この料金体系では、1時間に7~8人は診療しないと、経営を維持できません。1時間で7人診療するのであれば1人につき8分強、8人だと7.5分の計算になります。

 つまり医師たちは、カウンセリングに『時間を割きたくない』のではなく、『割けない』のが現状。患者さんの話に対して時間をかけて聞き、ストレスからくる男性更年期障害にはアプローチができないのです。これは、保険診療してもらえる精神科でも同じことが言えます。

 実際に私が病院で診察していた頃、カウンセリング時間を長めにとっていたら『患者数は多いけれど収入につながらないから』と、病院を5軒ほどクビになりました(笑)。

 現状の私の生活環境は、妻が眼科の医院を経営。子どもたちは医者になり自立していて、負債を抱えていないうえにスタッフを雇っていないので、『男性更年期外来』を運営できます(それでも自由診療費は高額で、1回5万円)。もしも保険診療でテナントを借りて、スタッフを何人か雇っていて私のように初回のカウンセリングで1時間半を割いていたら、3ヶ月で経営が暗礁に乗り上げるでしょうね」

◆自分で実践できる対処法はある

「開業医は儲かっているに違いない」という、偏見を覆す医療業界の闇。だが、石蔵医師のクリニックに通う時間・予算がなく、副作用があるテストステロン補充療法も避けたい、できれば保険診療で受診したい男性はどうしたらいいのか。

 石蔵医師によると、自身のクリニックで行う『認知行動療法』の中には、自分で実践できる方法もあるとのことだ。

「私の治療ではカウンセリングを通じて、次のように認知の歪み(同じ出来事に遭遇した際に、歪んだ捉え方をすることで、自分の気持ちが不安になったりイライラしたり、ネガティブなものになることを指す)を修正していきます。

 まず、物事を肯定的かつ楽観的に捉えるには、自分の頭の中で使う言葉を置き換えてみることが有用になります。

◆「頑張る」ではなく「ベストを尽くそう」

 石蔵医師に、問題が起きたときの代表的な置き換え例を教えてもらった。

・どこがダメなんだろう→どうすれば良くなるだろう
「『ダメ』という言葉を『良い』に置き換えて、『問題』という言葉を『課題』として考えてみるのです。『どこがダメなんだろう』と自問すると、物事のダメな部分や原因の追及に考えが向き、自己否定につながりやすくなります。『どうすれば良くなるだろう』と考えると、解決に向けたアイデアが生まれやすくなります」

・頑張らなければいけない→ベストを尽くそう
「『頑張れ』という言葉は自分を追い込みますが、英語では『Good Luck』とも言います。ある程度努力したら、あとは運に任せるという意味合いでしょう。このような言葉を自分に対して言うように試してみてください」

 さらに、自分の性格や考え方のクセを把握したうえで、「行動をルール化」して実行することも大切だと付言する。

・頼まれるとノーと言えずに仕事をたくさん抱え込む傾向にある→同時に受け持つ仕事は3つまで。それ以上は断ると決める

・常に仕事のことが頭から離れない→就寝前2時間はパソコンやスマホ、書類を閉じて仕事のことを一切考えずにリフレッシュする時間と決める

「置き換え言葉や行動のルール化をスマホやノートに書き出して、実行したかどうかも追って記録をしてみてください。セルフチェックや次の機会へのステップとして活用できるはずです」

 次回は、「男性更年期障害の主因は精神的なストレス。男性ホルモンの分泌量低下は直接的な原因ではなく、単なるイチ症状です」と説く石蔵医師に、効果的なストレス解消法や定年前後にもおきやすくなる男性更年期障害を「疑似体験」できる方法などを聞く。

石蔵文信氏
(いしくら・ふみのぶ)1955年京都府生まれ。医学博士。内科・循環器・性機能専門医。イシクラメディカル代表。2001年に全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を開設。現在は「眼科いしくらクリニック」内で診療を継続。日本自殺予防学会理事も務める。夫の言動がストレスとなり妻の心身に生じる不調を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。定年後の男性のための料理教室や、社会活動の拠点となる「男のええ加減料理」や、子育て支援をしている祖父母世代がお互いに気楽に愚痴を言えるサイト「孫育のグチ帳~イクメンのグチもありよ~」も運営中。『夫源病』『定年不調』など著書多数。

―[男性更年期障害]―


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