オラオラ顔人気が再燃? アルファードがバカ売れの真相

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆今なぜバカ売れ? アルファードをカーマニア目線で再検証してみた

 高速道路に限らず、猛スピードで爆走する大型ミニバンを見かけるたびに「正気か?」と思う担当Kであります。あんな重心が高い不安定そうな乗り物で爆走するなんて、後席の家族は不快だろうと思っておりました。

 しかし、バカ売れ中のアルファードに乗って目からウロコ。粗暴な運転をされても、後席は社長のイスのごとく快適そのもの!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

茂呂幸正=写真 Photographs by Moro Yukimasa

◆オラオラ顔、人気再燃!

 トヨタのオラオラ系大型ミニバン・アルファードが、想像を絶する勢いで売れている。現行モデルは発売からすでに6年以上たつというのに、年々販売が伸び、昨年はついに販売台数第5位に躍進。今年に入ってからは月間1万台超えを連発。カローラやフィットを上回り、3番手につける月もあるのだから、驚異としか言いようがない。

 アルファードはミニバンの王者だけに、値段は決して安くない。売れ筋は400万~500万円のグレードだが、そこにオプションをつけると600万円にも迫る。200万円くらいのヤリスが売れているのとはワケが違う。

 アルファードがこれほどバカ売れしている裏には、2つの理由が考えられる。

◆理由その1

 一つは、昨年5月からトヨタ全販売店でアルファードが買えるようになったこと。それまでトヨタは、販売チャネルによってアルファードと姉妹車のヴェルファイアを売り分けていたが、どっちも買えるようになった途端、ヴェルファイアはほぼ即死した。今年4月からは1グレードのみに絞られ、事実上植物状態だ。

 アルファードとヴェルファイアの違いは見た目だけ。つまり見た目で圧倒的にアルファードが支持されているのだ! どちらも負けず劣らずのオラオラ顔だが、アルファードの鎧をイメージさせる斬新かつ超オラオラなフロントグリルが、超ブッチギリで支持を集めているということにほかならない。

 この顔が登場したときは、カーマニアから大ブーイングが浴びせられたが、そんな声などどこ吹く風で、ヤンキー系ユーザーがこぞって飛びついた。その波はどんどん上流へと波及し、芸能人や経営者の移動の足として定番になり、ついには天皇皇后両陛下もアルファードで移動されるに至った。カーマニアは木っ端微塵である。

◆理由その2

 もう一つの理由は、下取り価格の高さにある。5年の残価設定ローンの場合、アルファードは残価50%程度で組めるので、ノアやヴォクシーと大差ない支払い金額で買えてしまう。なら頂点のアルファードに流れるのも当然だろう。

 しかしこのアルファード、どれだけ人気があろうともカーマニア的には「番外地」だった。6年前の試乗では、大型ミニバンの宿命でボディ剛性が低く、路面の凹凸でけっこうショックがくるのを確認。重いボディに対しては、2.5Lのガソリンやハイブリッドエンジンではパワーが足りず加速が鈍い。3.5LのV6エンジンでもまだトロい。とにかく走りがまるでダメ! こんなドン臭いモンに乗れるか!であった。

 なのに周囲を見渡せば、多くのアルファードが飛ばしている。まさにオラオラと前車をアオりまくっている。あの性能であの走りはヤバイのでは? これはもう一度、アルファードの走りを確かめなければ!

◆6年ぶりに乗ってみて…

 そう思って、6年ぶりにアルファード(2.5ハイブリッド エクゼクティブラウンジ4WD 736万円)に乗ってブッたまげた。

「こんなにマトモだったっけ!?」

 まず、ボディが意外としっかりしている。しかも乗り心地がイイ!

「これはもしかして電子制御エアサスなの?」と思ったが、アルファードにそんなものはない。フツーの金属バネである。

 重心も以前の印象より低くて、コーナリングが安定している。加速はいいとは言えないが、Sモードに入れるとレスポンスがぐっと増し、思い通り痛快に走れる。手に汗握らなくてもオラオラ走れる! いつのまにこんなに改良されたんだあぁぁぁぁ~~~~~~!

◆カーマニアはアルファードに完全敗北

 これはもう、カーマニア的にも、アルファードを認めないわけにはいかない。カーマニアはアルファードに完全敗北した。クラウンも完全敗北した。旧勢力はアルファードによって駆逐された! これからはアルファードが日本のフラッグシップです! 天皇皇后両陛下バンザーイ!! 涙が出ます。

◆【結論!】

 アルファードはこれまで何度か一部改良を受けているが、ボディ剛性やサスペンションの改良が行われたという記録はない。しかし明らかにカイゼンされている! トヨタおそるべし。

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

2021/7/11 8:53

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