完成確率は20%? 陥没事故発生で遠のく外環道完成

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 外環道東京区間の建設が危機に瀕している。あくまで個人的な見解だが、外環道が完成する確率は、20%程度ではないだろうか。

◆南行きトンネルの工事を再開できない可能性

 昨年10月、調布市東つつじが丘2丁目で、陥没事故が発生した。外環道東京区間の大深度シールドトンネル(南行き)直上だった。

 調査の結果、別の3か所でも空洞が発見された。これらはすでに埋め戻されているが、詳細な調査の結果、陥没個所の前後360m(幅16m)の区間で、地盤のゆるみが確認された。事業者のNEXCO東日本は、「原因はシールドトンネル掘削時の土砂の取り込みすぎ」と認め、住民に対し、原状回復を約束。当面工事を中断することになった。期間は2年間の予定だ。

 原状回復とは、地下47mまでゆるんだ地盤を元に戻すことを意味するが、厳密にこれを実行するためには、地上から地下47mまで掘り進めて、土壌を入れ替える必要がある。そこまでしない場合でも、家屋を取り壊しての工事が必要だ。

 しかし、大深度地下法によって、ある意味「勝手に」自宅の地下深くにトンネルを掘られていた住民側とすれば、そんな苦痛に耐える義務はない。つまり、被害を受けた住民全員が、よほど物分かりがよくない限り、南行きトンネルの工事は再開できない可能性がある。

◆中止になったら掘ったトンネルはどうなる?

 この私見に対し、周囲から様々な疑問が寄せられた。

Q なんとか現場を迂回してトンネルを掘れませんか?

A 技術的には可能だが、ルート変更の手続きは猛烈に時間がかかるし、ルートを変えればいいという問題でもなく、現実的ではない。そもそも迂回するにしても原状回復が先なので、状況に変わりはない。

Q せめて関越道と中央道だけでもつなげませんか?

A 関越道側から発進したシールドマシンは中央JCTの手前までしか掘り進まない予定なので、東名側から発進したシールドマシンが再発進しないと、トンネルを中央JCTまでつなげるのは難しい。

Q こんな重要な公共事業が途中で中止なんて、そんな民間ディベロッパーみたいなことが起きるんですか?

A 高速増殖炉「もんじゅ」も、一度も実用運転されないまま廃炉が決まったが、外環道東京区間もそうなる可能性がある。

Q 途中まで掘ったトンネルは、今後どうなるんですか?

A 公共事業は簡単には中止にできないが、最悪、5年、10年とこのままの状態で塩漬けにされるのではないか。

「もんじゅ」は95年に火災事故を起こし、10年以上かけて運転再開工事を進めたが、2010年に再び事故を起こし、16年、ついに廃炉が決定した。最初の事故から21年後だった。外環道も同じような経緯をたどる可能性があるということだ。

 現状は、NEXCO東日本が地下のトンネル側からの地質調査を行い、その結果を見て、必要ならば住民に対して「仮移転のお願い」をすることになるが、仮に自分がその立場なら、すんなりとは応じられないだろう。

◆土地所有者の同意なしでトンネルを掘れる「大深度地下法」だが……

 住民側はまだ、最大2cmの地盤沈下程度の被害しか受けていないが、大地震が起きれば、液状化の可能性もある。原状回復のメドが立っていない状態で、強引に工事を再開するのは困難ではないか。

「大深度地下法」は、土地所有者の同意なしに、40m超の大深度にトンネルを掘ることを可能にした画期的な法律だが、そもそも大深度トンネルは「地表への影響はない」というのが前提。その前提が崩れてこういった事故が起きると、その時点でアウトになってしまうリスクをはらんでいることが浮き彫りになった。

 個人的には、長年外環道東京区間の完成を待ち望んでいただけに、茫然自失である。

◆大深度地下トンネル工事も、ある意味壮大な「賭け」

 現在進められている大深度プロジェクトの代表は、JR東海のリニア新幹線だ。起点の品川から33kmと、終点の名古屋から17kmの市街地が大深度地下トンネルとなる。

 リニア新幹線の場合、深度は55~90mと外環道(陥没現場で47m)より深く、トンネル直径も14mで、外環道の16m×2本より狭い。地質も外環道よりもいいというから、地上に被害が及ぶ事故のリスクは小さいはずだが、一度事故が起きてしまうと、その時点で巨大プロジェクトがご破算になる……かもしれない。

 リニア新幹線は、静岡県内のトンネル工事が静岡県知事の認可を得られず、大きな障害になっているが、大深度地下トンネル工事も、ある意味壮大な「賭け」だ。

取材・文/清水草一

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

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