CAを辞め、手取り45万で社長秘書になった途端…。女に起きたヤバい心境の変化

「やめるときも、すこやかなるときも、あなたを愛する」と誓ったはずなのに…。

“やめるとき”は、愛せないのが現実。

思い描いていた結婚生活とは程遠く、二人の間に徐々に生じ始める不協和音。

「こんなはずじゃなかった」と不満が募ったとき、そもそも「この結婚、間違ってた?」とふりかえる。

あなただったら、この結婚生活やめる?それとも…?

▶前回:「別々に寝ない…?」妊娠を機にベッドを分けた夫婦。さらに深まる離婚の危機!?

Vol.10 ブランド物が好きな女(前編)


【今週の夫婦・結婚2年目】
夫:賢一(33)公認会計士
妻:美咲(31)社長秘書、元CA


「美咲、おかえり!」

平日の18時。

仕事を終えた妻の美咲が帰って来たので、玄関で出迎える。

「この匂いは…ハンバーグ?」

僕が頷くと、美咲は笑顔になった。

「やったぁ。賢ちゃんが作るハンバーグおいしいんだよね〜!」

仕事終わりなのに女らしい良い香りをさせながら、不意に抱きついきた。

もう結婚して4年も経つのに、僕は未だにこうして妻にドキドキさせられている。

「あ。お風呂入れておいたよ。あと、美咲が使ってるバスソルトが無くなりそうだったから、Amazonで再注文しておいたからね」

僕はそう伝えると、美咲をバスルームへ促す。

「もう!完璧。さすが~」

美咲の入浴は30分。そのあとのスキンケアに20分だから、まだ時間がかかる。

煮込みハンバーグのフライパンとスープの鍋の火を止め、ソファに腰を下ろした。

僕は会計士で、基本的に自宅で仕事をしている。

以前は新宿にオフィスを構えていたのだが、クライアントと会う機会も減ったため、契約更新をしなかったのだ。

妻の美咲は、半年前まで日系の大手航空会社で国際線のCAをしていた。しかし、業績の悪化から仕事が激減。会社から出向の提案をされたのだが、美咲はそれを断り退職した。

今は、健康食品会社の社長秘書をしている。その社長とは、昔からの知人だという。

その社長秘書の仕事内容というのが、夫の不安の種で…

秘書といっても、オフィスでの業務は半分くらいで、残りはプライベートでお手伝いさん的な仕事をしているらしい。買い物に行ったり、掃除や洗濯などの家事をしたりすることもあると聞いている。

その社長が30代の独身男性ということもあり、プライベートな空間に妻が出入りするのは、ためらいがあった。

しかし、勤務時間は10時から17時で、給与は手取りで45万円。その金額と仕事内容に満足している美咲を見ていると、心配よりも応援したい気持ちの方が勝る。

そのくらい、僕は美咲のことを愛していた。

だから、家で仕事をしている僕が、家事のほとんどを担当していても苦じゃない。


「あぁ~気持ちよかった。お腹すいたよぉ」

お風呂上がり、手触りの良いシルクのベビードールに、ガウンを羽織った美咲がリビングに現れた。

海外製の上品なボディクリームと、アロマシャンプーの香りが鼻をくすぐる。

「座って待ってて。もうできるから」

僕の声に明るく返事をし、ダイニングテーブルへ向かう美咲の脚は、スラリと長くみずみずしい。自分の妻だから可愛く見えるのは当たり前かもしれないが、とても30代には見えない。

こんな美人な妻を持てて本当に幸せだと、この時僕は心からそう思っていた。

刺激を求める妻


「なんか、つまんないんだよね…」

土曜の午後。私は目黒にある友達の家に遊びに来ていた。

「何が?」

友達の摩耶が、紅茶を飲んでから尋ねる。

「何って、賢一。なんていうんだろう、優しすぎっていうか。毎日刺激もなく平和すぎちゃって…」

私は、お土産に自分が買ってきた色とりどりのマカロンからピスタチオを選び、口に運ぶ。

「ふぅん。美咲は相変わらず幸せそうね。ごちそうさま」

摩耶は、CA時代に食事会で出会った老舗質屋の娘だ。

就職したことはなく、家の仕事を手伝っているのだが、未だに独り身。7歳年上の彼氏はいるのだが、結婚する予定は今のところないらしい。

― だめだ。まったく伝わらない。

友達といえども、今、私は既婚者で、摩耶は独身。女は置かれているステージが違うと、話が噛み合わなくなってしまうのだろうか。

これでは、夫婦の惚気を独身の友達に浴びせる嫌な女だ。

私は、他の話題を頭の中で探そうとしたその時。スマホがほぼ同時に、2通のLINEを受信した。

『藤森さん:これから麻布にある会員制の鮨屋行くけど、来る?』

『賢一:今日のごはんは、美咲の好きなポッサムとキムチチゲだよ~』

私が秘書をしている社長と、夫の賢一からだった。

― うっ……。賢ちゃん、ごめん!

私は2秒考えた後で、社長からの食事の誘いに乗ることにした。

社長との食事の約束に浮足立つ美咲。ワンピースを新調して向かうが…

「私、そろそろ帰るね」

約束の18時まではまだ時間がある。

― ラフな格好だから、服を着替えなきゃ。

家に戻って着替えるより途中で買ったほうが早いと判断し、山手線で目黒から渋谷へ向かい、西武渋谷店のB館3階へ。

最近は新宿の伊勢丹よりも、人が少ないここで服を見ることが多い。多数のブランドを一気に見ることができるのは助かる。


「すみません、これ着て行きたいのでタグを切っていただけますか」

私は、ヌメロヴェントゥーノの可愛いワンピースをさっと試着してから購入した。デートでもなんでもないのに、新しい服に身を包み、高級なお鮨を食べに行くのはテンションが上がる。

渋谷から六本木・麻布方面へは普段はバスを使うのだが、今日はタクシーに乗り込んだ。

外食が久しぶりだからだろうか、心が浮き立つ。

― そうそう。こういう刺激が私には必要だわ。

車内でティントタイプのローズ色のリップを塗り直し、薄づきのクッションファンデを頬に乗せた。

店に着くと、社長の藤森は、すでにビールを飲みながら大将と盛り上がっていた。

「おぅ。悪いな、業務時間外に。旦那さん大丈夫か?」

「全然大丈夫。あ。仕事中じゃないから、敬語じゃなくてもいいよね」

私が笑顔を作ると、「仕事中も別にタメ口でもいいけど」と藤森も白い歯を見せて笑った。

藤森との出会いは私が24歳の時。フライトのない日は、だいたい六本木や西麻布で飲み歩いていた頃に遡る。

飲み友達の男性は、ほとんどが経営者。藤森もまた、その中の一人だった。中には男女の仲になった人もいたが、彼らを結婚相手にしようとは思わなかった。

こんなに派手に遊ぶ人を夫にしたら、毎日気が気じゃないし、そもそも本気で好きになれる気もしなかったのだ。結婚するなら、私のことが大好きでいてくれる優しい人。お金があるに越したことはないが、高望みはしない。

だから、私は生真面目で一途な賢一を選んだ。

「次、日本酒でいいか?」

私の空いたグラスを見て、藤森が尋ねる。

腕にはリシャール・ミルのトゥールビヨン。高級時計をつけていても、嫌味も違和感もないのが不思議だ。

ゴルフで日焼けしているからなのか、それとも、体から滲み出る経営者オーラのせいか。とにかく、夫とは別世界の人種だということが見た目からもわかる。


「焼酎を一杯飲んでからにしようかな。麦のソーダ割りで、すだちがあれば絞って頂けますか?」

「いいね~。じゃあ俺もそれ、同じのちょうだい」

賢一と、最後に外食したのはいつだっただろうか。

ほぼ毎日夕食を作ってくれるから、文句は言えないが、時々外で食事をするくらい許して欲しい。

“美咲が感染したら嫌だから”

夫がそう言ってくれるのはありがたいが、美咲ファーストすぎる賢一に、最近は物足りなさを感じていた。

「もっと食べたいものがあれば、握りますよ?」

そう大将に聞かれ、あっという間にコースが終わりを迎えていたことに気づく。

「じゃあ、俺中トロおかわり。美咲は?」

「私も!あとウニもお願いできますか」

私は、まだこの楽しい時間を終わらせたくなくて、満腹なのに2貫追加でお願いしていた。

「いくね~。それならさっき飲んだ日本酒、一合だけもらおうかな」

藤森もなんだか楽しそうだ。

普段はこんなにまじまじと顔を見ることはないが、よく見ると、ガタイの良い体の割には可愛い顔をしている。

― そういえば、今日は誰とここに来るつもりだったのだろう。

私は、ウニの握りを口に入れ、全身でその旨味を感じながら、そんなことをふと思った。

『賢一:帰り、何時になる?』

夫から連絡が入っていたことにも気づかず、私はあろうことか、藤森とまだ一緒にいたいと思ってしまっていた。


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藤森と親密な雰囲気になる美咲…

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