池松壮亮、オダギリジョーと兄弟役に「本当に格が違う俳優です」

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 10歳でデビューして子役として活動し、成人して以後も『愛の渦』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『宮本から君へ』など多くの代表作を生み出し続けている俳優・池松壮亮さん。『ぼくたちの家族』ほかの盟友、石井裕也監督と組んだ最新主演作『アジアの天使』が公開中です。

 本作で兄(オダギリジョー)を頼って韓国に渡り、ある家族と思いがけず共に旅することになる主人公・剛を演じた池松さんに、関係改善が見られない日韓、そしてコロナ禍も重なった今、本作が放たれることへの思いを聞きました。

 さらに、剛が子どもの頃に“天使”を見たというエピソードにちなみ、子ども時代の思い出を聞くと、池松さんの口から驚きの思い出が!!

◆僕らの真ん中にはいつも映画がある

――ほぼ韓国のスタッフ、キャストとともに撮影された作品です。

池松壮亮さん(以下、池松)「今回韓国側のプロデューサーとして入っている、パク・ジョンボム監督と石井監督が、7年前に映画祭で出会って、1年後に日本に遊びに来たときに紹介されたんです。キャッチボールしたり岩盤浴に行ったり、一緒に飲みに行ったりして、また1年後に今度は僕らが韓国に行って色々なものを見せてもらって食べさせてもらって。そうやって数年間対話を繰り返してきました。

 そしていつも真ん中には映画があって、いつかきっと、この奇跡的な出会いを映画にする日がくるだろうなというのはなんとなく分かっていました。最初に石井さんから脚本を読ませてもらってからは、繰り返し内容が変わりましたが、最終的にこの形になって、本当に素晴らしいなと思いましたし、今語るべきだと感じました。とにかく成功させたいと思いました」

――前からこの企画は進行していて、最後に、監督と親交のあるパクさんがプロデューサーとして参加したと伺っていたのですが、池松さんとパクさんも本作以前から交流があったんですね。

池松「ありました。たくさん困難なことがありましたが、最後の最後にパクさんが『映画を諦めちゃ駄目だ、俺がプロデューサーをやる』と言ってくれて、なんとかクランクインできました。そしたら今度はコロナがやってきました」

◆新しい時代への兆しのような映画

――時代性とともに普遍性も兼ね備えた作品です。日韓の関係だけでなく、コロナ禍でさらに困難を迎えたこの時代に放たれることをどう感じますか?

池松「この困難な時代に、暗いトンネルをぬける光となるために沢山の苦難を乗り越え、この映画が完成しました。傷ついてきた世界の小さな救いの一手となれたら何より嬉しく思います。個人個人の魂が、迷子のような状態にある今を作品に持ち込みキャラクターに落とし込んで、国と言葉を超えて、融合して共に再生してくることを自分に課していました。

 おっしゃる通り、この映画の準備段階がコロナ以前で、撮影をコロナの蔓延と共に送り、コロナ後に向けて動き出しつつある世界に完成しました。そのことによって、この映画の主題がよりくっきりと浮かび上がりましたし、より個々の人間にフォーカスが向い、さらにこの映画の意義と役割を今感じているところです。とにかく、未だ人との接触にはリスクが伴う段階ですが、疲弊しきったこの世界に、新しい時代への兆しのような映画になってくれたのではないかと僕自身感じています

◆オダギリジョーは、この国のもっとも優れた俳優のひとり

――今回、兄弟役を演じたオダギリジョーさんは、池松さんにとってどんな先輩ですか?

池松「うまく伝わるか分かりませんが、最後の日本映画史と言えるような俳優さんではないかと思っています。なにかこの国の映画史、俳優史を感じますし、さらに誰にも似ない独自の表現を追われてきた方だと思います。何より俳優という同業者として見ると、あの技術と物事を選ぶセンスと、目の奥に宿っている情深さと知性とユーモアの深み、本当に格が違うんです。この国のもっとも優れた俳優のひとりだと思っています」

◆幼少時代、マンションで“座敷童”に遭遇!?

――池松さん演じる剛は、子どものころに“天使”を見たことがあります。池松さん自身が子どもの頃、なにか衝撃的な出会いをした経験は?

池松「なんかね、座敷童(ざしきわらし)を見た気がするんですよ。今聞かれて思い出しましたけど(笑)」

――ええ!?

池松「昔住んでたマンションに、夜、トイレに行ったときに洗面台の横のスペースのところに、いたんですよ。僕が4、5歳くらいのときの話ですが」

――というと、まだ“座敷童”というものへの知識がないころの出来事ですよね。

池松「確かにそうです。後から考えると『座敷童だったのかな』という。目があって一瞬動けなくなったんですよね。夢だったのかなぁ(苦笑)。そこは6歳のとき引っ越ししてしまったんですが、何階に住んでいたかは忘れましたけど、今も住んでいた頃のことをふと思い出します。すごく不思議なマンションでした。窓を開けると、家の前の電線にフクロウがよく来てたんです」

――福岡ご出身ですが、自然が豊かだったのでしょうか。それにしてもフクロウは珍しいですね。

池松「近くに山があったりはしましたが、珍しいですよね。家族みんなで『また来てるね』と言いながら見てたんですけど。こんな話でよかったですか?(苦笑)」

◆昔よりちゃんと寝て、夜と朝を意識するようになった

――現在の池松さんについても伺いたいのですが、仕事に邁進されている印象ですけれど、30歳を過ぎ、私生活にも意識は向くようになりましたか?

池松「性格上、精神で乗り越えようとしてきた部分が大きかったのですが、前より休むことについて、考えるようになりましたね。みなさんそうだと思いますが、人間の生活自体が見直されていますし、これまで体と心のバランスが崩れていたんだなと身に沁みて考えるようになりました。昔よりちゃんと寝てますし、ちゃんと夜と朝を意識するようになりました

 何もしないとか、暇を持て余すということがすごく苦手なんですけど、なるべく何もしない時間を過ごすようになりました。今、この世界の混乱と歪みの原因は、やっぱりバランスが崩れているということだと思うんです。バランスというのは非常に厄介で、常に動いている世界のバランスを保つにはバランスについて気を配っておく必要があります。この映画も、損失を抱えて、バランスを失った人たちの物語です。とにかくそのバランスを見つめなおすことを、今なるべくやるように意識しています」

(C) 2021 The Asian Angel Film Partners

<取材・文/望月ふみ>

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi

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