【自分の体についての決断を下すのは自分】世界中の映画祭を席巻『17歳の瞳に映る世界』

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自分の体に生じた、自分では受け入れられないことを、自分で解決するために旅に出る17歳。味方は同年代のいとこだけ。最小限のセリフで綴る映画『17歳の瞳に映る世界』を、監督のインタビューも交えて紹介します。

 

『17歳の瞳に映る世界』

 

© 2020 FOCUS FEATURES LLC

 
7月16日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
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出演:シドニー・フラニガン、タリア・ライダー、セオドア・ペレリン、シャロン・ヴァン・エッテン、ライアン・エッゴールド ほか
脚本・監督:エリザ・ヒットマン
配給:ビターズ・エンド パルコ
字幕翻訳;稲田嵯裕里
2020/アメリカ/101分/ユニバーサル作品
 
 

 
 
概要:
第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)、サンダンス映画祭2020ネオリアリズム賞受賞をはじめ、世界中の映画賞を賑わせている珠玉作。
少女ふたりの数日間を描いたロードムービーというミニマムな作りで、どの国にも通じる、思春期の感情と、普遍的な問題をあぶり出し、ロッテン・トマトでも99%(2021/4/22時点)の超高評価を得ている。

ストーリー:
ペンシルベニア州に住むオータムは、愛想がなく、友達も少ない17歳の高校生。
ある日、オータムは予期せず妊娠していたことを知る。
ペンシルベニア州では未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができない。
同じスーパーでアルバイトをしている、いとこであり唯一の親友スカイラーは、オータムの異変に気づき、ふたりで事態を解決するため、ニューヨークへ向かう……。(公式サイトより)
 
 

 
 

 

真実を追求した脚本

 
高校では、いとこのスカイラー以外に友達はおらず、家でも義父とうまく行っていない様子の主人公・オータム。
歌が得意で、高校の文化祭ではステージに立ち、ギターの弾き語りをする彼女が、一体どんなことを抱えているのか、『17歳の瞳に映る世界』では詳しく描かれることはありません。

そんな中、体調が良くなさそうなオータムが、母親には内緒でウィメンズ・クリニックに行き、妊娠していることが発覚します。
 
 

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未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができないペンシルベニア州で、オータムは誰にも相談せず、ネットで得た真偽の分からない怪しげな堕胎方法を試します。
スカイラーはそんな彼女の異変に気づき、親の同意がなくても中絶手術ができるニューヨークにあるクリニックへとオータムと一緒に長距離バスの旅に出ることに。

多くを語らないオータムと、多くを質問しないスカイラー。
心が通じ合っている二人ですが、持っているお金が少ないティーンエイジャーの彼女たちは、この旅でいくつもの壁にぶつかります。

妊娠したオータムに何があったのかは語られませんが、彼女の表情から、オータムが抱える苦しみが推測できます。

オータムに同行するスカイラーは、その美しさによって、旅に出る前から男性たちに言い寄られている場面が映し出され、旅の途中も美しさを武器に壁を乗り越える様子が描かれますが、無条件にオータムを支えるスカイラーはむしろ清々しく、オータムのそばに彼女がいてくれて良かったと思える存在です。
 
 

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大都会ニューヨークにやって来た彼女たちの戸惑い、オータムが処置を受けられる状況に辿り着こうとするまでの数々の難関が、ドキュメンタリー映画のようにリアルに綴られます。
本作のエリザ・ヒットマン監督は、取材を重ねて真実を追求し、脚本を執筆。
ウーマン・メディカル・センターに勤める実在のカウンセラーにも本人役で出演してもらったそうです。

本作を撮ることにした経緯や、取材内容、キャスティングなどについて語る監督のコメントが届きましたので、ご紹介します。
 
 

 

多様な視点を持つことが重要

 
アイルランドで中絶ができなかったために亡くなったという人の記事を読み、非常に落ち込んだというエリザ・ヒットマン監督。
「インターネットでアイルランドとその中絶法について、妊娠中絶が違法とされている現状を学び、これこそ私が作りたい映画だと思いました。女性たちの語られざる旅の物語です」

監督は、物語の舞台をアメリカに置き換えて映画を撮ることに。
「中絶手術のためにニューヨークにやって来て、夜ベンチで寝なければならない女性の記事を読みました。手術が高額で、女性たちはどこにも泊ることができなかったのだそうです」
 
 

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脚本を執筆するにあたって、ソーシャルワーカーや医師など大勢の人に取材をしたという監督。
「いくつもの小さな町へ出向き、私がこの登場人物だったら、この窮地にどこに行くだろうか、と考えました。小さな町には、どこにでも妊娠センターがありますが、そこはあてになりません。なぜなら、一見、医療施設に見えるけれど、免許を持った医師はそこにはいないのです」と語る監督は、妊娠センターの人たちはいい人ばかりで、温かく迎えてくれるけれど、繋がりのある支援先や養子縁組の情報を提供するのみで、中絶を希望するオータムのような人は、そこでは行き止まりになってしまうことを知りました。
 
 

『17歳の瞳に映る世界』本編映像_妊娠検査薬を見つめて…

 
 
「ニューヨークでは、多くの病院と全米家族計画連盟と、個人経営のクリニックにも行きました。多様な視点を持つことが重要だと思ったのです」
クイーンズにあるチョイシズ・ウーマン・メディカル・センターを取材した際、そこに勤めるカウンセラーのケリー・チャップマンと話した監督は、彼女の言葉に胸を刺されたと言います。
「『エリザ、中絶は決してただの危機ではないの。家の中で起こっている秘密は、20分では解決できない』と。妊娠、セクシュアルヘルス、パートナーによる暴力、暴力から安全を確保する方法、すべてが絡み合っているのだと。そこで、私はこの話を物語に取り入れました。主人公のリアクションに対し、見る人たちにも自ら選択するような感覚を持ってもらいたかったのです」
監督は、とても共感力の高い優しいケリーを、本作にカウンセラー役として、キャスティングしました。

ケリーとオータムのシーンでは、質問に答えるオータムの表情がとても印象深いです。
多くを語らないオータムの表情だけで、彼女がなぜ中絶を選んだのかが伝わってきます。
ケリーのセリフに「中絶を誰にも強要されずに自分で決めたなら何の問題もない」というのがあります。
自分の体のことは、誰かに強制されるのではなく、自分の意思で決めることが重要だというメッセージが伝わってきました。
 
 

 

監督を魅了した演技未経験のシドニー・フラニガン

 
オータムを演じたシドニー・フラニガンは、『17歳の瞳に映る世界』が演技初挑戦だったそうです。
「彼女はとても素晴らしいミュージシャンであり、パフォーマーですが、それまで演技をしたことはなかった。でも映画製作とバンドで演奏するのとはあまり違いはないのではないか、と思います。自分の仕事をしている人はみんな、それぞれ自分の楽器を演奏しているようなものだから」と語るエリザ・ヒットマン監督。
 
 

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シドニー・フラニガン

 
 
「私たちは別のドキュメンタリーでたまたま見かけたシドニーのビデオに魅了されていました。そこには本物の十代の女性らしさ、その哀しみ、脆さといったものが映っていたのです」と言う監督は、シドニーに手紙を書いて、出演交渉をしました。

本作の演技で、全米の映画賞でブレイクスルー賞や女優賞を総なめにしたシドニー。
「最初はこの企画に興味がなかった。でもこの力強いシナリオを読んで、気が変わったの。登場人物とその個人的な経験に焦点が置かれ、リアルで誰にでも起こりそうなことだと思ったから」と語っています。
 
 

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シドニー・フラニガン

 
 
スカイラーを演じるタリア・ライダーも、スティーブン・スピルバーグ監督作品『ウエスト・サイド・ストーリー(原題)』への出演が決定している注目株です。
「シドニーと陰陽のマジックを起こせる、対照的な性格の女性を求めていました。タリアが部屋に入ってくると、すぐに二人の間に絆が生まれました。どちらもバッファロー出身だったからです。タリアはシドニーより少し年下ですが、シドニーを補い、物語を動かしていく明るさがありました。いいコンビです」と語る監督。
 
 

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タリア・ライダー

 
 
タリアは、スカイラーについて「彼女は自分に女性的魅力があることに気づいているの。とても賢い女の子ね。だから、ああいう行動ができるんだと思う」とコメントしています。
 
 

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有名監督が製作総指揮を担当

 
オータムの母を演じているシャロン・ヴァン・エッテンは、シンガーソングライターとしても活躍しており、エリザ・ヒットマン監督は彼女の10年来のファンだそう。
シャロンは、『17歳の瞳に映る世界』の主題歌「Staring at a Mountain」を歌っています。
 
 

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シャロン・ヴァン・エッテン

 
 
オータムの義父役は、『ブラック・クランズマン』等の映画のほか、「ブラックリスト」「ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ」などの海外ドラマで人気のライアン・エッゴールド。
 
 

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ライアン・エッゴールド

 
 
オータムとスカイラーが長距離バスで出会うジャスパー役は、『ある少年の告白』や、海外ドラマ「ビカミング・ア・ゴッド」等に出演するセオドア・ペレリン。
 
 

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セオドア・ペレリン

 
 
『ムーンライト』の監督・脚本のバリー・ジェンキンスが製作総指揮に名を連ねる珠玉作『17歳の瞳に映る世界』は、7月16日公開です。
 
 

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