「交際経験のない40代独身男、気持ち悪いですか?」女性が苦手な46歳男性の悩み

 誰もが恋愛を楽しんでいるうちに40代になってしまったというわけではない。恋愛に不慣れで異性に対して積極的になれない40代もたくさんいる。

◆女性が苦手

 女性に憧れはもっているが、現実的にはどう接したらいいかわからない。そもそも人間関係を築くのが苦手で、女性関係はさらに苦手という男性は少なからずいる。

「男兄弟3人の末っ子として育って、中学からは男子校。大学は工学部でした。ずっと男友だちとつるんでばかりいたので、大学時代も恋人はできませんでしたね。女性と言えば接するのは母親だけでした」

 ナオキさん(46歳)はそう言う。

 大学を卒業すると、とある研究所に就職したが、そこもまた男性が圧倒的に多い職場だった。彼の配属された部署は、7人中、女性がひとりだけ。その彼女は、いい意味で「女性」を感じさせないタイプだったので、気にすることなく仕事に没頭できた。

 そう、ナオキさんは女性が嫌いというわけではないのだ。むしろ、気になってたまらない存在。だからこそ女性に自分の気持ちを話したりさらしたりすることができない。

「高校時代、友人に誘われて断り切れずに女子校の文化祭に行ったことがあるんです。友人たちはさっさと気になる発表会へ行ったり、カフェに行って女子たちとしゃべったりしているんですが、僕はどちらもできなくて。ずっと教室を回って、さまざまな展示を見ていました。

 天体関係の展示を見ていたら、『興味あります?』と女子に話しかけられたんですが、『あ、いえ』と口ごもって逃げてしまいました。結局、あのときは友人たちを置いてひとりで先に帰ってしまった。あれが女性が苦手だと決定的に自分で認識したときだと思います」

 なぜ女性が苦手なのか。それは裏返しで、自意識過剰なのだとナオキさんは分析する。モテたい気持ちはあるのだ。だが、実際には緊張して何も話せない、自分の薄っぺらさを見抜かれてしまう恐怖感にさいなまれもする。

「ただ、30歳のときに、このまままったく女性経験がないのは寂しすぎると思ったんです。それで大学時代の友人に勇気を出して相談、『大丈夫だよ』と風俗に連れて行かれました。その1回で、女性経験がないというコンプレックスからは逃れられたんですが、それ以降も恋はできなかった」

◆女性不信になる経験も

 30代前半、何度か気になる女性がいたことがある。ただ「つきあう」ことにはならなかった。どうやってアプローチしたらいいかわからなかったのだ。

 30代後半のころ、近づいてきてくれた女性がいた。

「そのころ部署が変わって、外部の人とも接するような仕事になったんです。そんな仕事の過程で知り合った女性でした。

 彼女と、僕の上司と僕の3人で打ち合わせをする予定だったんですが、上司が外出して帰社が遅れたんです。僕は世間話も苦手なんですが、彼女はすごく気軽に話してくれて。

『私、映画が好きなんですが、最近、何か観ました?』と聞かれて、たまたまその数日前に観た映画のことを話したら、とても興味をもって、いろいろ質問されたんです。聞き上手の彼女だったから、自分でも信じられないくらいしゃべってしまいました」

 その日の夕方、彼女からメールが来た。今度一緒に映画でも行きませんか、と。彼はすっかりその気になり、いつがいいかと返信した。

「彼女からも返事が来て、1週間後くらいに一緒に映画に行きました。帰りに食事もして、けっこう盛り上がったんですよ。でもそれからメールをしても返事がないし、電話しても出ない。

 その1ヶ月後、彼女が結婚したと聞きました。あのアプローチは何だったんだろうと思ったし、女性は信用できないとも思いましたね」

◆女性から「気持ち悪い」と思われているんじゃないか

 40代になるとすっかり自分でも諦めモードに入ったとナオキさんはため息をついた。だが、45歳の誕生日に漠然(ばくぜん)と不安を覚えた。

「鏡で自分を見たら白髪は増えているし、なんだか顔も暗い。学生時代の友人にも独身はいますが、彼らは独身を謳歌しているんですよね。自由に恋ができるんだから、結婚なんてしなくていいよという感じ。

 でも僕は女性からたぶん『気持ち悪い』と思われているんじゃないか、と……。恋をしたいと切実に思いました。誰かと寄り添って、お互いを思い合って生きていけたらいいなあと本気で思ったんです」

 見た目はごく普通の40代である。気持ちが悪いなどという外見ではない。“理想の女性像”に縛られている感じでもない。質問にはきちんと答えてくれる。何が彼をそこまで“引っ込み思案”にさせているのかわからない。おそらく小さなコンプレックスや傷が積み重なってしまったのだろう。

◆今さら行動できない

「今は焦っています。ひとりでときどき行くバーで顔なじみになった女性がいるんですが、口説くことはできません。せっかく話せるようになったのに、ここで口説いたら数少ない女性の友だちも失ってしまうから。

 彼女、かなり年下だし、きっと恋人もいるだろうし。でも僕は彼女のことが女性として気になっているんですけどね」

 年齢が彼を追い詰める。「何もない将来」が怖いと彼は言う。そう言いながらも、いい年をして恋がしたいなんて言っている時点で笑われますよねと何度かつぶやき、複雑な今の心情をのぞかせた。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

2021/7/9 15:47

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