『アタック25』はなぜ46年も続いた?出場者が明かす「気遣いの素晴らしさ」
朝日放送・テレビ朝日系で放映されている『パネルクイズ アタック25』(以下、「アタック25」が、2021年秋で46年の歴史に幕を下ろすことが先日報じられました。
クイズ番組隆盛と言えど、現在、視聴者が中心となって参加するものは『99人の壁』(フジテレビ系)や毎年夏に放送される『高校生クイズ』(日本テレビ系)くらいしかありません。『クイズ$ミリオネア』や『カルトQ』(ともにフジテレビ系)など、かつて多くの視聴者参加クイズ番組が存在していたことが嘘のようです。
しかし、なぜ「アタック25」だけが今まで生き残ってきたのでしょうか。
じつは筆者、一度だけ「アタック25」本戦に出場したことがあります。そのときのことを回顧すると、46年も続いた理由が自然と見えてきたような気がします。
◆出場決定から本番まで、制作側の気遣いが
元々クイズ好きで、小さい頃からクイズ王にあこがれを持っていた私が中でも一番メジャーな「アタック25」に参加しようと思うのは当然の事でした。
応募から抽選、予選会を経ての合格から半年後、朝日放送からついに出場依頼が来ました。収録は1か月後の平日に大阪で行われるとのこと。家族や知人などの応援団の参加も可能です。本人のみですが交通費は出ます。
その際、スタッフから、放映予定日前後の日付で起こった出来事や時事ネタが出やすいので、押さえておいて欲しいということを言われました(このことは全参加者に告げられます)。
過去問や収録日前後のネタ、時事ネタを猛勉強し、1か月後、私は収録が行われる朝日放送に赴きました。楽屋が用意され、メイクもしていただき、いざ本番……。
◆司会の児玉清さんから飴玉をいただく
私が出演した頃は、児玉清さんが司会の時代です。スラリとしてオーラ溢れる児玉さんに緊張しましたが、収録開始前に飴玉をいただき、とてもリラックスすることができました。
結果としては、パネルを5枚獲得でき、パネル獲得分の5万円+参加賞を獲得。最初こそ誤答続きでしたが、得意ジャンルを足掛かりに波に乗れたからでしょう。各回答者の見せ場作りのため、事前に1問だけ得意ジャンルを指定することができるのです。
その場で受け取った参加賞は、当時20代の私にとっては好みではない上に価値がわからず、親戚や知人にあげたりしてしまいましたが、調べるとかなりのブランド物で総額十万以上するものでした。とっておけばよかった……と悔やまれます。
◆参加者へのリスペクトを感じる番組だった
私が「アタック25」に出演したのは10年以上前。司会者も交代し、だいぶ前の話になりますが、ネットに転がっているその後に出演した参加者の体験記やレポを見ていると、今でも私の頃とさほど変わっていないようです。
しかも、どのレポートも番組を悪く言うようなものはなく、いい思い出となったことを口を揃えて言っています。このSNSの時代、クイズに限らず素人参加番組で、参加者に対し少しでも雑な扱いやヤラセの強要が発生すれば、口止めをしていてもすぐにばれてしまいます。
今までも賞金が払われなかったり賞品が渡されなかったりのトラブル、エキストラを入れての数合わせ、出来レースや過剰な演出など、多くの番組が過去に問題として取り上げられてきました。それによって、番組のシステムを変えざるをえなかった番組、そのまま終了となった番組もあります。
しかし、「アタック25」でそのような問題はほとんど出てきません。その理由は、“参加者の扱いが丁寧で手厚い”ということであると、参加体験を回顧して実感しました。番組側は毎週放映される多くの出演者のひとりでも、その人にとっては一生の思い出になるのですから。
◆他の番組に参加した時とは全然ちがった
別の素人参加番組にも参加申し込みをしたことがあるのですが、申し込んですぐ、3日後の収録に来てくださいと言われました。もちろん交通費は出ません。仕事もあったので調整は難しく、お断りをしました。また別のクイズ番組に参加した際には、大勢参加ということもあり、一瞬もテレビに映らず終了。あまりいい思い出はありません。
一方「アタック25」はトップでなくても獲得したパネル分だけの賞金や参加賞などが多く、出場者個々の見せ場も用意され、優勝はできずともかなりいい気分で収録を終えることが出来ます。
準備期間も十分で、交通費や家族観覧の配慮も十分。スタジオで児玉さんと記念撮影もしていただけましたし、1日だけスターになった気分になりました。失敗や恥ずかしい部分は放映で結果に支障がないようにカットされ、スタッフの気遣いも感じることが出来ました。
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放映終了の報道に、SNSやニュースコメントで多くの視聴者の悲しみの声が寄せられました。きっと、いつかは自分も出たいと思っていた人も多いでしょう。5年経つと再出場が可能なため、私もいつかリベンジしたいと思っていました。
タレントの千秋さんも、お母様が出場経験があるということで、惜別のコメントをTwitterで寄せています。これだけ愛されていた番組ですから、なんとか今からでも存続させることはできないのでしょうか。
いち出場経験者として、まるで母校がなくなってしまうような気持ちです。
<文/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦