「ワクチン接種、7割進めば忘年会も可能」SNSで話題の医師が明朗回答

 新型コロナウイルスのワクチン接種は、高齢者や医療従事者だけではなく、企業や大学などが実施する職域接種や、自治体によっては16歳から64歳までの接種が始まった。接種券を手にした人も増えてきている。

 SNS上には、すでにワクチンを接種した人たちのさまざまな体験談や、これから接種する人たちの不安の声も散見されるが、実際のところはどうなのだろうか。Twitterで自身がファイザー製のワクチンを接種した際の経過を随時報告し、注目を集めた医師で小説家の知念実希人氏(Twitter:@MIKITO_777)。今回は、ワクチン接種に関わる疑問について聞いた。

◆ワクチン接種をするべきか?

——そもそもワクチンを接種するべきか迷っている人も多いです。接種後に亡くなったという内容の記事も見かけます。

「致死率1.4パーセントの感染症を防ぐという意味では、リスクとメリットを天秤にかけた時に、打たないという選択肢はない、というのが多くの医師の見方です。

 日本では4,350万人以上(※)が接種しています。国民の3分の1が接種しているんですね。すでに全世界では10億人以上に新型コロナウイルスの予防ワクチンが接種されていますが、これが直接的な原因となった死亡例は世界で一例も報告されていません。バイデン大統領も、エリザベス女王も、菅首相も打っています。打つことのリスクばかりメディアで取り上げられますが、打たないことのリスクをしっかり見ていかないといけないと思います」

(※)首相官邸「新型コロナワクチンについて」

◆「打つなら利き腕ではない方がいい」

——ワクチンを打つならば、ファイザー製とモデルナ製のどちらがよいかという悩みをネット上で見かけますが。

「ポカリスウェットとアクエリアスみたいなものでほとんど同じです。効果も有効性も副反応も同じ。抗体価に少し差がありますが、抗体価とは体の中に侵入してきた、ウイルスに対して対抗する物質の量や強さを表す力価のこと。モデルナの方が抗体価が少し上なくらいで、有効性は変わりません」

——注射の痛みは誰しも嫌ですが、知念さんの場合は接種時の痛みはどれくらいでしたか?

「コロナワクチンは三角筋という大きな筋肉に刺す筋肉注射なのですが、痛みは本当に感じなかった。普通の注射よりも痛くないんです。むしろ痛くするのが難しいです(笑)」

——接種後の腕の痛みはどの程度でしたか?

「腕をぶつけたり、上げたら痛かったですね。でも翌日の夜にはほとんど消えました。腕が腫れるというよりも、筋肉に打つので筋肉痛が起きます。三角筋は腕を上げる筋肉なので、打つなら利き腕ではない方がいいですね」

——1回目よりも2回目のほうが副反応も強いという話も聞きます。

「確かに1回目、2回目も肩の痛みは出るのですが、2回目にかんしては、若い女性だと、熱が出やすいと言われています。統計上(※)でも、女性の方が1、2割熱が出やすいみたいです。一方、優先接種を受けていた高齢者が発熱する割合は、低い傾向にあります。70代の高齢者では、10人に1人にも満たないくらいですね」

(※)厚生労働省「健康観察日誌集計の中間報告(6月23日)」

——男性の場合はどうでしょうか。

「男性だと、1回目の接種では熱が出ることは稀です。2回目の接種で熱が出る人は3、4割ですね。37.5度以上の発熱か、倦怠感などが出るかもしれません。

◆発熱するのは免疫ができている証拠

——発熱や痛みのような副反応は避けられないのでしょうか。

「熱が出るのは、副反応というより、“主反応”に近い。免疫反応が起きている証拠。注射を打つことで、抗原というウイルスの破片みたいなものを作らせて、白血球が抗原を食べて覚えるというのが今回のワクチンの仕組みなのです」

——熱が出るのは、きちんと免疫ができている証拠なのですね。

「白血球が抗原を食べる時に、すべての人に炎症が起きます。起こらないと免疫ができない。ある程度、発熱が出るのは仕方ないというか、逆にしっかり免疫反応が起きているという証拠ですね」

——2回目の接種で熱が出てしまった場合は、市販薬ではどの薬を飲めばいいですか?

「カロナールなどのアセトアミノフェンがいいですが、解熱剤であればロキソニンでもなんでもいいです。熱が上がれば飲んで大丈夫です」

◆接種前後の注意点

——職域接種、大規模接種センター、かかりつけ医、地元の接種会場など、接種の機会や会場がいくつもあります。いつどこで打てばよいのでしょうか?

「どこだろうが関係がないです。一番早く打てるところで打ってください」

——これから受ける人は、接種時の注意点はありますか?

「前日にかんしては、抗体ができにくくなるので、お酒はやめてください。どうしても飲みたい場合は、飲みすぎないようにしてください。あとはよく寝ましょう。当日は、接種券を忘れないように。あとは、肩を出しやすい服装で行ってください」

——接種後に具合が悪くなって倒れてしまったという話も聞きますが、副反応が原因なのでしょうか?

「それは血管迷走神経反射というもので、過度に緊張しているとなりやすいです。よく採血した後、学校で倒れる子とかいましたよね。あれは緊張しすぎて倒れちゃうんです。

 怖いのは、血圧が下がった時に頭を打つこと。頭に血が行きにくくなっているので、しゃがんでください。少しでもふらついたら、医療関係者に言って横になれば治ります」

——また、「アナフィラキシー」と呼ばれる呼吸困難や意識障害などの副反応が気になる人も多いと思います。

「アレルギーの既往歴がある人はワクチン接種後、会場で15分ではなく、30分待って観察するようにしてください。

 今回のワクチンでは、アレルギーの既往歴がある場合は、ないかたよりアナフィラキシーを起こす確率がいくらか高くなると言われています。普通の人は何万人に1人の割合なので、少し多いですよね。とはいえ、医療機関でアナフィラキシーが起きてもすぐ治せますので安心してください」

——若い男性の心筋炎とワクチンの関係性も問題に上がっています。

「2回目の数日後に数万人~十万人の1人の割合で、若い男性を中心に心筋炎を起こすことがあります。これは副反応の可能性があるので調べられています。でも、死亡した人は見つかっていない。全員軽度で治療によって回復しています。日本でも数人出ていますが、回復していますね」

——接種後の生活で気をつけた方がいいことを教えてください。

「仕事をしても問題ありませんが、2回目の翌日は熱が出る可能性が高いので、休んだ方がいいです。あと、力仕事はやめたほうがいいと思います。肩が上がらないので。接種後、数日間はお酒を飲みすぎない方が免疫がよくつきます。

 ジョギングや運動などは、絶対ダメというワケではないので、ジョギングぐらいなら翌日から始めてもいいと思います。ただし、無理は禁物です。お風呂は、当日も軽くなら入ってもいいと思います。サウナが好きな人も多いですが、当日と翌日くらいは避けましょう。基本的には、インフルエンザの予防接種と同じで普通に生活してください」

◆副反応があってもワクチン接種が必要な理由

——働き盛りで基礎疾患などもなく健康だと、副反応の可能性があるワクチンを打つメリットを感じられない人もいるかもしれません。

「コロナワクチンは、発症自体は95パーセント、感染自体も90パーセント防ぎます。30〜40代の男性も、それなりの可能性で重症化する可能性はあります。僕は40代なのですが、もしも僕が感染した場合、200回に1回死にます。もし罹ったら、統計上の確率で言えば0.5パーセントの可能性で死ぬんです。肺炎になる可能性は数パーセント、重症と言われているICU(集中治療室)に入る可能性が2〜3パーセント。可能性の高いロシアンルーレットみたいなものですよね」

——接種後に熱が出る程度で防げるなら、メリットの方がはるかに大きいんですね。

「たとえ死ななかったとしても、高確率で後遺症が残る。味覚障害、嗅覚障害以外にも、肺炎を起こすと肺機能は完全には回復しないことが多い。40〜50代でも線維化という肺の壁が厚く硬くなると、血液中に酸素が取り込まれにくくなるので、人によっては一生酸素が必要になったりもします。コロナはパンデミックとして世界中で想定されていたものの中でも、“最悪”というのが医師たちの共通見解です。

皆さんの中には、軽い病気と思っていた人もいるかもしれないですが、体中に血栓症を起こしたり、心筋梗塞や脳梗塞でいきなり急死することもあります。医師は重症例を目の当たりにしているので『ワクチンを早く打った方がいい』と言います。家族に看取られることもなく、帰っていく時にはお骨になっている状態。葬式もまともにできない現実があるんです」

——身近に感染者がいないと、私たち一般人は「もう大丈夫だろう」という気持ちになってしまいますね。

「正常化バイアスといって、怖さが薄れていくんです。しかし、恐ろしい病気であることは変わらないですね。ワクチン接種すると、ほとんど感染しなくなる。そして発症した場合にも、ウイルスの排出量や期間が少なくなる。人に移してしまうリスクも劇的に減ります」

◆ワクチンで集団免疫を獲得できれば、年末の忘年会も可能

——ワクチンを接種した場合は、抗体はいつからでき始めるのですか?

「1回目の接種後では、抗体はすごく弱いです。感染予防をしないと、普通に罹ります。しっかり抗体ができるのは、2回目の接種から2週間と言われています。抗体ができると9割以上の感染を防ぐようになり、もし罹っても鼻かぜで終わる可能性が高くなります」

——抗体ができたら、いわゆる大勢での会食や飲酒も可能になりますか?

「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では、お互いワクチンを接種して2週間が経てば、人と接触していいと言っています。すごく密になっているとかでなければ、マスクなしの会食も大丈夫かなって思います」

——暑さが増してきていますが、接種したらマスクは外してもいいのでしょうか?

「ワクチンは、感染予防のひとつでしかないんです。手洗いやうがいはもちろん、“マスク着用”を加えることによって、予防できる可能性が高まります。みんながマスクをしていた方が、早く感染自体が収まるようになる」

——感染予防に加え、ワクチン接種が進めば、また元通りの生活に近づいていけるのですね。

「今、日本ではワクチン接種が想像を絶するスピードで加速しているので、秋くらいには6〜7割の人が接種して、“集団免疫”を獲得できるのではないかと考えています。接種できる年代の7割くらいまで進むと、“免疫の壁”というのができるので、じきに新型コロナウイルスが社会から消えていきます。そして、『もうマスクをしなくても大丈夫』という話が、年末か来年の初めには出るようになると思います。

 ただ、インドで流行っている『デルタ』と呼ばれる変異株が日本に入ってきていますので、その感染力によっては、集団免疫の獲得に必要な接種数が何割になるのかは、少し上がるのかもしれませんが。7割以上になれば、感染拡大することはないです。ワクチンを打たない限り、少なくとも数十年は自粛の生活が延々続きます。ワクチンは自分のためだけではなく、周りの人のためでもあるんです。みんなでワクチンを打てば、年末のクリスマス会や忘年会も夢ではない。来年にはゴールが見えてくるかもしれません」

知念実希人

小説家・医師。『天久鷹央の推理カルテ』シリーズなど、著書多数。『硝子の塔の殺人』(実業之日本社)が7月30日発売予定。Twitterではエビデンスに基づいたコロナワクチンの情報を呟いている。Twitter:@MIKITO_777

<取材・文/池守りぜね>

【池守りぜね】

出版社やWeb媒体の編集者を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。

ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。Twitter:@rizeneration

2021/7/8 15:54

この記事のみんなのコメント

7
  • 私の父がワクチン1回目接種後にみるみる具合が悪くなり死にました。コロナ陽性でした。つまり感染してて無症状だった訳です。報道でも全く触れて無い様ですが、感染してて無症状の場合の危険性をもっと話題にしても良いと思います。

  • グレイス

    7/12 14:01

    接種券きたけど高血圧だから医者に訊いてからにしようと思っている。毎年費用支払ってインフルエンザの予防接種受けている身からすると、感染拡大抑制の為とはいえ無料なのに受けない人の気がしれない。

  • 7割?今でも忘年会新年会は出来ますよ。イタリアの用に方向転換すれば良いこと。

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