「お腹にいるのは、誰との子なんだ…?」二股をかけられモヤモヤする男が、自宅でコッソリ始めたこと
ステイホームの時間が増えたいま、 東京にいる男女の生活は大きく変わった。
その中でも華やかな生活を送っていたインスタグラマーたちが、こぞって夢中になったのが「#おうち美容」。
外からも内からも自分と向き合い「美ごもり」生活を送った人々には、いったいどんな変化があったのだろうか?
1つのアイテムが、人生を変えることもある。
東京で「#美ごもり」生活を送る人々の姿を、覗いてみよう。
今回は中途半端な男 ・慶太(30)の話。
▶前回:自粛期間で7kgも“ふくよか”になった妻。夫とご無沙汰になり、あるリベンジ法を思いつくが…
何もかも中途半端でくすんでいた男・慶太(30)
「ごめん。他に好きな人ができたの」
彼女だった香里奈に振られ、約3ヶ月が過ぎた。だが僕は今、帰りの電車の中で携帯を見ながら震えている。
『兼ねてからお付き合いさせていただいていた彼と、結婚しました♡同時に、家族がもう一人増える予定です』
香里奈のInstagramには、大きなダイヤの指輪をはめた左手で、少しふっくらとしたお腹をさすっている写真が載っていた。
「え…。えっ?どういうこと?」
逆算してみる。どう考えても、僕と交際していた時期と被っている。むしろ、お腹の子は誰との子なのだろうか。
— 天秤にかけられていたってこと?
交際期間、約2年。僕のほうは結婚も考えていた。けれども同じ気持ちだと思っていた彼女は、まったく違う景色を見ていたようだ。
最近は恋愛も、仕事もなんだかうまくいっていない。今月で30歳になるのに、何もかも中途半端な自分が本当に嫌になった。
仕事も恋愛も過渡期のはずなのに、中途半端な自分に悩む30歳…
30歳独身。男だって、意外に寂しい
同期は続々と結婚し、学生時代の仲間も半分以上結婚。子持ち家庭も増えた。
「慶太はいいよな、自由で」とか言われる反面「結婚はどうすんの?」と聞かれるたびに、焦る自分がいる。
今の仕事も、ここ1年で転職を考え始めた。
コロナになってリモートワークが増え、働き方が変わり、自分はもっとできるような気がしてきたのだ。
ベンチャーへ行って挑戦するのもいいし、独立してフリーランスでやっていくのもいい。もしくは、もっとやりがいのある会社に転職するのもいい。
ただ、具体的に何をしたいのか明確になっているわけでもない。今勤めている大企業の安定感を失うことに、不安もある。
「中途半端だよなぁ、俺って。突き抜けられないというか、何というか…」
そんなことを思っているとつい手が動き、気づけばまた元カノのSNSを見てしまっている自分がいる。
元カノの隣には、男の僕から見ても肌が綺麗なことがわかるような、爽やかなイケメンが写っていた。
「見るんじゃなかった…」
慌ててスマホから目を離し、顔を上げて窓の外を眺めてみる。だがその瞬間、電車の窓に映った自分を見て愕然としてしまった。
「あれ?俺ってこんな顔だったっけ…」
どちらかと言うと、学生時代から「カッコイイ」と言われてきた。でも顔の造形がハッキリしているため、目の下などが余計にくぼんで見える。
それに、肌が全体的にくすんでいたのだ。
ピッカピカの綺麗な肌をした、元カノの隣にいる男とは全然違う。今まで見ないフリをしてきただけに、急にツケが回ってきたような気がした。
その晩、焦った僕は帰宅してすぐマッチングアプリに登録した。「さらに老け込んでモテなくなる前に、とにかく出会わなければ…」と思ったのだ。
そしてさっそくマッチングした子と会うことになり、僕なりに気合を入れて挑んだつもりだった。
「初めまして、英玲奈です」
ふわっとして可愛らしい雰囲気の彼女。全体的に美しいのだが、特に肌が驚くほど綺麗で、僕は思わず凝視してしまう。
「英玲奈さん、たぶん僕と同い年ですよね?敬語はナシということで…」
だが英玲奈から飛び出してきた一言で、現実を思い知らされたのだ。
「え?同じ歳なんですか!?」
たぶん、その先にあったのは「見えな〜い…。自分より上かと思った」という言葉だろう。
トドメを刺す前に言葉を飲み込んでくれた彼女の優しさに感謝しつつも、意外に傷ついた。
これまで何度も年上には見られてきたが、自分でも肌の劣化に気がついた直後だったので、傷口に塩を塗られたボクサーのような気分にもなる。
「あ、ゴメンなさい!大人っぽかったので…」
慌ててフォローに回ってくれる英玲奈に対し、適当に会話を変えようとした、そのときだった。
「失礼ですけど…。慶太さん、日焼け止めって使ったことありますか?あとクリーム、塗っていますか?」
「え?」
英玲奈の言葉が、この後の僕の人生を大きく変えたのだ。
男だって、綺麗になるべし!磨けば光る男のスキンケアとは?
そこから英玲奈は僕の肌をじっと見て、今の状態をわかりやすく説明してくれた。
要約すると、ゴルフやサッカーなどのアウトドアで日焼けのダメージが蓄積した結果、肌の老化が進行し、年齢よりも上に見えてしまっているらしい(シミ、シワが濃くなっているから)。
さらに学生時代、ニキビに悩まされていたことを話す。
すると毛穴が開きがちな僕は、加齢(及び紫外線)によるタルミで、余計に毛穴が目立つようになったのかも、とのことだった。
「す、すごい…。英玲奈さん、ありがとうございます」
「実は昔、美容部員をしていて。人の肌とか気になっちゃうんです。迷惑な話だったらすみません」
「いえ、迷惑だなんて。むしろありがたいです」
そして親切な英玲奈は、僕の失恋話までじっくり聞いてくれたのだ。
「ではカッコよくなって、その元カノを見返しましょう!!女性も化粧で変わりますが、男性も変われます。むしろ、今まで何も手入れをしてこなかった男性のほうが、劇的に変わる場合もあります」
僕は彼女の話に、真面目な顔で頷く。
「まずは、洗顔からです。そして外出の際には、必ず日焼け止めを塗ってください。最近はメンズ用の日焼け止めもたくさん売ってますから、自分の肌に合ったものを選んでくださいね」
「わかりました!」
結局、英玲奈とは恋愛の話をほとんどしないまま、解散となってしまった。
…だが、僕のなかで何かが弾けた。解散したその足でメンズコスメがそろう百貨店へと出向き、化粧水とクリーム、そして日焼け止めを購入したのだ。
あれから3ヶ月。夜は洗顔後に、化粧水とクリームを塗る習慣をつけた。
そして日中は日焼け止めを塗るようにしたところ、以前はゴワゴワとしていた肌がふっくらと、滑らかになってきたのだ。
その滑らかさは、まさに元カノの写真に写っていた男性のようである。
さらに肌が綺麗になると、会社でも女性社員から話しかけられることが増えた。食事会へ行けば、解散後に相手から連絡が来る確率もグンと上がった。
「こんなに変わるんだ…」
自分が一番驚いた。どうしようもできないと諦めて、放り投げていた肌のケア。だが少し丁寧に行うだけで、肌は応えてくれた。
そしてそれは、毎日の生活でも同じだった。夢も目標もないまま中途半端に仕事をしていたけれど、日々丁寧に業務へと向き合っているうちに、やりたいことが明確になってきたのだ。
ついには、半年以内に転職しようというゴールができた。
◆
そんな変わった自分を見せたくて、僕はもう一度英玲奈に連絡をしてみた。彼女とはあれ以来会っていなかったが、今なら堂々と顔を上げて会話ができる気がする。
「英玲奈さん、こっちです!」
「え?慶太さん!?」
待ち合わせ場所にやってきた彼女が、驚いたような顔をしている。
「あれ?前と全然違う!…明るくなりましたね。お肌も、表情も」
「そうですね。あと、僕チャレンジしようと思います。何も動いていないうちから、諦めることはもうやめます。なので英玲奈さん、今後も僕とデートしていただけないでしょうか?」
結果は、後からついてくる。失敗することもあるかもしれない。大成功することもあるだろう。
だが動き出さない限り、何も始まらない。
たった一度の人生、やった者勝ちだと思うから。
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“あの部分”を変えるだけで、女は輝き出す!?