声の出演に神木隆之介、中村倫也らの抜擢理由を映画『100日間生きたワニ』ふくだみゆき監督が語る

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Twitterで話題になった「100日後に死ぬワニ」が新しいキャラクターとストーリーを加え、映画『100日間生きたワニ』として公開されます。夫である上田慎一郎監督とともに作品を手掛けたふくだみゆき監督に声の出演に神木隆之介、中村倫也らを抜擢した理由や演出などについて、お話をうかがいました。

<作品概要>

原作は漫画家・ イラストレーターのきくちゆうきが2019年12月12日から2020年3月20日までの100日間、毎日投稿した何気ないワニの日常を綴った4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」。いいねの数が214万という国内Twitterの歴代最多数を記録し、エンゲージメントは2億を超えた。

監督・脚本は『カメラを止めるな!』監督・上田慎一郎とアニメーション監督としても活躍するふくだみゆき夫妻。原作に込められたメッセージに強く共感し、映画化を熱望した脚本開発中にコロナ禍に直面し、劇的に変わってしまった日常と価値観の変化に戸惑いながらも、その気持ちを登場人物たちに重ね、新たに構成を練り直し、100日間のワニの日常と、そこから100日後の大切なものを失った仲間たちの姿を描いた。

コンテ・アニメーションディレクトに「宇宙戦艦ヤマト」をはじめ歴史的名作を手掛けてきた日本のレジェンドアニメーター・湖川友謙。音楽をJ-POPを牽引する巨匠・亀田誠治。いきものがかりが主題歌を書きおろした。

主人公ワニの声を神木隆之介、親友のネズミを中村倫也、同じく親友のモグラを木村昴、ワニが恋するセンパイを新木優子、そして映画オリジナルキャラクターのカエルを山田裕貴が担当した。

<あらすじ>

桜が満開の3月、みんなで約束したお花見の場に、ワニの姿はない。親友のネズミが心配してバイクで迎えに行く途中、満開の桜を撮影した写真を仲間たちに送るが、それを受け取ったワニのスマホは、画面が割れた状態で道に転がっていた。

100日前―――入院中のネズミを見舞い、大好きな一発ギャグで笑わせるワニ。毎年みかんを送ってくれる母親との電話。バイト先のセンパイとの淡い恋。仲間と行くラーメン屋。大好きなゲーム、バスケ、映画...ワニの毎日は平凡でありふれたものだった。

お花見から100日後――桜の木には緑が茂り、あの時舞い落ちていた花びらは雨に変わっていた。仲間たちはそれぞれワニとの思い出と向き合えず、お互いに連絡を取ることも減っていた。そんな中、みんなの暮らす街に新たな出会いが訪れる。引っ越ししてきたばかりで積極的なカエルに、ネズミたちは戸惑いを隠せず...

変わってしまった日常、続いていく毎日。これは、誰にでも起こりうる物語。

多くを語らず、余白を残す作品の間合いが映画的魅力になる

――原作の「100日後に死ぬワニ」はきくちゆうきさんがTwitterに100日間投稿された人気投稿です。映画化することになったきっかけからお聞かせください。

私と上田(監督)は連載開始2日めくらいからTwitter上で作品を見ていました。うちの社長が初日に見つけて、会社のグループLINEでみんなに教えてくれたのです。

その頃、東宝さんとやりとりをしていた上田(監督)がこの作品を映画化したいと企画書を出しました。多くを語らずに余白を残してみんなに考えてもらうというこの作品の間合いが映画的な魅力になると考えたのです。上田(監督)はもともと実写しかやったことがありませんから、アニメーションという発想はありませんでした。

ところが東宝さんから私と上田(監督)でアニメーションとして監督をしませんかとお返事をいただいたのです。上田(監督)が企画書を出した段階では、まさか自分も監督として関わることになるとは思っていなかったので、驚きましたね。

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

――これまではお互いの作品にサポートする形で参加されてきましたが、本作では監督という対等の立場です。これまでと何か違いはありましたか。

今までは決定権がどちらかにある状態でしたが、今回は2人で全部を決めなくてはいけません。これまでの作品と比べて話し合う時間がぐっと増えました。私としては1人で監督するよりも心強かったですね。また、お互いの得手不得手が分かってるので、上田(監督)が得意な部分は上田(監督)を信じ、反対に私が得意なところは私を信じてくれました。バランスよく進められました。

神木隆之介さんの持つピュアさ、誠実さに魅力を感じた

――主人公のワニ役を神木隆之介さんが担当されています。キャスティングの決め手についてお聞かせください。

まず、ワニくんを誰にするかを決めようということになり、上田(監督)と私がいいと思う人をそれぞれ紙に書いて見せ合ったのです。すると2人とも神木隆之介さんの名前を書いていました。神木さんの持つピュアさ、誠実さを魅力に感じていて、主人公感と亡くしたときの喪失感をうまく出してくれるのではないかと思ったのです。

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

――ワニの親友であるネズミ役を担当された中村倫也さんはいかがですか。

ネズミくんは神木さんと実際に仲のいい人にしたいと思い、東宝の方に神木さんと仲のいい方を教えていただきました。その中に中村倫也さんの名前があったのです。中村さんはニュートラルな方で、いろんな役をされています。自分の色を出しつつ何色にも染まる塩梅がいい。ネズミはクールで俯瞰しているけれど、仲間内ではちょっとお調子者で、ふざけるところもあります。中村さんならうまくネズミに染まってくれると思ってお願いしました。

――カエルの声は山田裕貴さんですね。

カエルは映画オリジナルキャラクターで、この作品にとって異物です。しかし、浮いているけれど、憎み切れない部分もある。

山田裕貴さんご本人はカッコいいのですが、以前見たバラエティ番組で一生懸命話しているのに空回りしてワタワタした感じになったときがあり、そこがすごくチャーミングだったのです。その感じがまさしくカエルでした。

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

――神木さんや中村さん、山田さんにお会いしたとき、イメージ通りの方々でしたか。

神木さんをテレビなどで見ていたときは陽気な方なのかと思っていました。しかし、実際にお目にかかってみると、とても腰が低く、謙虚で丁寧。しかもこんなに有名な方なのに、とても控え目なんです。空気が読めて、気を遣う人なんだなという印象を受けました。

中村さんは年齢的にいちばん上。みんなを盛り上げるお兄さん的な存在として現場を引っ張ってくれました。

山田さんは第一声からカエルという感じがありました。カエルのキャラクターによってこの作品が決まると考えていたので、これなら大丈夫と思えました。ありがたかったですね。ただ、山田さんご本人はすごく心配していらしたと後からマネージャーさんからうかがいました。

バキッとした演技ではなく、実写に近い感じで声をあてる

――アフレコの現場ではいかがでしたか。

今回は声優さんがやるようなバキッとした演技ではなく、実写に近い感じで声をあててもらいました。神木さんはそこの塩梅が難しかったとおっしゃっていましたね。しかし、こちらがお願いしたことを理解するのが早くて、しかも的確に表現してくださいました。

――神木さんには具体的にはどのような演出をされましたか。

ワニとネズミのやり取りでは友だち感を出したかったので、例えば、何かを尋ねるときに「で、何?」とくっきりセリフをいうよりも、「だから、なに?」とちょっと力を抜いた感じで言ってもらいました。

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

――中村さんはいかがでしたか。

中村さんは疑問に思ったことはその場で聞いてくださったので、ディスカッション的なやり取りを何度かしました。

この作品は普通のアニメーションと比べると間がたくさんあります。しかし、演じている方には実写よりはタイトに感じる部分があったと思います。“このセリフを言ったあと、次のセリフではちょっと気持ちを切り替えたい。実写だったらたっぷり時間を取るけれど、この作品ではどのくらいのテンポ感でするか”といったことを相談しながらやっていった記憶があります。

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

――カエルは映画オリジナルキャラクターですが、どのように演出されましたか。

山田さんがシナリオを読んだ解釈とこちらが期待していたものにずれがなかったので、演出をするというよりも委ねる部分が多かったですね。

カエルがネズミに「ため口でいい?」とぐいぐい話しかけるシーンで「仲良くしてくださいよ~ あっ、敬語になっちゃった。あはははは」というのは山田さんのアドリブでしたが、まるっと使わせていただきました。

匿名性のあるキャラクターだからこそ、見ている人が自分を乗せやすい

――この作品はアニメーションですが、太陽やバイクのライトでゴーストが発生したり、レンズフレアで背景がぼんやり白っぽくなっていたりすることをきちんと表現されていますね。映画館でキャラクターたちが座席に座って見ているシーンではスクリーンの光の動きが後ろの壁に反射して、映画が上映されているのがわかり、画作りの細やかさを感じました。

アニメーションはセル画を描いてから撮影という処理があり、そのときに光の感じを入れます。撮影をする会社に上田(監督)と2人で通って、もう少し強くとか、もうちょっと黄色みがほしいとか、カットごとにその場で細かく指示を出し、調整してもらいながら入れました。今回は演技が実写に近く、生っぽいので、上から入る光で作品の空気感を作りたかったのです。

小高い山の朝日のシーンはレンズフレアやゴーストがふんだんに入っています。ここはこの作品において大事なやり取りがあり、象徴的なシーンでもあるので、注目してご覧ください。
また、映画館のシーンはキャラクターたちがじっとしている中で光が動くことで映画を見ているんだなと伝わるように入れました。キャラクター自体が動くタイプの作品ではありませんが、動かないからこそ1つ1つの演出が際立ちます。

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

――公開を前に、今、どんなことを思っていらっしゃいますか。

話題になった人気原作に新しいキャラクターとストーリーを加えて映画にする。原作物は私も上田(監督)も初めてですし、制作会社さんにお願いしてアニメーションを作るのも初めてだったので、ずっと不安でした。作品が出来上がっても、みなさんがどういう反応をしてくださるのかが心配で、まだ客観的には見られません。しかし試写をご覧になった方から「よかったよ」という声をいただき、自分たちがやりたかったことは伝わっているのではないかと思えてきました。

この作品を上田(監督)は実写でやろうとしましたが、アニメーションにして結果的によかったと思っています。人間が実際に演じるよりも匿名性のあるキャラクターだからこそ、見ている人が自分を乗せやすくなったのではないかと思います。これから全国的に公開されたらどんなコメントが上がってくるのか、どきどきしています。

――これから作品をご覧になる方にひとことお願いいたします。

この作品は自分たちの世界線と地続きな作品なので、自分の生活や経験にいろいろと返りがあると思います。小さなお子さんにはまだ分からない部分があるかもしれませんが、いつか大人になったら「あれってこういうことだったのかな」と振り返っていただけるのではないかと思います。
ご覧になる方によって受けとめ方が違うと思いますが、ぜひご家族やお友だちみなさんでご覧いただき、“自分はこう思う。あなたはどう?”などとみんなで語り合っていただけるとうれしいです。


(取材・文:ほりきみき)

<プロフィール>

ふくだみゆき監督

87年生まれ、群馬県出身。
13年に初の監督作となる短編実写映画『マシュマロ×ぺいん』を制作、国内で複数の映画賞を受賞。15年制作のアニメーション映画『こんぷれっくす×コンプレックス』は、毎日映画コンクールアニメーション賞を受賞。歴史ある同コンクールで、自主制作アニメーション作品として初の受賞を果たし注目を集める。

『100日間生きたワニ』

(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会

声の出演:神木隆之介、中村倫也、木村昴、新木優子、ファーストサマーウイカ、清水くるみ、Kaito、 池谷のぶえ、杉田智和、山田裕貴
原作:きくちゆうき「100日後に死ぬワニ」 
監督・脚本:上田慎一郎、ふくだみゆき
コンテ・アニメーションディレクト:湖川友謙
音楽:亀田誠治
主題歌: いきものがかり「TSUZUKU」(Sony Music Labels)
(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会
2021年7月9日全国東宝系にてロードショー

映画『100日間生きたワニ』公式サイト

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