ヤリスの「隠れた名機」はハイブリッドでもGRでもない

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―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆6MTのヤリスはカーマニアの棺桶にピッタリ!

 トヨタ・ヤリスといえば、ちょっと前まで「欧州カー・オブ・ザ・イヤー2021を受賞したよ!」というTVCMがバンバン流れていたことで、クルマ好き以外もご存じでしょう。そんなヤリスシリーズが今、日本で売れまくっています!

 今回はそんな人気軍団の隠れたスターをピックアップ。令和の上がりのクルマは、ベンツではなくヤリスかも!?

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
茂呂幸正=写真 Photographs by Moro Yukimasa

◆狭いのにナンバーワン。ヤリス売れまくってます

 トヨタ・ヤリスが売れまくっている。今年に入ってからずっーと普通車(軽を除く)月間販売台数ナンバーワンに輝いている。

 実は、自販連が発表するヤリスの販売台数には、SUVのヤリスクロスなども含まれているので、ヤリスだけだと僅差で2位(1位はトヨタ・ルーミー)なんだけど、それでも、まさかヤリスがこんなに売れるとは思っていなかった。

 なぜならヤリスは、後席も荷室もかなり狭いから!日本では、狭いクルマは売れないのが絶対的な常識。なのにヤリスだけは売れている。なぜなのか?トヨタへの絶対的な信頼なのか?それともコロナで孫が実家に帰らなくなって、おじいちゃんが孫の帰省に備えてミニバンを買わなくなったからなのか?いまだに謎だ。

◆カーマニアも唸る、ヤリスの実力

 が、カーマニア的に見ても、ヤリスは間違いなく凄いクルマだ。

 ヤリスハイブリッドは、ビックリするほど加速がよくて、首都高ならポルシェだって追い回せる。それで燃費はヘタすりゃリッター40㎞を超えるのだから、文武両道の小スーパーカーだ。

 一方GRヤリスは、272馬力のスーパーエンジンを積んだ、超本気ラリーウェポン。この2つのグレードは、カーマニアなら誰もが一目置くスタープレーヤーである。

 ヤリスの前身3代目ヴィッツは一つもいいところがないクルマだったのに、まさかの突然変異。ヤリス、スゲエ!

◆ヤリスならMTが新車で買える!

 ところが、ヤリスのスタープレーヤーは、それだけではないという。

 スバリストでカーマニアのマリオ高野から「ヤリスX1・5の6MTモデルがすさまじく気持ちイイであります!」との報告が入った。

 近年、日本国内のMT車の販売割合は2%程度。あまりにも売れないので、多くのモデルがATだけになった。ところがヤリスは、超武闘派のGRヤリスだけでなく、フツーのガソリンモデルにも、ちゃんとMTを用意している。それが凄まじく気持ちイイというのだ。私はまだそれに乗ったことがなかった!不覚!ぜひ試乗せねば!

◆6MTのヤリスは「ちょうどいい」乗り心地

 ソイツはあいかわらずの毒虫顔&ダンゴムシ体形だった。このデザイン、やっぱりどうにも好きになれない。内装もあいかわらず安っぽい。

 しかし、コイツで夜の首都高に走りに行って、目頭が熱くなった。

 なんて素晴らしいクルマだろう!1.5リッター3気筒の120馬力エンジンは全域で心地よく回り、実にちょうどいい加速をしてくれる。今日日、速すぎるクルマはどうにも持て余すが、本当にちょうどいい。それを6MTで操るのは、ウクレレの名器を弾くようなカイカン!

◆ハンドリングは正確、燃費も十分

 ハンドリングは適度に正確かつシャープで、見事に思い通りに曲がってくれる。かつてのヴィッツとは月とスッポン、とにかく走ることが楽しい。燃費リッター20㎞は無理だが、17㎞程度は行く。十分良好だ。

 ひょっとしてこれは、男の終着駅かもしれない……。

◆カーマニアの終活は、ヤリスとともに

 カーマニアとして生まれ、これまでフェラーリ13台をはじめ、合計51台のクルマを買ってきたが、いよいよ本格的な高齢者となったとき、どんなクルマが理想かと言えば、こういう軽くて小さくて中身のしっかりした、左足の筋力の負担にもならない、クラッチの軽いMT車ではないのか。

 私はランボルギーニ・カウンタックも所有しているが、ヤリスのクラッチはその10分の1くらいの重さしかない(推測)。MT車なら、ペダル踏み間違いによる暴走事故も起こさないで済む。しかも自動ブレーキやACCがついている。それで約160マンエン!スバラシイ!

 こういうクルマに乗れるところまで乗って、乗れなくなったら免許を返納するのが、理想的なカーライフ終いではないか。これはトヨタが中高年カーマニアに与えてくれた、最高の葬送曲ではないか!

 でもやっぱり、この毒虫顔とダンゴムシ体形はいまだにダメ。もうちょっと待って慣れたら買います。

◆【結論!】
この乗り味の良さは、毎日食っても飽きない卵かけごはんとでも言おうか。トヨタ様は、カーマニアの死に水まで取ってくれるらしい。まさにゆりかごから墓場までトヨタ。涙が出る

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

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