EURO開会式のパフォーマンスも話題! “世界的DJ”マーティン・ギャリックス手掛ける公式ソングの魅力

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 第16回目となるUEFA EURO 2020は、新型コロナウイルス感染症の流行により1年の開催延期となったが、6月11日の開幕から連日熱戦が繰り広げられている。そんな大会をよりエモーショナルに盛り立てているのが、現代のダンス・ミュージック界を牽引するマーティン・ギャリックスが手掛けた公式テーマソング『ウィー・アー・ザ・ピープル feat. ボノ&ジ・エッジ』だ。スポーツに音楽は欠かせないものだが、特に今回のような延期を経て、誰もが心待ちにしていた世界的な大会で使用されているこの楽曲が、なぜ人々の高揚感を煽り、心に響くのか。マーティン・ギャリックスについて、そして楽曲の魅力について紐解いていきたい。

■マーティン・ギャリックスとは?




 マーティン・ギャリックスはオランダ出身で、現在24歳のDJ/サウンドプロデューサー。幼い頃から音楽には興味を持っていたものの、決定打となったのは2004年の8歳の時に観たアテネオリンピックの開会式だ。そこで同郷オランダの伝説的DJであるティエストのパフォーマンスに衝撃を受けてDJになることを決意した。この時点でマーティンとスポーツとの密接な歴史が始まっていたと考えるとテーマソング起用はさらに感慨深く思える。

 そこからの快進撃は著しく、16歳でオランダの大手ダンス・レーベル「スピニン・レコーズ」と契約し、翌2013年に発表した楽曲『アニマルズ』が全英チャート&米ビルボード・ダンス・クラブ・ソングス・チャートで1位を獲得。以降、世界的なEDMムーヴメントとリンクし、数々のヒット曲を生み出す。そして世界中を飛び回り大規模なフェスやライブに出演。各国のオーディエンスを魅了し続け、2016年には世界で最も権威あるDJ専門誌『DJ MAG』による、その年の人気DJを決定するランキング「DJ MAG TOP 100 DJs」において、史上最年少となる19歳で初の1位に輝く。

 その勢いは止まる事を知らず2017年、18年とDJ MAGランキングの第1位を3年連続で獲得する快挙を果たし、アメリカ誌『フォーブス』の「世界DJ長者番付トップ10」にも仲間入り。まさにダンス・ミュージック界のトップを走り続ける存在となった。そして2018年2月には、自らがDJを志すキッカケにもなったティエストと同じ舞台となる平昌オリンピック閉会式にサプライズ出演。DJがオリンピックでパフォーマンスをすることはティエスト、カイゴに続く史上3人目として、ここでも自分の夢を叶えると同時にスポーツとの強い結びつきを感じさせてくれた。

 またここ日本でも根強い人気を誇り、2016年にお台場で開催された世界的フェス「ULTRA JAPAN」のヘッドライナー出演を経て、2019年の「フジロックフェスティバル」にも出演。フジロックにEDM系のDJのブッキング自体が珍しく、さらにヘッドライナーのシーアの前にグリーン・ステージでの登場というデビュー戦にしてビッグステージでの大抜擢。またこの年は前代未聞の悪天候で、さらにマーティンは海外ギグで片足を骨折しているという状況の中、ケガを全く感じさせない圧巻のパフォーマンスで様々なジャンルのファンが混在するフジロックの会場を多いに盛り上げ、大きな話題を呼んだ。

■UEFA EURO 2020公式ソング『ウィー・アー・ザ・ピープル feat. ボノ&ジ・エッジ』の魅力とは?



 若くして華々しいキャリアを歩んできたマーティンにとっても、この楽曲は大きな転機となったであろう。初めて公式ソングの依頼された時は耳を疑い、やがてその感情はものすごい緊張感と同時にワクワクした気持ちに変わったとインタビューでも語っている。しかも今回は伝説のバンド「U2」のヴォーカルとギターであるボノとジ・エッジとの超豪華コラボレーションが実現。過去にデュア・リパ、アッシャーなど多数の有名アーティストとの共演歴を誇るマーティンだが、ここまでのビッグネームは彼にとっても初めてのことだ。

 3年前に同曲の制作に取り掛かり始めたころからイントロのギターにジ・エッジの音、ヴォーカルにはボノの声が即座に思い浮かんだと語っているが、当時は絶対に無理だろうとオファー候補にも入れていなかったそうだ。だが思いきって声をかけたところ、まさかの快諾。実際のスタジオ作業でもボノは歌への愛情が深く、何度も素晴らしいテイクを録ってくれ、ジ・エッジもマーティンがメインのメロディで行き詰まっているとフックに手を貸してくれたりと、2人が乗っただけではない、全員が楽曲に貢献することで三者の魅力と特長が見事に融合された本当の意味でのコラボレーションが完成したと喜びを語っている。

 マーティン自身、大のサッカーファンではあるが、楽曲制作のために試合をいくつも観て、音楽的な高揚感を意識しただけでなく、インタビューでは「今回の大会が開催されるということだけでも、すでにひとつの勝利だ。不安を感じるような1年間の後、たくさんの国々の間で開催され、多くの人々を幸せな気持ちにすることができ、また一緒に集めることもできる。人と繋がることや、皆でひとつになることをスポーツ、そして願わくばこの曲が一役買ってくれれば嬉しいよ」と語る通り、サッカーから得られる感情、皆で団結する感覚、人々の心がひとつになるなど精神的な面でも大きなインスピレーションを得ている。

 その結果、フックとなる歌詞『We are the people we’ve been waiting for(私たちこそ世界が待ち望んだ人々だ)』に象徴されるように、この1年で世界が置かれた状況からの解放ともリンクし、より我々の感情に訴えかけてくるものがあるのだ。またU2の作品とも共通する『Out of the ruins of hate and war(ヘイトや戦争からの脱却)』といった新型コロナウイルスだけではなく、現在もなお世界にはびこる問題をも包括し、様々な境界線を越えて、世界中の人々に希望と一体感を感じさせる、公式ソングを越えた世界共通のグローバル・アンセムに仕上がっている。

■感動のミュージック・ビデオと前代未聞の開会式バーチャル・パフォーマンスにも注目!



 またこの楽曲をさらに魅力的にしているのがミュージックビデオの存在だろう。ヨーロッパ各地の老若男女、そして様々な人種の人々がサッカー観戦をしたり、プレイする姿が描かれており、元アイルランド代表のサッカー選手であるジェイソン・マカティアもカメオ出演。そしてボノが夕日の中で天を仰ぐように歌い、マーティンが無邪気な表情で少年のようにサッカープレイに興じる姿、ラストにはマーティン、ボノ、ジ・エッジが世代を越えて笑顔で肩を組み合い空を眺めるシークエンスが映し出される。楽曲の制作自体はコロナ以前だったらしいが、偶然にもコロナ禍が明けつつあるヨーロッパの空気とリンクし、「今だからこそ」よりいっそうアンセミックなサビを感動的に響かせる要素が歌詞だけでなく映像面からも感じとられる一体感のある傑作となっている。



 そして6月11日に行われた開幕式にて披露されたのが、この楽曲のバーチャルパフォーマンス映像だ。マーティンにとってギグやパフォーマンスは、皆と一つになれる瞬間やエネルギーがサッカーと似ていると語っており、新型コロナウイルスの影響により生パフォーマンスは叶わなかったものの、開幕戦が行われたローマのスタディオ・オリンピコとロンドンのスタジオで事前収録され、最新の3D技術を駆使して完成したその映像は、CGで完全再現された満員のスタジアムで、マーティンがキーボード、ジ・エッジがギターを、そしてボノの歌う姿と参加国の国旗や試合映像が巨大な光のホログラムとして映し出され、生ライブとも違った新しい形での楽曲の一体感や高揚感を伝える大会の幕開けにふさわしいパフォーマンスとなった。



 今大会でマーティンは公式ソングのみならず、大会中の入場音楽や、放送中の音楽など、全ての音楽プロデュースを担当。世界規模のスポーツイベントに参加できたこと、世界中にこの楽曲をシェアできることが、スポーツの祭典をキッカケにキャリアを目指した彼にとってどれだけの意味があったのか、またサッカーと音楽が人々を結ぶパワーがどれだけ力を持つものなのか、改めてマーティンを通じて今大会とこの楽曲はその意義を感じさせてくれたのではないだろうか。

text by TJO

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