寺島しのぶ「女優は不思議な職業。映画は公共を使った思い出アルバム」

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 「もしも、永遠に生きられるとしたら?」

 常に素晴らしい演技で魅了する女優・寺島しのぶさんが、「永遠の命」が叶った未来を描く映画『Arc アーク』に出演。

 芳根京子さん演じる主人公のリナが出会い、人生の師とする女性エマを演じています。そんな寺島さんに「永遠の命」について、また、作品として未来に残り続ける女優という仕事に関して聞きました。

◆オファーを受けたとき、すべてが分からなかった

――難しいテーマを含んだ作品ですが、オファーを受けたときは?

寺島しのぶさん(以下、寺島)すべてが分かりませんでした。でも分からないままでもいいのかなと思って。事前に石川慶監督にお会いしたのですが、頭にあることをば~っと話してくださって。『これ、私分からなくていいやつだな』と(笑)。監督の頭の中にしっかりしたものがあるのなら、それでいいんじゃないか。私はそこでどう生きるのか、逐一相談してやっていけばいいのだろうと思いました」

――エマ役、すごくぴったりでかっこよかったです。登場人物のなかで、気持ちとして寄り添いやすいキャラクターでもありました。

寺島「ありがとうございます。彼女には愛している人がいて、その人と寄り添うことが最も重要なこと。エマはある決断をしますが、彼女は彼女で生き方を全うできたと思うし、浄化されたんじゃないかと思います」

◆100歳までは生きたくない

――物語では世の流れが「永遠の命」を選択するものになっていきます。寺島さん自身は「永遠の命」についてどう感じますか?

寺島「今現実でも人生100年時代とか言いますよね。でも100年も生きたいかな?と自分では思ってしまいます。少し前まで侍だったら50歳で人生を終えていた国ですよ。それがどんどん長寿になって90歳でも長いのに、これからどうなっていくのか。食べ物とか生活スタイルとか、強力なサプリとか、医療の発達とか。まあ長生きしますよね。でも楽しく長生きできる分にはいいかもしれないけれど、生き地獄的なところで長く生きるのはイヤですし、そもそも100歳までは生きたくないです」

――そうですね。でも子どもがいる人は、寺島さんもそうですが、長く生きたいと思ったりしませんか?

寺島「子どもだって親が長生きしすぎるのもイヤじゃないですか? いなくなって分かるものもあるし、もちろん適度に長生きはしてあげたいと思うけど、それ以上のものというのは余計なんじゃないかと思います。個人的には。だから子どもが大人になるまでとか、ある程度、ここまでというのを決めておいて、あとは自己選択できるシステムがあるといいかな。でも、そうした終わりの選択というのも、そう遠くない未来にできるようになる気もしますよね」

◆消えてこそ死んだことになると思う

――エマは、“プラスティネーション”という遺体を生前の姿のまま保存する施術の第一人者です。“プラスティネーション”はどう思いますか?

寺島「私は残しておきたくないな。やっぱりちゃんとお骨にしてあげて、いったん終わりにしてあげるほうがいいんじゃないかなと思います。自分が残されるのもイヤだし。消えてこそ死んだことになるわけだからと、私は思います

 でも本編の中でもいろんな人にインタビューをする場面が出てきますが、さまざまな考えの人がいるのだろうとも思います。プラスティネーションって、もう実際にあるらしくて、知り合いの美容クリニックの先生に『今こういう役をやってるんです』とお話したら、『これからそれ、流行ってくるよ』と言ってました」

◆女優は作品という公共の思い出アルバムが残る

――ある年代のまま先に残るということに関しては、女優というお仕事も、ひとつひとつの作品が、ずっと先に残りますね。

寺島「そうですね。『このときは28歳だったな。おっぱいもぷりんぷりんしてるな』『このときは子どもが生まれたあとでおっぱいが爆乳だったな』とかね(笑)。演じている側からすると、公共を使った思い出アルバムでもありますよね。不思議な職業だなと思います」

◆極限状態から生まれた思い出深い1本

――(笑)。「このときを収めてもらってよかった」と特にしみじみ思う作品はありますか?

寺島「作品が残ることはどの作品についても嬉しいですが、やっぱり苦しい思いをしたときのほうが個人的に残りますね。『キャタピラー』とか。あれは本当にヘビーでした。1日中、ヘビーなシーンを暗幕の中で撮り続けてましたから。孤独だったし、よく分からないじんましんや血尿が出たりして。この状態で出るパフォーマンスはどんなものがあるのだろうと、途中からは変なハイ状態になってきちゃったりして。あの作品の残り方は色々と考えます」

――そこまでの状況だったからこそ残せたものも。

寺島「ありますね。極限状態から出たものをすべてぶつけましたから。それだけ魂を込めた作品が、運よく海外の人の目に留まって、評価される(ベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞)ご褒美がついてきたから、それは報われましたね」

◆自分で満足できるように走り続けたい

――これまで女優として素晴らしいキャリアを歩まれてきて、プライベートではご家族も持たれています。自分らしくいるために、譲れないことはありますか?

寺島「やらなきゃいけないことは全部やりたい性分ですね。なるべく削らず」

――走りすぎたとき、ブレーキをかけてくれる人がいるから走れるのでしょうか。

寺島「それは旦那ですね。『君はいつも風のように部屋のなかを走り回ったり、いろんなことを考えたり、ずっと動いてないといけないタイプだけど、そのうち壊れるよ』と言われてます。実際、去年壊れましたし」

――え! 大丈夫ですか?

寺島「どうしても人任せにできなくて(苦笑)。ちょっと元気になるとまた走ろうとしちゃうので、人間ってやっぱり変わらないんだと思います。まあそこが変わると私自身でなくなるし。でも去年体を壊したことで、自分のメンテナンスの時間を作ることを、意識するようにはなりました」

――そのパワフルさで100年はキツイかもしれませんね。

寺島「そうなんです。100歳まで今の感じを続けるのはなくていいかなと。ただ、自分で満足できるように走り続けたいとは思っています」

(C) 2021映画『Arc』製作委員会

<撮影・文/望月ふみ>

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi

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