モデル牧野紗弥が気づいた“妻の苦しさ”の正体。ジェンダー問題だったんだ!

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 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

 夫婦共働きがすっかり珍しくなくなった昨今ですが、共働きをしながらも家事育児の負担が妻側に偏っていることはよくあります。他にも収入に差があったり、何をするにも「夫が主」だったりと、夫婦の関係性がどこか平等でないと感じている夫婦もいるかもしれません。

 こうした夫婦間の問題は、その家ごとに最適な答えや関係性が異なるものです。雑誌『VERY』や『Domani』などで活躍するモデルの牧野紗弥(まきの・さや)さんは、自分たちらしい夫婦の形として、書類の上での“離婚”をして「夫婦別姓」を選択しようとしています
 3人のお子さんを育てながら、夫や家族とともに“平等な夫婦のあり方”を追求し続ける牧野さん。前回記事では、結婚してから抱え続けた違和感に気づくまでを話してもらいました。

 今回は、じつは思い込みもあった「妻の役割」から解放され、自分たちらしい選択=夫婦別姓を見つけて家族に提案するまでのお話。どんなやり取りや悩みがあったのか、その胸中を聞きました。

◆私の苦しさの正体は、ジェンダーの問題だったんだ!

 結婚して子どもを育てる中で、だんだんと妻や“嫁”としての役割に苦しさを覚え、同時に復職したくてもできない状況に不満が募っていった牧野さん。夫さんと話し合い、「1週間家事や育児を全て夫に任せてみる」というチャレンジをしました。
 その結果、夫さんからは今まで全く知らなかった妻の苦労や緊張感を知ることができたと感謝の言葉が。牧野さん自身も、自分が妻として背負い込みすぎることで、夫が育児や家事について知る機会を奪っていたことに気づいたそうです。

「この夫婦のできごとと同じくらいのタイミングで、私は『ジェンダー』という言葉を初めて知りました。上野千鶴子さんの『VERY』の特集がきっかけだったのですが、自分の中にあったモヤモヤや苦しさが、全てジェンダーバイアス※によって起きていたことだったと気づき、目からうろこが落ちるようでした」※男女の役割分担に対する固定観念

 復職したいのにスムーズにいかないこと。子どもが熱を出した時、妻ばかりが関係者に謝って調整をつけること。当たり前に自分がやるしかないと思っていたことがじつはそうではないと知り、牧野さんはジェンダーについて強い興味を抱いたそうです。

◆「妻だからこうしなきゃ」の思い込みを手放す作業

「上野さんの記事を読み、その後、清田隆之さんやおおたとしまささんのジェンダーに関する書籍を読むことで、自分で学びを深めていくようになりました。そして家庭では、夫が家のことを知ったのを機に、改めて『どこを夫に任せられるか』『どう分担していくか』というやり取りが始まりました
 最初は夫も『子どもの予定を“教えて”』というスタンスだったのですが、教えてというのも変だなと思い、各自で子どもの予定などを確認できるよう、共有のファイルを作ってプリント類を保管するシステムにしたりしました」

 こうした1つ1つのやり取りや改善を繰り返す中で、ここも任せていいんだという割合が増えていったという牧野さん。

「その時『もう1回夫婦別姓について夫へ話してみようかな』という思いがわきました。私の中では結婚して姓を変えたことで、長いあいだ夫に所有されていた感覚や、『妻だから◯◯しなきゃ』という囚(とら)われの気持ちがあったわけですが、今こうして家庭内のジェンダーが平等になっていく中だったら、夫はどう言うかなと思ったんです」

◆自分たちらしい平等のため、夫婦別姓に向けた歩み

 牧野さんは夫婦別姓への提案や取り組みについて「家庭内のジェンダーが平等になり、私たち夫婦のカタチがアップデートされていくことは、家族としても意味のあることなんじゃないか」と感じ、改めて夫婦別姓について考え始めたのでした。
 結婚した25歳のときは、夫婦別姓に対する自分の気持ちや法的な部分の説明ができなかった牧野さん。今回は事前にきちんとメリット・デメリットを調べ、そしてフラットに提案したといいます。

「今回夫に夫婦別姓を相談するにあたり、事前に自分で調べたり、弁護士さんに相談したりしたうえで臨みました。現状、日本では夫婦別姓制度はなく、別姓にするにはペーパー離婚(書類上の離婚)をして事実婚関係にするしか方法がありません。その場合、法的な権利はどうなるのか、問題点はどこにあるのか、また子どもの問題についても事前に弁護士さんへ確認を取りました」

 弁護士の回答は、事実婚になっても、親権問題と財産分与における妻の権利がなくなる以外は今と変わらないという内容だったそうです。また、仮に子どもが戸籍上“牧野”姓に変わっても、旧姓(夫姓)を学校で使用することは問題なく、保険証も夫の扶養内であれば問題ないと回答がありました。

◆「親権」も大切な問題であり、壁のひとつ

「こうした事前準備を経て、夫と改めて夫婦別姓について相談をしました。夫は最初びっくりしていましたが、きちんと私の気持ちを受け止めてくれました。彼としては、離婚は百歩譲ってOKだけど、親権問題については『共同親権』以外考えられないと。日本ではまだ法律上の共同親権が認められていないので、この件は子どもも含めて話し合いをしていくことになりました」

「共同親権」とは、父母が共同して子に対して親権を持つこと。日本の民法では、離婚後は父母いずれかが親権者となる「単独親権」を定めています。

 筆者は過去に別の取材で、事実婚について当事者に話を聞いたことがあります。その際、事実婚を選択していても、子どもが生まれた場合は法律婚に切り替えるカップルも多いことを知りました。
 理由は、子どもの心理面や生育環境への配慮といった側面も大きいのですが、そもそも事実婚で出産した場合、原則は母親の単独親権となるということも関係しているといいます。こうした日本の法制度も、牧野さんたちの夫婦別姓という選択の前に立ちはだかっている壁の一つと言えるでしょう。

◆子どもたちとも時間をかけて、考えを共有している

「夫から親権の問題をクリアにしないと夫婦別姓は難しいと言われたことで、改めて、子どもたちにも時間をかけてしっかりと私たちの考えを伝えていくことになりました。最初は子どもたちも“離婚”という言葉に不安な気持ちがあったようですが、時間をかけて『離婚しても、生活や家族としての繋がりは今となにも変わらない』ということを伝えていったら、だんだんと理解してくれるようになりました。
 それと同時に、共同親権となるべく近いかたちにできるよう、事実婚に関する契約書を作成し始めました。主に子どもとどう接するかという部分を重視していて、共同親権が制度としてない変わりに、契約書でカバーするイメージです」

 牧野さんは話し合いを続ける中で、日本に夫婦別姓制度がないことだけでなく、離婚後の共同親権制度がないこともまた困難だと痛感しているといいます。

「家族というのは苗字での繋がりではなく、本来は個と個の繋がりのはずです。そうした意見には夫も賛同してくれているのですが、現実問題として夫婦別姓と共同親権が両立できないことはクリアしなくてはなりません。離婚後の共同親権が認められないことが、こんなにも選択肢を狭めることなんだと肌で感じているところです」

 法務省は昨年、離婚後の親権や子の養育の法制度について海外を調査した報告書を公表しました。調査した24カ国中22カ国が離婚後の共同親権を法的に認めており、日本のように離婚後に単独親権しか認められていない国は、インドとトルコの2カ国でした。
 共同親権が認められている背景は各国ごとに異なります。しかしジェンダーの問題と合わせて、こうした子どもを育てる環境についても、柔軟な法整備が必要なのかもしれません。

参考 法務省HP「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果の公表について」

―牧野紗弥さんと考える“平等な夫婦の形”―
【牧野紗弥(まきの・さや)】
『VERY』『Domani』などのファッション誌や広告で活躍するモデル。1984年生まれ。3児の子育てと仕事の両立に励む等身大の姿が、女性たちの共感を呼ぶ。Instagram:@makinosaya

<取材・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】
水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518

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