映画『100日間生きたワニ』 日本中を感動させたマンガが神木隆之介ら豪華声優陣で待望のアニメ映画化!

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漫画家・きくちゆうきが1日1話ずつ公開し、連載中から大きな話題になった4コママンガ『100日後に死ぬワニ』をアニメ映画化した『100日間生きたワニ』(7月9日公開)。擬人化された動物たちが送る日常生活とその先に待ち受ける運命を、抑えたタッチで描いた作品。静かな感動を呼ぶこの作品についてご紹介しよう!

原作『100日後に死ぬワニ』について

©2021「100日間生きたワニ」製作委員会

擬人化されたワニやネズミなどの動物たちが、人間の若者そのままの生活を送る様子を描いた4コママンガ。きくちが自身のTwitterで2019年12月12日から100日間にわたって1日1話ずつ公開し、インパクトのあるタイトルやそれを裏付けるかのようにコマの外に毎回「ワニの死」までの残り日数がカウント表示されたりすることからも、連載中から大きな話題になった。結末までの展開がどうなるかについてたくさんの説が出て来て、SNSやテレビでは有名人も含めてかなり盛り上がった。
そして、日本中が注目する中で迎えた2020年3月20日に公開された最終話は、付けられた「いいね」の数が国内Twitterの歴代最多数となる214万を記録した。ちょうどコロナ禍が悪化し始めら頃のことでもあり、「命について考えさせられた」という人も多数いた。
しかし、悲劇的な結末がここまで堂々と前面に打ち出されてはいるものの、基本的には「若者たちの普通の生活」が淡々と描かれている。しかし、だからこそ、暗示されている結末との落差に心を乱された読者が多かったのだろう。
そんな読者の一人が、話題作『カメラを止めるな!』(2018)の監督・上田慎一郎だった。彼は映画化を熱望し、妻でアニメーターのふくだみゆきと共同でアニメ映画化を実現させたのが、この作品なのだ。

©2021「100日間生きたワニ」製作委員会

『100日間生きたワニ』あらすじ(ネタバレなし)

©2021「100日間生きたワニ」製作委員会

3月。
満開の桜の下に、お花見のために集まった仲間たち。しかし、ワニ(神木隆之介)がまだ来ない。彼の親友のネズミ(中村倫也)がバイクで迎えに行く。その途中、ネズミは満開の桜をスマホで撮影し、その画像を仲間たちに送る。道に転がっていたワニのスマホの割れた画面にも、その画像が届いていた…。
100日前。
ワニが入院中のネズミを見舞うところから、彼の「100日間」が始まる。みかん農家の実家からみかんを送ってくれる母親(池谷のぶえ)に電話で近況を報告し、退院したネズミとともに行きつけのラーメン屋へ行く。ゲーム好きの二人はプロゲーマーを目指していた。
カフェでバイトしているワニは同僚のセンパイ(新木優子)に想いを寄せていて、クリスマスに誘うが、予定があるからと断られる。しかし、それは別のバイトに入るからだった。そのバイトの最中、センパイは偶然目撃した出来事からワニの優しさを知り、彼に惹かれるようになる。
しかし、ある出来事からセンパイが自分を嫌っていると誤解したワニはカフェでのバイトを辞め、友人のモグラ(木村昴)に代わってリサイクルショップでバイトを始める。それでもセンパイのことを諦めきれないワニは、意を決してセンパイをデートに誘い、OKをもらう。不器用なワニは失敗続きだったが、結局ワニとセンパイは付き合うことになる。
平凡だが幸せな日々を送るワニ。周囲の仲間たちもそれぞれに日常を謳歌していた。そして春。センパイ、ネズミ、モグラとその恋人のイヌ(ファーストサマーウイカ)が集まり、桜の木の下でワニを待っていた…。
それから100日後。
雨が降りしきる日々。ワニを喪った仲間たちの日常は一変し、以前のように連絡を取ることもなくなっていた。そんな彼らの前に現れたカエル(山田裕貴)によって、彼らの日常は再び変わり始める…。

©2021「100日間生きたワニ」製作委員会

映画のために新たに築かれた、ワニと仲間たちの「日常」

©2021「100日間生きたワニ」製作委員会

上田たちが脚本の執筆など映画化の準備をしていた時期は、まさにコロナ禍で世界中が大混乱に陥って頃。それまでの「普通」が普通じゃなくなり、「日常」がどんどん「非日常」になっていくのを感じながら、上田とふくだは物語の構成を変えたと言う。しかし、それは原作を改変するのではなく、この状況によって原作が持っていたテーマをよりはっきりと表現した方がいいと考えたからだろう。実際、ワニたちの「日常生活」は非常に淡々と、しかし丁寧に描かれている。それは、ワニの死によって一瞬にして変わってしまうという“結末”がわかっているからこそ「平凡な日常」が大事だ、という原作のテーマが、原作が連載されていた頃よりもより私たちの心に響くような状況になってしまったからだろう。
そんな原作のアレンジが最も前面に出ているのが映画の後半。ワニがいなくなってしまったという「非日常」をなかなか受け入れることが出来ず苦悩する仲間たちのドラマがじっくり描かれているが、これはまさに現在の私たちを反映しているところだ。しかしもちろん、そのような背景を抜きにしても、シンプルに「大切な仲間を喪った若者たちの喪失感」のストーリーとして成り立っている。そのサジ加減の見事さは、まさに上田夫妻の才能だろう。
そんな「若者たちの日常のドラマ」を支えているのが、声の出演者たち。そのまま実写の映画やドラマにしてもきちんと成立しそうな絶妙なキャスティングだ。人気の高い若手俳優たちが中心だが実力もあるメンバーばかりなので、話題性に頼らない適材適所ぶりには感心させられる。
ところで、原作と今回の映画ではタイトルが違っている。原作のタイトルがあまりにもストレートでネタバレ、そして何よりファミリーでも観れる映画のタイトルに「死」の文字を入れることを躊躇したからか?などといろいろ勘ぐってしまう。そもそも「100日後に死ぬ」と「100日間生きた」では意味が変わってくる、しかし、「生きた」ことに重きを置いたとすれば、このタイトルもしっくり来る。本当のところは分からないが、先ほども触れたような原作のテーマをより明確に伝えるために、わざとこのような改変を行なったような気もする。

「命」と「平凡な日常」の大切さを、原作の本質をきちんと理解した監督たちと一流のスタッフ、そして声の出演者たちの好演で、アニメ映画という形で見事に表現することに成功した。観た後には温かくさわやかな気分になれる作品だ。

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