V系バンド好きの私が「ルッキズム問題」にモヤモヤしてしまう理由

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ルッキズム”――。それは、外見を重視して人を判断したり、差別することをいいます。

 最近では、東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式で、タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような演出が提案されていたことが明らかになり、批判が殺到。この騒動は、“容姿いじり”、つまりルッキズムの問題へ注目が高まるひとつのきっかけにもなりました。

『発達障害グレーゾーン』の大ヒットで知られるライター・姫野桂さんが、自身のさまざまな“生きづらさ”をつづった初エッセイ『生きづらさにまみれて』を刊行しました。本書では、30歳で発覚した発達障害や、コロナの影響でアルコール依存症になったこと、仕事関係者から“都合のいい女”にされてしまった体験などが赤裸々につづられています。

 今回はそんな姫野さんが、ルッキズムをテーマに綴った章を紹介します(以下、『生きづらさにまみれて』より抜粋、再編集)。

◆最近増えた“ルッキズム”にまつわる炎上

 近年ルッキズム(優れた容姿に価値があるという考え方)にまつわる炎上事件が多い。

 2019年には某WEBメディア編集者が執筆した「カルチャー顔」記事の炎上事件があった。彼が定義するカルチャー顔とは「美しさの中に歪みがある」「標準的なハーフ顔とはちょっと離れている」など。今まで「塩顔男子」や「ジェンダーレス男子」などが流行った背景もあり、彼も一種の流行語を作り上げたかったとも読み取れる。

 カルチャー顔について、言わんとしていることは分かるが、上から目線と捉えられる表現や、彼がカルチャー顔と定義するモデルや著名人などの具体的な名前と写真を掲載したことも波紋を呼んだ。

 そして、カルチャー顔の一人として紹介された作詞家の小袋成彬氏は激怒。最終的に記事は取り下げられ、執筆した編集者は小袋氏の住むロンドンまで謝罪しに行きその模様も記事にした。その謝罪記事が面白ければもっと挽回できたのだろうが、わざわざロンドンまで行ったのにびっくりするほど面白くなかった。

◆ブスをネタに笑いを取ることはもう古い

 またこれも2019年、AbemaTVで放映された女性芸人をターゲットにした「ブスはいくらで脱いじゃうのか?」というドッキリ企画も炎上。ブスいじりをすること、女性の裸に値段をつけること自体、人権問題である。

「ブスをウリにしている女性芸人もいる」という声もネット上で散見されたが、顔の作りが整っていない女性芸人であっても、近年は容姿で笑いを取ることが減ってきているように感じる。ブスをネタに笑いを取ることはもう古いのだ。

 ルッキズム問題は容姿を重要視するモデル業界にまで広がっている。身長158cm、体重86kgのプラスサイズモデルとして活躍中のエブチュラム真理栄氏は「“何が美しい美しくない”そんな話題すら無くなるそんな世界がルッキズムの解放だと、私は思います。」と、自身の豊満なボディの写真と共にツイートしている。

◆私がルッキズム問題にモヤモヤする理由

 これらのルッキズム問題に対して、私の中でモヤモヤが消えない。私自身、美に対する意識がおそらく世間一般の人々と違う。

 前述したように、私はヴィジュアル系バンドが好きだ。V系は音楽性だけでなく見た目も重要視される。それゆえ、この界隈に身を置いていると美的感覚が世間とズレていく。先日Psycho le Cemu のドラマー・YURAサマにインタビューする機会があったが、彼のキャッチコピーの一つは「顔が良いだけで業界に20年君臨!」である。とにかく顔・容姿が大事なのだ。

 美容整形手術をするV系バンドマンも多い。公表はしていないが、昔と顔が違うのでおそらく整形したであろうと噂されているバンドマンはいるし、2019年には己龍というバンドのボーカル・黒崎眞弥氏が韓国に鼻の整形手術を受けに行ったドキュメンタリー動画をYouTubeで公開した。

 黒崎氏は過去、日本で鼻の整形手術を受けていたことも告白。しかし、仕上がりに満足がいかず、顔のコンプレックスがパフォーマンスにまで影響を及ぼすようになったため、腕の良い医師がいる韓国での手術を決意したという。

 術後数日は顔がパンパンに腫れ上がり、鼻に詰め物をしているせいで口呼吸しかできないため鼻声で、その映像はかなり痛々しかった。そして、鼻を固定する器具をつけているため、しばらく自分で頭を洗えず、毎日美容室に洗髪しに行っているというエピソードも明かした。

◆それでも可愛いが正義

 このように、異常なほど美にこだわるV系バンドマン。そして、バンギャル(V系バンドの女性ファン)自身の美の感覚もまた、世間とは少しズレている。

 バンギャルの容姿の流行も移り変わっていくが、私がバリバリバンギャル活動をやっていた10年ほど前のバンギャルには、ジーザスディアマンテという姫系のブランドを着た通称「マンテギャ」や、黒髪前髪ぱっつん姫カット、または黒髪おかっぱでセーラー服のサブカルっぽい女子(手首にリストカットの跡があったりする)が多かった。

 服装はフリルやレースのついた少しロリイタっぽい感じ。ジーザスディアマンテはとてもじゃないが高くて買えなかったので(ワンピースが1着7万円もする)、私は中途半端なロリイタっぽい格好をしていた。本当はage嬢風のメイクもしたかったが、元々はっきりした顔立ちのため、当時流行していたつけまつげ3枚重ねなんかするとドラァグクイーンのようになってしまい、つけまは1枚で自重していた。

 バンドマンも、そんな格好をしているバンギャルを好むのだ。狭い世界の中で需要と供給が成り立っている。バンギャルは可愛ければ可愛いほど、痩せていれば痩せているほど良しとされる。また、可愛い子ほどバンドマンからも狙われやすいため、他のバンギャルから嫉妬の対象となり、あることないこと、誹謗中傷をネット上の掲示板に書き込まれて心を病んでしまう。それでも可愛いが正義。

◆社会に出て気づいた“美的感覚のズレ”

 社会人になってバンギャル界隈以外の人と接するようになった途端、「エッジのきいた髪型してるね」とか「面白い服着てるね」と言われるようになった。このことを同じくバンギャルの友達に話すと「それ、バカにされてるんだよ!」と言われ、ここでようやく世間との美的感覚のズレに気づいた。

 自分で満足いかないのなら、可愛くなるため、美しくなるための努力は必要だ。他人は人の容姿をそこまで気にしていないのでこれは自己満だが、自己満でいいのだ。

 私はむくみやすい体質なので、寝過ぎたりお酒を飲み過ぎた翌朝などは、まぶたが腫れて奥二重になる。そんなときはやむを得ずアイテープで二重にするが、他人からしたら二重だろうが奥二重だろうが知ったこっちゃない。それでも自分だけは気になるので応急処置をする。

 こんな風に美意識をこじらせているせいか、昨今のルッキズム問題に対して「ブスはブスだし、それを認めてメイクやファッションの研究やダイエットをしたり整形手術をすればいいのに」と正直今までは感じてしまっていた。

 ところが最近、YouTubeで芸人のバービーさんの動画を見たことで、この考えが一変した。彼女は率直に言って美人の部類に入らない顔だが、コンプレックスだったニキビ跡の治療のレポートや、テーマを決めてのメイク動画などを発信している。その様子が心から美容を楽しんでいるようで、見ていて気持ちが良いのだ。バービーさんは自分の容姿を受け入れつつも、美と友達になっている。

◆雑誌に載せられる程度の顔面レベル

 数年前、とある女性ファッション誌の編集者と仕事をするかどうか相談をしたことがあった。新卒で入ったばかりの若い女性編集さんでとにかくがむしゃらに働いているようだったが、ファッション誌なので少しでも流行遅れの服を着ていたりメイクがダサかったりすると上司から注意されるとのことだった。

 編集やライターの仕事なんて、頑張れば頑張るほど格好を気にする余裕がなくなっていくこともあるのに(校了前は特に)服やメイクに気を遣わないといけないなんて、超過酷な編集部だと絶句したものだった。
 
 打ち合わせた仕事内容の中には、読者モデルを探す仕事も入っていた。彼女は街でキャッチをして読モを探しているとのことだったが、職場バレしたらまずい女性もいるので、これがなかなか大変なようだった。

 当時、私の周りにはちょっとしたフリーのタレント活動をしている女性も数人いたので、その子たちに声をかけてみようかと思い「顔の可愛さはどれくらいが基準ですか?」と聞いたら「雑誌に載せられる程度の顔面レベル」という答えが返ってきた。

 雑誌に載せられる程度の顔面レベル……。あまりにも抽象的で残酷な響きだった。結局その仕事は縁がなく、その編集さんともそれきりだ。今となっては、ファッション誌界隈も言葉遣いに慎重になっているのかもしれない。

◆なぜ今、ルッキズム問題が注目されているのか

 心の中で「あの子はブス」と思ってもいいけど、口に出したりいじったりしてはいけない。とにかく容姿を理由に傷つけてはいけない。そんな思いはあるものの、夜遅い混んだ電車の中でイチャついているカップルは必ずといっていいほどブスとブサイクのカップルで、イラッとしてしまうのは私の性格が悪いからであろう。

 なぜ今、ここまで見た目問題が注目されているのか考えると、フェミニズム運動が盛り上がっていることも要因の一つと考えられそうだ。「女性の人権を叫ぶ女なんて男に相手にされないブスだけ」と罵るミソジニスト(女性を嫌悪、蔑視する人)もいるが、女優のエマ・ワトソンを始め、元女子アナの小島慶子さんや、#KuToo運動発起人でグラドルの石川優実さんなど、美しい容姿の女性たちも声を上げている。

 ミソジニストが好む女性像はおとなしくて控えめで、それでいて容姿端麗で自分が支配できる女性だ。自分の意思を持つ女性は、彼らにとってブスと罵る対象となる。なんとも稚拙で呆れる話であるが、彼らは心の底では女性を恐れているのだろう。

◆それでも、メイクを褒められたら嬉しい

 急にルッキズム問題が浮上してきたことに恐怖さえ感じる。確かに差別は良くない。しかし、世の中には美人の部類に入る人の方が少ない。だからこそ、女子アナやモデル、芸能人として活躍できる人がいる。そして何より、可愛くなる努力、綺麗になるための努力を私自身は楽しんでいる

 新しいメイク用品をおろす際のワクワク感や、毎晩のスキンケアでプルプルの肌を触ること、毎朝乗る体重計(摂食障害があるのでこれはちょっと病的だが)数字を維持できていること。女性の担当編集から「そのアイメイク、いつもと違って良いですね。可愛い」と褒められたことも嬉しかった。それに加えてありのままの自分を受け入れ、バービーさんのような美容オタクになれたらもっとうれしい。

<文/姫野桂 構成/女子SPA!編集部 撮影(著者近影)/Karma>

【姫野桂】
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei

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