ベルギー8強入りの影の立役者…Jリーグから欧州で力を証明するフェルマーレン

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 Jリーグの力を見せてくれた――そう言うと大げさかもしれないが、日本でプレーすることが決して無駄ではないことを証明した。

 ベルギー代表としてEURO2020に参加しているDFトーマス・フェルマーレン(ヴィッセル神戸)のことである。

 27日に行われた決勝トーナメント1回戦。ベルギーはポルトガル代表を1-0で下して、2大会連続のベスト8進出を決めた。前回王者に対して完封勝ち。シュート数は6対24とポルトガルに圧倒されたが、トルガン・アザール(エデン・アザールの弟)が放った唯一の枠内シュートが決勝点となり、これを守り切った。

[写真]=Getty Images



 フェルマーレンは2試合連続の先発出場を果たすと、ポルトガルのエース、クリスティアーノ・ロナウドとも対等にわたり合い、シャットアウトゲームに貢献。試合後に「とにかく集中を切らしてはいけなかった」と本人が振り返ったように、最後までミスなく自陣ゴール前に鍵をかけた。

 最も印象的な活躍をした選手に贈られる「スター・オブ・ザ・マッチ」には、T・アザールが選出された。だが、彼と同じくらい、あるいは彼以上に活躍を称えられたのがフェルマーレンだ。

 ベルギーメディア『Voetbalkrant』は、「ほぼパーフェクトなプレーを見せた」と絶賛。「スター・オブ・ザ・マッチに輝いたのはT・アザールだが、フェルマーレンのパフォーマンスに比類する選手はいなかった」、「彼のプレーを見た多くのファンは、なぜ日本でプレーしているのか不思議に思うだろう」と賛辞を送った。

 また『Het Nieuwsblad』は、試合後の採点でT・アザールに並ぶチーム最高の“9点”をフェルマーレンにつけると、「とても力強かった。ロナウドとのヘディングの競り合いにも勝利。豊富な経験でスーパースターを封じ込めた。指揮官の正しい選択だった」と評した。



 フェルマーレンは今大会のベルギー代表メンバーで最年長選手になる。代表デビューは2006年3月のルクセンブルク戦、当時20歳だった。以来、度重なるケガに苦しみながらも、15年にわたって“赤い悪魔”のユニフォームに袖を通してきた。

 極東の日本でプレーしながらも、FIFAランキング1位の代表チームに招集される。それは決して簡単なことではないだろう。実際、今大会のメンバー入りについてベルギーメディアからも疑問の声が挙がったという。だがフェルマーレンは万全の準備をしてきたと、今大会開幕前のインタビューで語っていた。

「日本のサッカーのレベルは、あまりよく知られていない。日本人は俊敏で、スピードがある。もちろん比較しようがないけれど、僕は常に全力を尽くしている。いつも代表のことを考えながら練習に取り組んできた」

 グループステージ第1節と第2節はベンチスタートとなったが、ロベルト・マルティネス監督の信頼が揺らぐこともなかった。「ヤン・ヴェルトンゲンとトビー・アルデルヴァイレルトの2人は安定感をもたらすが、フェルマーレンのことも私は100%信頼している。彼のことは、心配していない」とは、第3節フィンランド戦前の指揮官の言葉だ。

 そのフィンランド戦では、今大会初の先発出場を果たすと、ケヴィン・デ・ブライネが蹴ったコーナーキックをヘディングで合わせて、相手GKのオウンゴールを誘発。「パーフェクトではなかった」と謙遜したが、高い打点から叩きつけたヘディングシュートはフェルマーレンのゴールと言っても過言ではなかった。



「なぜ、こんなに謙虚なのか? リアリストだからだと思う。私は自分に正直でいる。プレーヤーとして成長するために、それは必要なことだ」

 試合翌日の会見でそうコメントしたフェルマーレンは、指揮官からの「彼は模範的な存在」という賛辞に対しても、「年を取った今は、もっと模範的であろうとしている。若いDFに伝えようとしている」と言葉を紡いでいる。

 ベルギーは今大会の優勝候補だが、懸念材料のひとつに挙げられていたのが最終ラインの高齢化だった。ポルトガル戦で3バックを形成したのは、35歳のフェルマーレン、34歳のヴェルトンゲン、32歳のアルデルヴァイレルト、合計101歳の選手たち。スピード不足が指摘され、優勝を狙うようなチーム相手には通用しないと考えるジャーナリストは今も少なくない。

 ただフェルマーレンの解釈は異なる。「平均年齢が上がったから、スピードがなくなったというわけではない。もう若手ではないけれど、自分の中でのトップスピードは自覚している」と、やはり開幕前のインタビューで語っている。

 そして昨日行われた会見では「日本のリーグを過小評価してはいけない」と口にし、こんなコメントを残した。「速くて俊敏な選手が多いので、自分もかなり試されている」

 ポルトガルの前線にスピードスターがいなかったことが幸いしたという意見もあるかもしれない。たが、前回王者相手にも堂々たるプレーを披露できたのは、普段Jリーグでのプレーで鍛えられていたから、というわけだ。



 7月2日に行われる準々決勝、相手はベルギーと同じく今大会全勝中のイタリアである。4試合で9ゴールと攻撃陣が好調で、主体的かつ積極的なプレーでここまで勝ち上がってきた。対するベルギーはエデン・アザールとデ・ブライネがポルトガル戦で負傷し、出場が危ぶまれている。守備陣が失点をゼロに抑えられるかどうかは、勝敗の鍵を握るだろう。

 もしフェルマーレンが先発すれば、ポルトガル戦以上に重要な役割を担うことになる。それでも百戦錬磨のベテランが慌てふためくことはないはずだ。普段Jリーグのピッチで見せるプレーでも、十分に通用することを証明したのだから。酸いも甘いも噛み分けた彼なら、イタリア相手にもきっとやってくれるはずだ。

(記事/Footmedia)

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