藤井聡太の師匠に学ぶ「部下や後輩の育て方」

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―[魂が燃えるメモ/佐々木]―

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第262回

◆歴代単独1位となる29連勝を達成した藤井聡太

 こんにちは、佐々木です。今回は「部下や後輩の育て方」について話します。

 将棋の藤井聡太棋聖はデビュー戦から負け知らずで、歴代単独1位となる29連勝を達成しました。この大記録は多くのメディアで取り上げられ、将棋ファン以外も関心を寄せる大きな話題になりました。

 そんな大記録を樹立した藤井棋聖も、プロ昇格を果たした奨励会三段リーグでは13勝5敗という成績でした。プロになれるのは三段リーグに参加した30名前後のうち、上位2名のみ。しかも、藤井棋聖が参加したリーグは12勝6敗が5名いる接戦でした。

◆師匠がかけた言葉

 この三段リーグの際、藤井棋聖の師匠である杉本昌隆八段は、「心配していないから」と励ましたと言います。この励ましは単なる気休めではなく、杉本八段自身の体験に裏打ちされています。

 杉本八段には板谷進九段という師匠がいました。当時、16歳で二段だった杉本八段は不調に陥り、「負ければ降格」という局面を迎えていました。この時、板谷九段は「杉本のことは心配しとらん。いつか必ずプロになる」と、杉本八段のことを励ましたと言います。

 この板谷九段のことを振り返って、杉本八段は「弟子の未来を信じる大切さを学んだ」とインタビューで答えています。つまり、自分自身が「心配していない」と師匠に励まされた経験があるからこそ、同じように「心配していない」と弟子を励ましたということです。

◆自発的な成長とは?

 ビジネスやスポーツの世界では、師匠の存在が欠かせません。特にビジネスの場合、師匠は「メンター」という横文字で呼ばれ、昨今はメンター(助言する人)とメンティー(助言される人)が一対一で対話する、『メンタリング』という若手の育成法が話題になっています。

 メンタリングが目指しているのは、部下や後輩の自発的な成長です。そのため、「これをしろ。あれをしろ」といった具体的な指示や命令は下しません。杉本八段も「将棋は自主性が大事で丸暗記して上達するわけではない」と考えており、メンタルを重視するという点で相通じるものがあります。そして、このメンタルに影響を与えるのは、理屈ではなく人間性です。

 杉本八段の「心配していないから」という励ましについて、藤井棋聖は「ほっとした」と後になって打ち明けたと言います。このように誰かの言葉が誰かの心に響くのは、その二人の間に共感が働いているからです。

 杉本八番は自分の師匠のことを意識した時に、「弟子の未来を信じる」という心構えを持ちました。そして、その心構えを持って、弟子である藤井棋聖に接しています。自分を導いてくれた師匠を意識することで、自分も同じように弟子を導けるようになるのです。

◆誰かを教え育てたいならば自分の過去を振り返るべし

 教え慣れていない人の場合、こうした人間関係が作り出す「心の世界」というものを見落としがちです。すでに色々なことができるようになった今の自分を基準にして、「こんなこともできないのか」と若手をこき下ろしたりします。それでは若手は育ちません。

 誰かを教え育てたいならば、「自分も昔は未熟で、色々教えてもらった」という過去を振り返ってみてください。そうすれば、若手が何で悩んでいるかもわかり、自分が何を言えばいいのかもわかるようになります。

 心配いらない。大丈夫だ。こうした心理的なアドバイスは誰にでも言えます。しかし、誰が言っても同じではありません。杉本八段が藤井棋聖を励ました時のように、自分の過去を振り返っているか、自分が誰かにそう言ってもらえた時のことを思い出しているか。その意識の有無によって、相手の心に響くかどうかが決まります。

 それが言葉の重みというものです。後輩や部下との接し方に悩んでいるのなら、ぜひ参考にしてみてください。

―[魂が燃えるメモ/佐々木]―

【佐々木】
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

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