山田孝之、97%ぐらいの方に批判されると思った『全裸監督』で証明したこと

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バブル景気のなか、アダルトの世界に彗星のごとく現れた村西とおる。その破天荒な生き様を描いたNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督』(2019年配信)は、日本のみならず世界中から大きな反響を受け、配信後すぐにシーズン2を望む声が上がった。村西を演じているのは、実力派俳優として日本の映像界にはなくてはならない存在である俳優・山田孝之。

近年は俳優業だけではなく、映画監督、プロデューサーとして広い視野で活躍しているが、そんな山田が「世界における日本のエンターテインメントの現状を知るいい機会だと感じた」と強い思いで挑んだ『全裸監督』シリーズ。シーズン2は、栄光を勝ち取った村西の転落人生が描かれるが「自信を持って全力でやっていこうと思えた」と語った山田に話を聞いた。

「題材的に97%ぐらいの方に批判されると思った」とシーズン1に臨む前の胸の内を明かした山田。それだけ『全裸監督』という作品には諸刃の剣的な危うさがあった。主人公は、アダルトビデオ業界に革命を起こした伝説の風雲児・村西とおる。彼の破天荒な人生は、刺激的でもあるが、一方で“常識的”という言葉で括るなら、あまりにもはみ出し過ぎている。

しかし蓋を開ければ、大きな反響があり、シーズン2を期待する声が日本国内ばかりか世界中から上がった。山田は「本当に3%ぐらいの人から熱狂的な支持を受けるだけかなと思っていたのですが、逆に90%ぐらいの人が面白いと言ってくれました。こういったものを面白がってもらえるんだなと実感できたので、シーズン2もしっかりと面白いものを作らなければいけない」と気合を入れて撮影に臨んだという。

シーズン2は、アダルトビデオ業界で栄華を極めた村西の転落人生が待っている。山田は「村西さんのサクセスストーリーを面白いと思ってくれていた人が、転落していく人生を観て楽しめるのかな」という心配があったというが「でもそれは堕ち方次第。面白ければ観てくれる」と気持ちを切り替えた。


山田は「あくまで、この作品のなかで描かれている村西とおるという人物ですよ」と前置きしつつ「本当に最低な男ですよね。終わっている」と笑う。この言葉通り、劇中の村西は、苦楽を共にしてきた仲間の意見を聞かず、突っ走り続け、多くの人を傷つける。山田自身の芝居も、そんな村西が乗り移ったようで、鬼気迫るものがある。


特に最終話のダムで満島真之介演じるトシと対峙するシーンの山田の演技は、度肝を抜かれるほどだ。「とにかくベラしゃべりするシーンで、当然脚本にはすべてのセリフが書き切れるわけではないので、その場でセリフを足す必要がありました。でも相手が満島真之介演じるトシだったので、トシというよりも真之介と僕の関係性のなかで、なにを言ったら響くかは分かる。彼自身は“愛”をとても大切にする人なので、そこを責めればいいという思いでした」と信頼関係を築ける相手との芝居によって導き出されたものが多かったという。

さらに、経営が傾きピンチに陥った村西が所属女優や社員たちを前に、暴走するシーンでも、これまで会社に貢献してきた女優・奈緒子役の冨手麻妙に強烈な一言を浴びせる。山田は「彼女が出ていくシーンだったので、限界まで追い込まなければいけない。冨手がなにを言われたら一番ムカつくか。これまでの仕事をすべて否定する言葉が思いついたんです」と台本にないセリフで物語に勢いをつけた。


「ムチャクチャ」という表現がピタリと当てはまる村西。これまで山田は「共感できる部分はない」と話していたが、シーズン2のセリフで「生きていればいい」という村西のセリフに「その通りだな」と感じたという。「いろいろなものに手を出して得て、失って……でも最後に生きていればいいというのは、正しいことなのかなと思うんです」と語る。

さらに「死にたくなったら下を見ろ!俺がいる」という村西の言葉にも驚きがあったという。「自分が堕ち切ってしまっている状況で、死にたくなった人に『待て、お前が死ぬのはまだ早い。俺ほどじゃないだろ!』って言えませんよね」。


「こんな酷い人を主人公にしたドラマを作るわけなので、人に観てもらうためにはどうしたらいいか」という課題を持って臨んだ本作。山田ら『全裸監督』チームが出した答えは「とにかく全力で役を全うし、クソ野郎だけれど、でも観ちゃうんだよな」というところまでクオリティを持っていくこと。

その意味で、Netflixで挑んだ座組は、全力を出し切るための環境を整えてくれた。「しっかりした労働環境なので、単純に体調も整えやすいし、準備もできる。良いパフォーマンスを出せるような現場でした」と撮影を振り返る。

思う存分“挑戦”することに集中することができた撮影。山田は「日本のエンターテインメント業界の現状を知るためには、とてもいいチャレンジでした」と振り返ると「あまり仰々しく言うことではないのですが、この作品を観て日本に興味を持ってくれる人がいたら嬉しいし、海外の人が日本でカメラや照明を学びたいという人が出てきたら素敵なことですよね」と未来に目を向ける。


続けて山田は「(シーズン1で)多くの国の人が観てくれたという事実は、この作品に携わった人にとって『少なからず日本もやれるじゃん』って自信になったと思うんです」と語ると「そもそも日本って世界中が注目している原作や漫画が山ほどあるじゃないですか。人によっては『原作に頼りやがって』と言う人もいますが、僕はどんどん使えばいいと思っています。そうやって日本のエンタメが力をつけていけば、携わる人の視界も広がっていくと思うんです」と持論を展開する。


センセーショナルな題材だけに、「圧倒的に批判されるだろう」という戦前の結果は大きく覆された。しかし結果論で物事を語るのではなく、山田は「なにをやっても批判する人はいる。だからあまり周囲の目は気にしないで、自分が面白いと思ったものをやるべきだと思っています」とキッパリ。

原作となった「全裸監督 村西とおる伝」の著者・本橋信宏からは「この映画に参加してCM大丈夫ですか?」と心配されたという山田。「やりたいと思ってやった仕事。もしそれで、契約を結べませんと言われたら、それはしょうがない。批判されたら、別の形で支持を受ければいい。でもありがたいことに皆さん寛大で、『全裸監督』に出演したからと言って契約を解除しますという人はいませんでした」。

とかくいろいろと横やりが入ることが多い現代。それでも自分の信じる道を進む人間の潔さは尊い。村西と山田には、そんな共通点が感じられるが「僕はもうちょっと冷静だし、一人じゃなにもできないと思っているので、人には相談しますよ」と笑っていた。


取材・文:磯部正和

撮影:友野雄(Yu Tomono)

ヘアメイク:灯(ROOSTER)/Toh(ROOSTER)

スタイリスト:五月桃(ROOSTER)/KURUMI(ROOSTER)        


<衣装クレジット>

シャツ/Y’s(ワイズ プレスルーム 03-5463-1540)

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