朝倉未来、ダルビッシュ有、田中将大…なぜアスリートはYouTubeを始めた?発言切り取り横行するテレビや新聞に頼らない発信戦略

 442万再生。

 YouTube界の王様・ヒカキンでも簡単には出せないこの数字。約1週間前(6月22日時点)に公開した動画なのだが、いったいどんなYouTuberなのか?

 タイトルは『試合を終えて』。

 そう、実は動画を配信したのは現役のアスリートだ。格闘家の朝倉未来。タイトルにある「試合」とは、6月13日に行われた総合格闘技大会『RIZIN28』だ。朝倉はこの大会で失神KO負けを喫した。その試合を振り返った動画は、目を腫らした痛々しいサムネイル。試合翌日に投稿し、その生々しさが大きな反響を生んだ。

 アンチ朝倉未来の人は「アイツはYouTuberのほうが本業だろ」と言いそうだが、彼は格闘技界トップクラスの大会にレギュラー参戦しており当然、プロのアスリートだ。YouTuber寄りの動画を出しているアドバンテージはあるかもしれないが、それでも442万再生はものすごい数字だ。

 アスリートが試合の直後に、試合を振り返った動画を出す。これは朝倉だけでなく、ダルビッシュ有、田中将大、前田健太などのプロ野球選手、陸上100メートルの桐生祥秀など、多くのアスリートが取り入れている。試合後には記者会見があるし、これだけの有名選手ならテレビや雑誌の取材は引く手数多だ。にもかかわらず、なぜYouTubeなのか?

 答えは、既存のメディアでは自分の言葉が「そのまま伝わらない」ことを知っているからだ。

 想像して欲しい。自分が1~2時間、全力で試合に出場し、ヘトヘトの状態で無数のカメラが待つ会見場に向かうことを。記者は勝因敗因を執拗に聞いてくる。息つく間もなく発言を求められ、納得のいく言葉を残せるだろうか?一番わかりやすいのは、力士のインタビューだ。終始ゼーゼー言っている中で、まともに頭を働かせられるわけがない。

 しかも、その言葉は「自由に編集してもいい言葉」として扱われる。前後の文脈を無視して、意図しない趣旨に印象操作されることはザラだ。試合や練習後の疲れたタイミングで発言を求められ、それを記者のいいように編集されるなんて、納得できなくて当然だ。

 有名なエピソードとして、プロ野球・日本シリーズの「巨人はロッテより弱い事件」がある。近鉄バファローズの加藤哲郎投手が、対戦相手の巨人について、記者からこう聞かれたという。

「実際どうなん? 巨人はロッテより弱いんちゃうの?」

加藤は答えた。

「ピッチャーはええけど、打線はアカンなぁ」 すると、翌朝の新聞には驚くべき見出しが踊っていた。

「今の巨人ならロッテの方が強い」

 しかも、加藤の発言として書かれていたそうだ。

 簡単に言えば、誘導尋問のような形で本人の意図しない記事が生まれた。ちなみに、この報道まで3連勝していた近鉄は、奮起した巨人に4連敗を喫し、日本一を逃している。勝負の流れまでも変えてしまったのだ。

 これはかなり古い話ではあるが、トップアスリートであれば大なり小なり同じような経験をしている。だから、YouTubeで話すのだ。以前はブログやツイッターで書くのが主流だったが、声や表情がある分、動画の方が圧倒的に気持ちが伝わりやすい。

 編集するのは自前のクリエイティブチーム。発言の意図を共有した上で編集してくれる。

 さらには、テレビや新聞とは違い、時間や文字数に制限がない。自分の真意を伝えるには最も適したメディアだと言えるだろう。

 記者会見については、テニスの大坂なおみの騒動でも注目された。

 メディアとアスリートが良い関係を築くことができなければ、今後は全て「自分のYouTubeで話す」になってしまう。テレビや新聞は何のために存在するのか? アスリートがYouTubeをやる本当の意味を、マスコミ関係者はよく考えるべきだ。

  • 6/27 19:00
  • サイゾー

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