「海浜幕張」と「所沢」が狙い目? コロナ移住の最新トレンド

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 コロナ禍で働き方や暮らしは大きく変化した。テレワークや時差出勤が普及したことで、家で過ごす時間も増えるなか、よりよい住まいを求めて「コロナ移住」への関心が高まっている。

 自然豊かな郊外や古民家をリノベーションした物件など、“職”と“住”が一体化したライフスタイルに憧れを抱く人々が増えているということだろう。

 今回はリクルートが運営する住宅情報サイト「SUUMO」の編集長であり、住まいの専門家として活動する池本洋一さんへ、コロナ禍における住まいトレンドや狙い目の街について話を聞いた。

◆コロナ禍で住まいを見直す機運が高まった

 まず、住環境のニーズはコロナ禍でどのような変化が起きたのだろうか。

 池本さんは、「外出自粛が叫ばれていたのにもかかわらず、物件の閲覧数が急上昇した」と驚きの表情を見せる。

「多くの人々が住まい探しに興味関心を抱いている状況に、正直びっくりしましたね。昨年の外出自粛期間は分譲マンションのモデルルームや住宅展示場は軒並み閉まっていた一方で、ネットで住宅情報を探す人が増え、SUUMOの閲覧数も急上昇したんです。

 なかでも注目度が高かったのは一戸建ての物件。テレワークやリモートワークが推進され、場所を問わずに仕事ができるようになったことで、海沿いやリゾート地の“物件が蒸発する”現象が起きた。コロナ禍でライフスタイルが変化したことで、『暮らす家、暮らす街そのものを見直す』という機運が高まったのが大きな要因になっています」

 また、住宅ローン減税や超低金利が続く状況下であるがゆえ、「毎月の支払額を大きく変えずに購入できたことも大きい」と池本さんは続ける。

「コロナ禍という先行き不安な社会情勢が続くなか、毎月住まいに充てる予算は増やせないわけです。ただその代わりに、今まで賃貸物件で家賃を払っていたのを、予算は据え置きで住宅ローンへ切り替える人が増えた。特に注文住宅よりも建売住宅の方がすこぶる動きがよかったんです。

 具体的な地域で言えば、館山木更津富津といった房総半島。また逗子葉山などの三浦半島辺りが人気で、自然豊かな場所かつ名の知れた印象的な街が選ばれていると感じています」

◆“人気駅の隣町”を選べば、地域に溶け込んだ生活を送れる

 コロナが流行する以前は、職場で仕事をして、家ではくつろぐといった「職住分離」が一般的であった。

 それがコロナ禍によって、自宅の中で仕事したり、暮らす街のカフェ等で仕事をするといった「職住融合」が加速して、自宅や街の滞在時間が伸びることで、本当に住みたい街を起点に選ぶように人々のニーズが変化している。

 そんななか、住まい選びの潮流として「誰もが知る人気駅の隣町に住む」のも念頭に置いて物件を探すといいそうだ。

「首都圏を代表とする大都市圏では、人気駅の物件は値段が高い一方、一駅、二駅ずれるだけで途端に値段が下がります。主要な駅の隣町に住めば、金銭的ハードルも下げることができるわけです。

 また、コロナ禍で人と接する機会が減るなかで、いかに地域社会との接点や同じ地域の住民と顔なじみを作るかといった観点も重要になっています。渋谷や新宿などの人気駅にある飲食店では、シフト勤務の従業員が働いている状況で、来るお客さんも毎回異なるためになかなか顔見知りができない。それが、隣町にあるお店では地元民が足繁く通うお店があったり、あるいは意外に知られていない名店があったり。地域ならではの風土を感じつつ、ふれあいや居心地の良さを味わいながら落ち着いて暮らせるのが、隣町に住む大きなメリットだと思います」

◆都心と田舎を行き来するデュアルライフも、身近になってきている

 また、以前から注目を集めていたデュアルライフ(2拠点生活)も、リーズナブルな空き家やシェアハウスを活用することで、2拠点移住のハードルも下がってきており、都心と田舎の2つの生活を実践する“デュアラー”が増えているという。

「昔は2拠点生活と言うと、資産家やリタイア組が持つ豪華な別荘のイメージでした。それがいまや、デュアルライフを始める人の割合のうち、年収800万円以下が約半数、年代では20~30代が半分を占めているんです。『憧れの別荘暮らし』というかつてのイメージではなく、気軽に2拠点生活を送れる環境が整ってきていて、コロナ禍をきっかけに一般層の若者やファミリーも“デュアラーデビュー”する方が増えました。

 都会の喧騒から離れてのんびり過ごしたり、サーフィンや農業などの趣味に没頭したり、第二の故郷として田舎暮らしを楽しんだり。都心の価格が高騰する中、逆に田舎は安くなっていることで、多様な暮らし方ができる時代になってきていると実感しています」

◆都市と自然の中間に位置し、地慣らしがされている地域を選ぶ

 こうしたデュアルライフ人気が高まるなか、初心者デュアラーはどのようなことに留意して始めればいいのだろうか。

 池本さんは「先行移住者がいる地域を選ぶのがおすすめ」とし、次のように指南する。

「普段住み慣れた場所ではなく、知らない地域に住むわけですので、まず初心者デュアラーはデュアルライフを実践している先輩がいる地域を選ぶようにしましょう。中山間地域や地方都市は、その地域独特のローカルルールが存在していることが多く、全くソトモノがいない地域で0からデュアルライフを始めるためには、地域の方々との関係性づくりが結構大変になってきます。

 それに比べ、先輩デュアラーがいる地域では、その地に溶け込んで暮らせる土壌を先んじて作ってくれている。こうした地慣らしがされている地域を選び、先輩と交流を図りながら徐々にその地へ根ざしていくような暮らしを目指すといいのではないでしょうか」

 では、いざコロナ移住やデュアルライフを始める際に意識したいポイントとして「都心部から1時間半圏内」「都市と自然の中間」 を池本さんは掲げる。

「2拠点生活を送る上で抑えたいのは、『その晩に思いついたら移動できる』ような距離感にある地域がベストだということ。だいたい都心部から1時間半圏内にある地域がおすすめです。また二拠点生活ではなく一拠点で都市と自然の両方を楽しめるという点で、郊外にある中核都市の価値が改めて見直しされていると感じています。

 週に何回は都心部で仕事をし、余暇を過ごしてリラックスしたいときは、近くにある自然やアウトドアを楽しむ。いわば『都市と自然の中間』に位置する郊外に拠点を構えれば、デュアルライフに近い暮らしを送れると思います」

◆都市と自然の両どりが「海浜幕張」と「所沢」は狙い目

 都心部にアクセスしやすく、ちょっと車や電車で移動すれば風光明媚な自然広がる郊外の中核都市のなかで、「海浜幕張と所沢がイチ押し」だと池本さんは言う。

「海浜幕張周辺の美浜区は今後要注目のエリアですね。というのも、ZOZOマリンスタジアムや県立幕張海浜公園、複合型の商業施設などが充実していて、生活圏内の利便性も高い。

 さらに、2023年春には京葉線の新駅が開設予定で住宅ニーズの高まりが期待でき、街の発展が予想されています。現在、美浜区周辺のマンションの坪単価は220万円くらいと比較的値ごろ感のある物件があるため、価格が高騰しないうちに狙いを定めておくのはありだと思います」

 所沢にかんしては、駅直結の大型商業施設や話題の文化複合施設など、再開発によって街の活性化がなされたことで注目度が増したそうだ。

「2020年9月に開業した『グランエミオ所沢』は、おしゃれなライフスタイル系ショップや飲食店など合わせて120店舗が入る商業施設で、『駅ビルが弱い』という所沢のイメージを払拭するきっかけになりました。

 また、アニメやコミックなど、ポップカルチャーを生み出してきたKADOKAWAが運営する文化複合施設『ところざわサクラタウン』も同年11月にオープンし、アニメミュージアムや図書館、カフェなど新たな目玉スポットとなっています。

 そして近郊には、スタジオジブリの映画『となりのトトロ』の舞台と言われる狭山丘陵の美しい里山風景が残っていて、少し奥の飯能に足を延ばせば、川遊びやキャンプなどのアウトドアライフも満喫できる。このように、所沢の街の魅力は急速に高まっていて、住まいとして選ぶのに十分なポテンシャルを兼ね備えています」

◆築30年前後の郊外戸建住宅は絶好の売り時

 これからのアフターコロナを見据えて、将来の住まいに注目したいところだ。

 最後に、池本さんから「築30年前後の郊外の戸建住宅はかなりの売り時になっている」という耳寄りな情報を教えてもらった。

「もし、親や祖父母の世帯が郊外の戸建住宅に住んでいて広さを持て余している、既に空き家になっているなら、売却や住み替えの話をしてほしいと思います。コロナ禍でなんとなく売り時ではないと思われがちですが、実は前述のようにコロナ禍で広い戸建てが空前の人気で、絶好のタイミングが来ています。

 バス便物件(駅から遠い立地)で、2階の子ども部屋を遊ばせてしまっている築30年くらいの郊外物件はもってこいですね。親の世代には、駅前のマンションへ住み替えを検討してもらうのも手です。駅前なら、買い物はもちろん、電車でのお出かけも気軽にできるし、また資産価値的にもバス便の一戸建てよりも手堅いですから」

<取材・文・撮影/古田島大介>

【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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