まったくピンとこない? 埼玉県川口市で「ご当地グルメ」を探してみた

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埼玉県川口市。荒川を超えたら、もう東京。都心に近く「本当に住みやすい街大賞」で1位にもなるほど人気のエリアだが、「ご当地グルメは?」と聞かれて、パッと思いつく人は少ないかも? そこで、現地に足を運んで調べてみると……。

今回は書籍「これでいいのか埼玉県川口市」(鈴木ユータ、松立学 共編/マイクロマガジン社)の一部を紹介。解説する。(文:地域批評シリーズ編集部)

ほかの地域の「アレ」と、何が違うの?


銘菓・名産といったご当地名物に乏しい埼玉県にあって、川口市はそれが顕著な街といってもいい。ただ筆者の知識不足の可能性もあるので、道の駅川口・あんぎょうにおもむき、おみやげコーナーを覗いてみたが、「銘菓ふくみちゃん」「樹里安アイス」など川口名物を謳う商品をいくつか見かけたが、扱いはさほど大きくない。それどころか、同じスペースには埼玉最大のライバルである千葉県産の商品が陳列されている。そもそも売店コーナーのスペースが施設面積の割に小規模だったのも、名物・特産品がないことを示唆しているのか?

事実仕方ない。知名度が全国区の特産が鋳物や植木以外ほとんどないことに加え、川口にはゼリーフライ(行田市)や冷汁うどん(加須市)といったご当地グルメもほとんどない。かろうじて川口ご当地グルメの地位に立っている「ぼったら」も、実際食べると美味いのだが、見た目はさほど「もんじゃ焼き」と変わらない。このあたりプライドの塊の川口原住民も、「ぼったらともんじゃ焼きを並べられても、違いがわかる人はいないんじゃない?」と認めている。

もっとも、ぼったらはもんじゃ焼きと同じく駄菓子屋などから生まれたもので、古くからこの街に住むベテラン勢には「子供のおやつ」の印象が根強い。それでもヨソ者に「もんじゃじゃん」といわれたらそれまでで、オンリーワンの名物としてはインパクトに欠ける。

また、川口駅前にあるもうひとつの名物グルメ「太郎焼」も、焼き印がなかったら今川焼と見分けがつかない。太郎焼本舗の公式ホームページにある説明にも「いわゆる『今川焼』『たいこ焼』といったところでしょうか」という記述がある。オリジナル商品であるのに、一般的な品物を用いてわかりやすく紹介してくれていることに敬意を払いつつ、どこか苦衷も察してしまう。ただ、とりわけ地元の女性陣からは「川口の太郎焼は太郎焼。今川焼きじゃないです。おいしいから駅近くに用事の時はつい買っちゃう」といった絶賛の声が続出している。なるほど、市民のおやつとして、しっかり確立している風である。

川口といえば、都心への近さが売りの街だが、なまじ近いがゆえに特産品や名物グルメに「らしさ」というか、特色が出にくいのかもしれない。およそ何でも東京に揃っているだけに、特別なものはいらない。そんな地理的背景が、川口の特産を乏しいものにしているような気がしてしまう。

名物グルメがほとんどないためか、川口にグルメの街というイメージもなく、実際、駅前にある居酒屋もお決まりのチェーン店が多く、あまり魅力を感じない。昔日の川口っぽさを感じる昔ながらの個人居酒屋は、川口オート周辺のオケラ街道や西川口駅あたりに集中し、その他では、地元の常連客が足しげく通うスナックがチラホラある程度。昔ながらの食堂もあるにはあるが、高齢の店主が厨房に立つ店も少なくなく、いつ閉店してもおかしくない状況だ。

救世主は焼きうどん?

そんななか、鳩ヶ谷方面から意外なグルメ情報が飛び込んできた。鳩ヶ谷ソース焼きうどんである。川口としては2011年に「鳩ヶ谷」と合併して得た貴重なコンテンツといっては失礼だろうか。ともかくこれは、鳩ヶ谷市商工会らが市内に工場を構えるブルドックソースと共同開発した特製ソースを使用した焼きうどん。晴れて川口名物グルメにカウントされる逸品だが、ブルドックソースとのコラボとは実にいいところに目を付けたものだ。

埼玉県は、うどん生産量が全国2位という「隠れうどん県」である。そこに特製ソースが加わった唯一無二のご当地グルメ。が、出自が鳩ヶ谷のためか、PRがそもそも足りていないのか、その存在を知らない川口市民も少なくない(ソース味は浸透しているけど)。これはちょっと悲しいぞ。

もっとも、鳩ヶ谷ソース焼きうどんの定義は「特製ソースを使っているか否か」だけで、麺の種類や具材に指定がない(ユルい!)。よって、店によっては生卵がトッピングされていたり、マヨネーズやかつおぶしが振りかけられてお好み焼きスタイルになっていたりと、見た目に統一感がない。この指定のユルさも鳩ヶ谷ソース焼きうどんが川口名物としてブレイクしきれない一因のような気もするが、定義のユルさを逆手に取れば、ルールがないゆえに各店ごとにトッピングや使用する麺に違いが出て、店の個性は出る(川口特産の野菜を具にしてもいいかもしれない)。

それならこれは提案だが、京急電鉄が以前から行っている「みさきまぐろきっぷ」のように、鳩ヶ谷の街を走る国際興業バスやタクシー各社とコラボして、鳩ヶ谷ソース焼きうどんをお得に楽しめるチケットを作成し、食べ歩きシステムを作り上げてはどうだろう。そうすればもうちょっとB級グルメとして認知されるのではないだろうか。ちなみに、鳩ヶ谷商工会らが運営する鳩ヶ谷ソース焼きうどんの公式ホームページのブログは、2012年の更新が最後となっている。つまり盛り上がっていない証拠で、今こそ策を講じる時ではないだろうか。

■書籍情報

『これでいいのか埼玉県川口市』

著者:鈴木ユータ、松立学

価格:980円+税

発行:マイクロマガジン社

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