インテリアデザイナー・片山正通「“デザインしない”という選択をした」ユニクロ・グローバル旗艦店デザインの狙い

俳優の青木崇高がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「ネスカフェ香味焙煎 presents Lifetime with Coffee~コーヒー片手に、大人のたしなみ~」。この番組では、さまざまなジャンルで活躍するかっこいい大人をお迎えし、人生論、恋愛論、仕事論、若い頃の苦労話など、こだわりある“かっこいいかたち”を伺っていきます。

5月のマンスリーゲストには、インテリアデザイナーの片山正通(かたやま・まさみち)さんが登場。5月23日(日)の放送では、片山さんの仕事との向き合い方を深掘りしました。

(左から)片山正通さん、青木崇高

◆片山正通「インテリアは主役じゃない」

片山さんは、東京・青山のピエール・エルメ・パリをはじめ、世界各国で様々なプロジェクトを手がける、日本を代表するインテリアデザイナーの1人。株式会社ワンダーウォールの代表、さらには武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科の教授として教鞭を執っています。

片山さんが手がけたインテリアデザインの魅力について、青木が「“こんなことやってもいいんだ!?”ってワクワクする」と語ると、片山さんは「崇(青木の愛称)みたいに、“片山がデザインしたものを見てみよう”と思って来てくれた人は、そういう尺度や目線で見てくれるけど、ほとんどの人はそうじゃない」と言います。なぜなら「インテリアは主役じゃないから」と明言し、「あくまでも空間の主役は、商品やサービス。それを僕はどういうふうにサポートして、より良く見せて、本質を伝えるか。そのお手伝いをするのが空間の仕事なので、なかなかメッセージは伝わらないものなんです」と説明。だからこそ、「僕の仕事は、できるだけ見た人がわかって、楽しんでいただけるということを“根っこ”に持っていないといけないと思っている」とポリシーを語ります。

「ユニクロ(UNIQLO)」のグローバル旗艦店のインテリアデザインも手がけており、青木は「片山さんは、アートやデザイン性を高めつつも、ちゃんとその奥にいるカスタマー(顧客)、消費者のことを考えている。それがクライアントにとっての成功でもあるので、そこのバランスを考えながら最大限のパフォーマンスとしてのデザインをやられているんだなと感じました」と舌を巻きます。

実は、片山さんは株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正(やない・ただし)さんと初めて会った際、「できるだけ、片山さんのデザインが目立たないようなデザインにしてください」と言われたそうで、「とんちのような禅問答で、すごく面白いなと思った」と当時を振り返ります。

柳井さんからの思いがけない一言を、片山さんはネガティブに感じることはなかったと言い、「柳井さんは、僕のデザインを提示するために僕に仕事を与えているのではなくて、『「ユニクロ」を盛り上げるためにあなたを起用しているんだ』っていうことを言いたかったんだと思うんです。その本質を読み解きたかったので、柳井さんからいただいたその難題を、僕なりにとんちのようにお戻しする。だから“デザインしない”という選択をした」と話します。

そこで、片山さんは「デザインをしないで、商品だけでユニクロを作ってみてはどうでしょうか?」と提案するとともに、売れ残りのレインコートをビルにかけてオブジェに見立てたスウェーデンのイベント写真を見せたところ、柳井さんは「これは素晴らしい。僕もこんなことがやりたかったんだよ」と共感。

その反応を見た瞬間、「この仕事はバッチリ上手くいく。“ハマった!”と思った」と片山さん。「まだデザインもなにもやっていないけど、柳井さんがやりたいことがわかった。色や形、マテリアルもデザインの一部であることは間違いないんだけど、最終的なスタイリングがデザインではなくて、コンセプトワークがデザインなんですね。目的がなんなのか。目的のために施す処理がデザインと思われがちだけど、実は目的自身がデザインなので、“こういうことをやりましょう!”とゴールを一緒に見られたのが、デザインなんです。

その後の処理はデザイナーが10人いたら、十人十色なわけでそれでいい。ただ、目指すものがなんなのかを見つけないとゴールがない。それを学ばせていただいたし、柳井さんがそう言ってくれたことで、“ハッ!”と目が覚めた。僕がやるべきことがわかった」と熱く語ります。

◆片山流・仕事を勝ち取るプレゼン術

これまで数多くのプロジェクトを手がけてきた片山さん。その“プレゼンテーション”の出来・不出来が、大きな鍵となります。プレゼンでは、必ず模型(リアルモデル)を作るそうで「それを見た瞬間に理解されないといけない」と言います。

例えば、カラフルな洋服を目立たせるために真っ白な空間デザインを提案しようとした場合、「模型にもカラフルな洋服が置かれていないと、ただの真っ白な空間だと思われてしまう。でもそこに、赤や黄、黒などの洋服があることで、その服の色を際立たせるための“白”なんですとプレゼンするのに、商品がないと説明がつかないんです。

(模型を見た瞬間に)“こんなシンプルなお店を頼みたかったんじゃない”と思われたら、僕のプレゼンは残酷なまでに終わってしまう。『違うんです。聞いてください!』と言ってももう遅い」と片山さん。

模型を見た瞬間に、「クライアントが好きか嫌いか、そこで決まる」と言うほどシビアな世界。そのため、模型と言えど、例えばカフェであればマグカップまで、ブティックであれば洋服の一つひとつまで、手を抜くことなく時間をかけて細部まで作り込むと言います。

そして、「そこに至るまでのコンセプトワークのテキストを作り、それを説明しながら、“よし、ここのタイミングだ!”というときに幕をバッと取って模型を披露する。そこで席を立っていただいて説明をするんです、耳元で(笑)」と語ります。

プレゼンの時点でしっかりとビジョンが合致すれば、「その後はわりとスムーズにいくんですね。そこからが勝負なんですけど、スタートはそこ(プレゼン)なので、そのためにかなり時間を使いますし、社内で(本番に向けて)リハーサルもします」と見えない裏での努力を明かします。

それを聞いた青木は、「やっていることは、役者にも通ずる部分があるというか。(幕が上がる先には)緊張感のあるクライアント、お客さんがいて、いかに満足していただけるかということですよね」と感じ入った様子でした。

次回6月27日(日)の放送は、クリープハイプの尾崎世界観さんをゲストに迎えてお届けします。どうぞお楽しみに!

<番組概要>

番組名:ネスカフェ香味焙煎 presents Lifetime with Coffee~コーヒー片手に、大人のたしなみ~

放送日時:毎週日曜 TOKYO FM 18:00~18:30/FM大阪 18:30~18:55

パーソナリティ:青木崇高

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/withcoffee/

2021/6/27 6:00

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