アコムとレイクの「いつでも狩れる」という凄腕感は電話越しにも伝わってくる

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―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は54回目を迎えました。

 今回は、催促されてお金を払い、裁判所に提示した返済額が断られたお話です。


◆家はなくともさして生活は困らない

 あれからもう1か月経ったが、正直、全然困らない。決まった家がないところで今のところ何も問題が発生していない。

 強いて言うなら飯を食う時にごはんがないことくらいだが、それもフォロワーがレトルトご飯を大量に送ってくれたおかげで、一週間に一回レンタル倉庫に補充しに行けば安く済む。

 コンビニやスーパーをよく使っていればわかるが、「おかずのみ」の購入と「丼」「〜ライス」の購入では、かかる金額が雲泥の差だ。一日通して1000円もかからない。

 宿代にしても、今はホテルが軒並み安くなっているので、漫画喫茶や個室ビデオに泊まる金額とそう変わらない。高くても3000円あれば雨を凌げるし、荷物を持って泊まるなら1000円余計に出すくらい安いものだろう。工事現場なら40分くらい余計に働くだけでいい。

 と言うより、どうせ利息でモリモリ借金の金額が増えていくのだから、目先の1000円をどうこうなんて発想はもうない。

 出社時間にシビアなくせに退社時間に関しては大味な会社が多いこの国では、借金の業界でも借りれる金額や審査はシビアなのに、利息はよくわからない増え方をする。

◆借金返済と「アキレスと亀」

 僕も「よし、そろそろ借金を返し始めるか」と思い立って会員ページから現在の借入金額を確認しようとしたら会員情報ごと消されていて、さらに電話で聞いてみると5%近い利息が増えていたことがある。

 まるでアキレスと亀だ。

 ようやく借金を返し終わったと思った時、その総額に対して利息分は増えている。その利息分を返し終わる頃には、さらに利息が増えている。追いつこうとも追いつこうとも「完済」のゴールテープは着実に前に逃げていく。

「あーあ、一発当てねえとやる気出ねえ〜」

 と、みんなの身の回りにいるクズたちが思うのは、アキレスの絶望を味わったからだ。彼らはすでに全力で走った後だから、あんまりイジメないでやってほしい。

 さも代弁者のように語る僕はというと、現在アコムとレイクの大きな二本柱に追い込みをかけられている。

 僕が金を借りている金融会社は10社。そのうちアコムとレイクはそれぞれ50万円以上借りていた。

 普通のクレジットカード会社は「こんなクズを審査に通しちゃって困ったよ〜、利息も止めるし減額するから返して!」と和解を勧めてくるのに対し、金貸しを生業としている消費者金融は至って冷静だ。

 住所がなくなり、まずアコムから連絡が来た。この連載を始めた頃の僕なら電話を無視しているところだったが、今年は全ての電話に出ると決めていた。世間が容認してくれないスピードだとしても、せめて前には進もうと思っている。

◆消費者金融の「フット・イン・ザ・ドア」

「犬さんご本人のお電話ですか?」

「そうですが」

「アコムです」

 彼らは最初に名乗らない。玄関の扉を開けさせ、一歩目を踏み込んだ後に刺しにくる。僕はこれをフット・イン・ザ・ドアと呼んでいる。だが僕はもう臆さない。

「登録された住所に書類を送ったんですが届いてないみたいなんですよね。お引っ越しされましたか?」

「実は、今家を借りていなくて……」

 アコムから金を借りたのは僕のほうなのに、まるで返済のせいで家を失ったかのような言い方をしてから、もう少し手心を加えてやれば良かったと思う。だがそれも消費者金融相手だと杞憂に過ぎない。

「そうですか。もう半年くらいちゃんとした金額払ってもらってないんですけど、今いくら持ってます?」

 返済を遅らせれば遅らせるほど、消費者金融側のコールセンターの担当者が強くなっていく。おそらく同じコールセンターの中にも初級・中級・上級のような階級が存在していて、敵の強さに応じて出陣する担当者を変えているのだろう。

 僕の担当はおそらく「声を荒げないけど泣き落としには一切動じないタイプ」で、呼吸で例えるならば水。どれだけ悲惨な現状を訴えてきても譲歩はしない。誠実な魂と大声で気持ちを揺らしてくるタイプじゃなくて本当に良かった。きっとそういう担当者もいるに違いない。

◆「な・る・ほ・ど・で・すゥ〜・・・」の意味

「今払えるのは5000円ですね」

 なればこそ、こちらも毅然とした態度で臨む。もう1円も持ってないなんてことは言わない。ハッキリと返済の意思があるところを見せる。

「な・る・ほ・ど・で・すゥ〜・・・うん、はい! まあいいです、とりあえず今それだけ払ってもらって、また来月電話ください」

 この「な・る・ほ・ど・で・すゥ〜・・・」は、より上位の担当者であるほどよく使う。

「現状はわかりました。ただ納得はできませんね。今回は一旦譲歩として受け取りますが、完全に条件が決まったわけではないということは認識しておいてください。」という意味だ。

 こうして5000円を振り込み、1か月の延命措置を取ったのだが、最終的には毎月1万円以上を支払わなければならない。そして利息についてはまだ触れていないので、止まるかどうかも決まっていない。

 一度足を止めたアキレスが再び立ち上がって亀に追いつくために、亀の歩みを止めることは最重要だった。並のクレジットカード会社は亀の向こうから手を振り、「おいでおいで」としてくれるが、消費者金融は亀に車輪をつけたりしてくる。

 アコムに関しての現状報告は以上となる。これまで電話を全然してこなかった彼らが、住所を変えた瞬間に一度だけ電話をしてくるのは、「いつでも狩れる」証明だ。今回は、山が少しだけ動いた。

◆ホテルへ戻るとまたも電話が……

 ラーメンを食って帰ろうと思っていたが、アコムに5000円払ってしまったので諦めて夕飯を抜くことにした。せめて自分だけは自分に同情してやるために、金を払った後にこうした自罰行為をすることはよくある。

 普段5000円なんて気にしないくらいガサツに生きていてのに、アコムの電話によって悲劇のヒロインになったつもりになる。債務者が傲慢に見えるのは、心のリストカットで自分の非を薄めているからだ。

 可哀想な僕がホテルに戻ると、今度は違う番号から電話があった。

「犬さんご本人ですか?」

「そうですが」

「レイクです」

 僕はレイクにも同様の返答をし、こちらには7000円を支払った。

◆月々の返済を1円に……

 レイクの方は裁判が進んでいて、毎月1円の返済をしたいと裁判所に送り返して断られ、その後3000円に引き上げたがそれも断られていたところだ。

 よく「バカにしてんのか?」と怒られないと思う。とは言っても、公式の文書に「毎月1円の返済でお願いします」という答弁書を突き返すための切手代1500円は僕の返済金額の中に追加されている。

前門の虎
後門の狼

 僕は自分にさらなる罰を与えるために、その夜だけ禁煙をした。

文/犬

―[負け犬の遠吠え]―

【犬】
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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