飛ぶ鳥を落とす勢いの芸人・ニューヨークの思い「東京がレベル低いなんて、絶対言わせない」

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 昨年『キングオブコント2020』で準優勝、同年末の『M-1グランプリ2020』で2年連続の決勝進出を果たし、今年一気にブレイクしたお笑いコンビが「ニューヨーク」だ。

 毒のある切れ味鋭いネタを武器に“男ウケNo.1”とも言われ、「若手芸人が憧れる芸人ランキング」では7位にランクイン。今年4月から初の地上波冠番組もスタートと、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの2人だが、デビュー当初から「ネクストブレイク確実」と言われながらも燻り続けた過去がある。ようやく摑んだスターダムへの切符を手に、何を思うのか? その胸中に迫った!

◆YouTubeを始めたのがターニングポイント

――今年に入ってからテレビ出演が急増していますが、お二人の中でターニングポイントはいつだったのでしょう?

屋敷:2019年1月から始めたYouTubeの配信が大きかったです。散々“ネクストブレイク”と言われ続けてきたのに、当時、テレビのレギュラーはゼロ。2017年から唯一のレギュラーだったラジオも1年で降板になって、この感じでゆっくり下降していったら辞めてまうんちゃうかなと思って、自分から動こうと。芸人の中では、始めたのは結構早めやったと思います。

嶋佐:コンビ結成5年目で『キングオブコント』の準決勝に出て、7年目で『M-1』も準決勝。ここから一気に決勝にいけるかと思ったら、『キングオブコント』は2回戦、『M-1』は準々決勝で落ちてしまった。節目の10年目を迎えても、目に見えた成果はほとんどなし。キャリアに行き詰まりを感じてましたね。

屋敷:「このまま賞レースだけにベットしていくのは、ちょっと効率が悪いのかもしれない」とは思ってました。

――そこから這い上がり、4月からは初の冠番組『NEWニューヨーク』(テレビ朝日系)がスタート。「定番になっているお笑いネタやバラエティ企画にニューヨークらしさを加えた新しい笑い」ということですが。

嶋佐:番組が決まったときは、定番ネタにメスを入れることに怖さもありましたけど、蓋を開けたら何でもありで、コンテンツはもうめちゃくちゃです。

◆良くも悪くも、僕らにはなんのこだわりもない

屋敷:せやな。定番を壊して「お笑い革命を起こそう」なんて大それたもんじゃなくて、ただ単純に僕らが面白いと思う笑いを届けたい。そういう気持ちが強いですね。

――ご自身では“ニューヨークらしさ”とは何だと思われますか?

嶋佐:ちょっと待ってください(スマホを取り出す)。Wikipediaの芸風のところには「皮肉や偏見に満ちた底意地の悪さを湛えたネタが持ち味」と書かれています。

屋敷:その回答、絶対にあかんやろ。でも、ムズいな〜。自分たちが面白いと思っていることをネタとして披露してるだけなんで、客観的に芸風をとらえたことないからな。

嶋佐:計算してニューヨークらしさを出しているわけじゃないから。

屋敷:良くも悪くも、僕らにはなんのこだわりもないんです。

◆第7世代と対立は勘違い。むしろ入れてほしいくらい

――お二人はNSC東京校の15期生ですが、そもそもどのように出会ったのでしょうか。

屋敷:僕から声をかけたんですけど、すごくちっちゃい人やなって。目の前で見ると「こんなちっちゃい人おんねんな」って。

――舞台では大きく見えた、ということでしょうか……。嶋佐さんから見た屋敷さんの印象は?

嶋佐:小汚い茶髪で、いつも小汚いダウン着て。「こんなボロボロできったねー色のダウンあんのかよ?」って感じでした。

――(笑)。屋敷さんは昨年『ロンドンハーツ』で、ご自身のことを「第7世代」と表現し、一部のお笑いファンから大ブーイングを浴びたことも話題になりました。

屋敷:僕ら第7世代と対立してるように勘違いされますけど、彼らを「面白くない」と言ったことは一度もないんですよ。むしろ、僕らも第7世代に入れてほしいくらいで。

嶋佐:笑いに純粋な芸人が多いよね。

屋敷:「M-1に向けて頑張ってます!」みたいに、努力とか隠さんよな。僕らの若い頃は、そういうことは言わんほうがええって空気が漂ってましたけど。

嶋佐:今はスイーツ芸人、キャンプ芸人、家電芸人とか、ネタを一切やらない芸人も多いし。

屋敷:そう考えると芸人ってなんやろな。吉本に所属していてもYouTubeやTikTokだけ配信している人は、「自分は芸人です」とは決して言わんもんな。だから、胸を張って自分のことを「私は芸人です」と言えるなら、それはもう立派な芸人なんやろな。

◆東京のお笑いは、多様だし寛容

――お二人はもちろん、最近、NSC東京卒業生の勢いが増している印象を受けます。

屋敷:笑いに東京とか大阪とか、あんまり関係ないと思います。2018年やったかな、「性格の悪いネタをするライブ」に呼ばれて、大阪でネタをしたんです。

嶋佐:ライブの看板通り、僕ら、その日一番のクソ性格の悪いネタをやったんですよ。でも、さざ波も起こらないくらい、ごりごりに滑りまして。代わりに、まったく性格の悪くない普通のネタしている芸人にファンがワーキャーしていて、「え、これどういうライブ?」って。

屋敷:誰も趣旨わかってなかったもんな。よく「東京は笑いをわかってない。大阪のほうがレベル高い」とか言われがちですけど、大阪だから笑いのセンス高い、お客さんも厳しい、なんてことはないと思います。別に大阪をディスっているわけじゃなくて、芸人がやることはどこでも一緒。

ただ、これだけは言わせてほしい。東京は地下とかを含めて、かなりいろいろな笑いがあって多様化しているし、笑いに対して寛容やと思う。だから、東京のほうが笑いのレベルが低いとか、そういうことは絶対にない。

嶋佐:それだけは間違いないです。

◆怒りは段々とどうでもよくなってきた

――ニューヨークのネタは「誰も傷つけない笑い」や「伏線の回収」といった近年のトレンドに乗ったものではなく、映画、ドラマ、音楽といった、さまざまなカルチャーをベースにしていますね。

屋敷:身近な変人、映画、ドラマとネタの出発点はどこだっていいと思ってるし、トレンドとか考えたことないですね。

嶋佐:笑いを研究してネタを練ることはほとんどないですね。基本、僕らと作家さんで雑談しながら作るんですけど、みんなどこかで面白いと感じる部分が重なっている。それが何なのか言葉にするのは難しいですけど。

屋敷:賞レースで勝てそうとか、時流に乗った笑いとか、絶対考えへんやろな。「どこかで見たことあるネタ」を考えても仕方ないし。

――喜怒哀楽の“怒”を扱ったネタが多いように感じます。

屋敷:そういう時期もありましたね。チャラいヤツがハマー乗ってたりするのが腹立つとか、ハロウィンのフラッシュモブの何がええねん、とか。ただ、そういう怒りは30歳を過ぎたあたりから、段々とどうでもよくなってきました。

嶋佐:なんかもう、自然と怒ることがなくなってきて。

◆ネタの源泉は「違和感」でも、そのまま出さない

屋敷:だから今は、違和感を覚えたことをネタにするほうが多いかもしれないですね。たとえば、今の日本って、容姿いじりとか不倫とか自粛警察とか、まったく人の過ちを許さない、人や社会の在り方に完璧を求める風潮が強すぎるじゃないですか。潔癖社会というか。それって僕の中ではものすごく違和感があるから、ネタにできたら面白いんちゃうかなとか。

嶋佐:この前、テレビでやっていた「マスクの正しいつけ方」とかもね。「正しいつけ方」を教えるまで、やたらと長くて、なんならCM入れて引っ張ったりしてた。「今、このご時世で皆さんマスクをちゃんとつけましょう!」という啓蒙的な内容のはずなのに、引き延ばす。それって、どういう倫理観?

屋敷:たしかに、それは違和感あるな(笑)。それで言うと、たとえば「もっともらしいこと言う占い師はうさんくさい」というのもひとつの違和感ですけど、ネタにするときは、そのままストレートに揶揄するのは避けるようになりましたね。

「まんま、塩で食べてください」という悪口よりは、そのうさんくさい占い師がなぜそうなってしまったのかという「過程」をファンタジーにして面白く見せるみたいに、最低でも何かひとつはのっけて料理したい。そうすれば偏見を受け付けない人でも、気づかずに笑ってくれるときがあるんちゃうかなとは思います。

嶋佐:結局、面白いかどうかが大事で、たとえば伏線回収にしても面白くなかったら意味がない。おしゃれな演出で“おお〜”ってなっても、別に面白くはない。でも、いい作品感はあるから、みんな好き。悔しいかな、それが現実ですよね。だから、こんなこと言っておいて、自分たちも全然やるかもしれない(笑)。

――これまではほとんど男性ファンばかりでしたが、女性ファンも、もう少し増やしていきたい?

嶋佐:今は女性のお客さんもチラホラ見られますけど……、そこに向かってネタを作ることはないですね。

――そこはあくまで硬派に。

嶋佐:いや、女性に好かれたくないとかはないですよ。普通にワーキャー言われたいですから。なんか僕らのこと、すごく極端なヤツらに仕立てようとしてません?(笑)

屋敷:誰に向けてとか、考えている芸人のほうが少ないんじゃないですか。僕らは普通ですよ。

◆これからもネタをやり続けるしかない

――年始からテレビのバラエティへの出演が増えました。今のところ、手応えはどうですか?

屋敷:どうなんですかね。ラジオのときもそうですけど、どうやったら番組が長続きするかなんて、僕らにはわからない。だから、期待に応えられているか、貢献できているかという部分に関しては、まだわからないのが正直なところで。

嶋佐:自分の思い通りに結果を操れることなんて、まずないからね。

屋敷:自分たちがやりたいとお願いして、チケット代をもらって開催する単独ライブで、まったく笑いを取れなかったら、それはさすがに「ヤバい!」と思いますけど、テレビはそもそも呼ばれて出ているわけで。現場では、お茶の間の反応を確かめる術もないし。

――よく芸人がテレビに出るからには「爪痕を残さないと!」と言いますが。

屋敷:もちろん全力で取り組みますけど、結果に関しては「ウケなかったとしても、100%こっちの責任じゃないからな」とは、どこかで思うようにしています。そうしないと、自分が腐ってしまうので。テレビの場合、僕らは番組のひとつのピースでしかないから、全力で楽しくやらせてもらって、あとはいい意味で「知らんがな」と気楽に構えさせてもらってます。

嶋佐:楽しくやるのが一番かなと思います。

――では今後、ますますテレビの露出が増えてもYouTubeやライブは続けていく?

屋敷:そうですね。テレビだけだと、バランスが悪くなって単純に面白くなくなるんですよね。今はもっとテレビに出て、間違いなく一番頑張らなあかん時期ですけど、プレッシャーばかりだとキツくなる。

嶋佐:YouTubeでやったネタがテレビで取り上げられたり、テレビの話をYouTubeやライブで披露したりと、今のところ、いい感じでサイクルが回っています。しかも、コロナ禍でオンラインチケットが生まれて、これまで劇場でフルハウスでも400〜500枚だったのが、何千枚とチケットが売れる時代になった。単独ライブは延期中ですけど、テレビで知ってくれた人がチケットを買ってくれたら、ライブの可能性も広がるんじゃないかな。

屋敷:経歴や特技とか、僕らはなんもないから、ネタで評価されるまでスポットライトを浴びることはなかった。だから、これからもネタをやり続けるしかないんです。

◆「売れなくてもいい」なんて、絶対言えない

――最後に今後の展望ですが、先日、嶋佐さんが抱負として「お金を持つ」と書をしたためていました。

嶋佐:SPA!を読んで、どかんと米国株で資産運用したいと思ってます。コツコツとかじゃなく、億を狙っていきたい。

――屋敷さんはどうですか?

屋敷:劇場、テレビ、YouTubeをバランスよく回しつつ、千葉あたりに庭付きの戸建てを買って、最低でも週2で休みたい。なんなら週4で休みたい。あくまで理想ですけど。でも、この前、親の面倒をきちんと考えたら、結構お金がかかることがわかって、やっぱり頑張らなアカンなと。それに、番組ごとに何十人ものスタッフがサポートしてくれているから、もう「売れなくても構わない」とか口が裂けても言えない。嘘でも「ビッグになりたい」と言っておかないと。

嶋佐:責任感はちょっと芽生えてきたかな。まだまだぽっと出ですけど、東京吉本、背負っていく気概は見せていきたいですね。

屋敷:ほんと、東京には面白いヤツらいっぱいいるんで。みんなで上に行けたらいいなと。僕らが上に旗を立てられたら、後から上ってきやすくなるかなとは思ってます。

【New York】
屋敷裕政(’86年、三重県生まれ)と嶋佐和也(’86年、山梨県生まれ)のお笑いコンビ。結成12年目で東京吉本所属。『M-1グランプリ』2019・2020、『キングオブコント』2020ファイナリスト。レギュラー出演番組に『ラヴィット!』(TBS・木曜レギュラー)など

取材・文/谷口伸仁 構成/宮下浩純(本誌) 撮影/髙橋慶佑 スタイリング/千葉 良
撮影協力/ミュージックバーながさき(渋谷区道玄坂2-29-6)
衣装協力/BOTTEGA MARTINESE(ユーロファッション・ジャパン)

※6/15発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』より


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  • 6/23 15:52
  • 日刊SPA!

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