「生存率0%」妊娠21週2日の超早産で誕生した赤ちゃんが1歳に(米)

米ウィスコンシン州セントクロワ郡在住のベス・ハッチンソンさん(Beth Hutchinson)が、ミネソタ州ミネアポリスの「チルドレンズ・ミネソタ・ホスピタル」でリチャード・スコット・ウィリアム君(Richard Scott William)を出産したのは、昨年6月5日のことだった。

出産予定日は10月13日だったが、リチャード君は131日早い妊娠21週2日で誕生して生存し、ギネス世界記録から「世界で最も早産で誕生し生き抜いた赤ちゃん」に認定された。リチャード君の体重は337グラムと平均の約10分の1、身長は平均の半分ほどの26センチと手のひらにすっぽりと収まってしまうほどだった。一般的に妊娠22週未満で生まれた赤ちゃんは生存率が極めて低いとされ、ベスさんと夫リックさんは出生前カウンセリングで「生存率は0%」と告げられていたという。

そんななかでリチャード君を担当した新生児集中治療室のステイシー・カーン医師(Stacy Kern)は「最初の数週間は困難だが、それを乗り切れば生き抜くことができると考えていた」と明かしており、今月5日にリチャード君は1歳の誕生日を迎えた。

これを受け、ギネス世界記録はリチャード君を「最も早産で生まれ、1歳の誕生日を迎えたサバイバー」として新たに認定、リチャード君は家族や親せき、そして大好きな3匹の犬と一緒に自宅でお祝いし、最初のバースデーケーキを楽しんだ。

ベスさんはこの世界記録に「現実に起こっているような気がしないのですよ。今でも驚いていますが、とても嬉しいです。これで早産への関心が高まるといいですね」と述べている。

ベスさんとリックさんにとって、決して平坦な道ではなかったこの1年。2人はパンデミックのために病院に泊まることはできず、毎日片道約1時間をかけて病院と自宅を行き来したという。また独立記念日やハロウィンなどの祝日には一緒にお祝いをし、そばにいることでリチャード君を支え続けた。

そんな前向きで献身的な両親と頑張り屋のリチャード君に応えるように、新生児集中治療室のチームも全力で闘い、リチャード君は誕生から6か月後の12月初旬に退院。クリスマスを自宅で迎えることができた。まだ酸素チューブや血中酸素飽和度を測定するパルス​オキシメータなどが必要だったが、大きな前進だった。

カーン医師は「退院する日は、両親だけでなく集中治療室のスタッフにとっても特別でした。ベビーベッドからリチャードを抱き上げた時、私の目からも涙があふれてきたのです」と当時を振り返り、このように続けた。

「一度は『もうダメかもしれない』と心配し、私の手のひらに収まっていた小さな男の子。それが見違えるように成長して、信じられないような気持ちでした。以前は肋骨や血管が皮膚から透けて見えるほどだったのに…と思うと『君をとても誇りに思うよ』と言ってギュッと抱きしめずにはいられませんでした。」

「リチャードは私に“困難な状況下から回復していく力”とはどんなものなのかを教えてくれたのです。私は彼を見るたびに、小さくて美しい赤ちゃんの強さ、素晴らしさというものに気付かされるのです。」

「彼は私が集中治療室で担当した最も早産の赤ちゃんです。誕生した日に勤務していた私はとてもラッキーだったと思います。彼は世界中のたくさんの人々をインスパイアし、私たちはこれからも彼からたくさんのことを学ぶでしょう。」

なおリチャード君はまだ100%の状態ではなく、今後も定期的な検診や酸素チューブなどが必要だそうで、ベスさんはこのように語っている。

「早産の子を持ったら、できる限りそばにいて支えることです。大切なのは決して諦めないこと。そして医師に子供が今どんな状態であるかを常に聞くことです。リチャードの補助機器が全て取れるまでには時間がかかります。これからも心配は尽きませんが、リチャードはこれまで本当に頑張ってきたのです。それにいつも笑顔でハッピーなんですよ。彼の青い瞳と笑顔を見るたびに、私はグッときてしまうのです!」

ちなみにリチャード君が誕生する前のギネス世界記録は、カナダのオンタリオ州オタワで1987年5月20日、予定日よりも128日早い妊娠21週5日で誕生したジェイムズ・エルジン・ジル君(James Elgin Gill)で、2010年11月7日にもドイツ、フルダのフリーダ・マンゴールドちゃん(Frieda Mangold)が妊娠21週5日で産まれて世界記録に並んでいた。

画像は『Guinness World Records 2021年6月11日付「World’s most premature baby, given 0% odds of survival, celebrates first birthday」』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 A.C.)

2021/6/22 6:00

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